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リアクション
33. 二日目 エーテル館 大ホール 午前四時二分
V:古森あまねです。クルージングは中止になって、船に乗っていた人たちも、みんなエーテル館に戻りました。
エーテル館の広間には、捜査陣がみんな集まっています。列車事故と竹丸さんの殺害という大事件が発生したため、いまから、全体で緊急捜査会議をするそうです。
それから、前回の墨死館事件分の編集もまだだったので、今回はやめていたのですが、事件が混乱したこの状況では、映像記録もなにかの役立つかと思いまして、たったいま、大ホールにいるみなさん全員に、小型カメラを配りました。
そうそう、くるとくんは何度起こしても起きなくて、ナガンさんは、素顔はNGでメイクに時間がかかるとかで、会議には出席していません。
V:作戦決行の合図をいまや遅しと待っている、スカサハ・オイフェウスであります! スカサハは、朔様のおっしゃる通りに頑張るであります! 標的は、確認済みでありますよ!
鬼崎朔のパートナーの一人である、メイド服の機晶姫スカサハは、計画通りの配置について、ホールの隅で様子をうかがっていた。
「にゃん」
そんなスカサハの前を、どこからともなくあらわれた黒猫のデュパンが通りかかる。
「黒猫さん。スカサハとお友達になるであります!」
「にゃにゃ」
「にゃん。にゃにゃにゃ」
待機中にもかかわらず、動物好きのスカサハは、最近のテーマであるお友達百人計画を実行し、デュパンを抱きかかえ、猫語でしゃべりだした。
V:スカ吉が猫と遊んでる。ま、ボクはこの作戦は、たいした「悪」だとは思ってないんで、あれくらいの取り組み方でもいいけどね。
最終的には、みんなのためになる朔らしい「悪」の作戦だから、こうしてビデオに残しておいてもいいと思うし。
朔ッチの懐剣たるボク、ブラッドクロス・カリンがいれば、この程度の作戦は…。
スカ吉。猫に夢中になって、作戦忘れてないよね?
パートナーの鬼崎朔の「懐剣」を自認する、白いドレスの剣の花嫁、カリンは、自分の持ち場から、はるかむこうで楽しげに猫と遊ぶスカサハの姿を、心配そうに眺めている。
V:ククク・・・。捜査会議の名の元に、捜査陣、関係者を一箇所に集めてくれるとは、素晴らしい。わたくし、「不和の公爵」アンドラス・アルス・ゴエティアは、レストレイド殿にお礼をせねばなりませんな。
芳しい事件はすでにはじまっているご様子。よろしい。わたくしが、血の宴をさらに愉快なものにしてさしあげましょう。
探偵、悪人、呪われし一族・・・すべからく、人よ、惑い苦しめ。
鬼崎朔のパートナーの中で一人だけ、真にかわい家一族皆殺しを望む者、アンドラスは、自らの欲望を満たすために、作戦開始の時を待っていた。
もし、朔、カリン、スカサハが手を貸さなくても、一人で作戦を実行する決意を胸に秘めて。
「・・・・・・」
鬼崎朔は、自分の三人のパートナーを視界に入れながら、ホール全体を眺めていた。
迷いはない。
朔の合図で、鬼崎一家の作戦は開始される。