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リアクション
30. 一日目 発着場 午後四時十三分
電車は行って、船は残った。こっちももうじきでる予定だ。美沙ちゃんは、すでに乗り込んでいるらしい。
美沙ちゃんも京子ちゃんも、無事だったんだ。
菫ちゃんとパートナーの人は、生きてるのかな。
「いっくん。その顔はどうした」
「児童虐待テロ未遂探偵にやられました」
船のまわりを歩いていた僕は、竹丸さんと出会った。ヴァーナーちゃんも一緒にいる。
「痛そうで、かわいそうです。ボクが維新ちゃんの頬っぺを治してあげるです」
「痛いから、キスは、やめて」
「むむむむ。ヒールでなおすです。女の子の顔に痕が残ったら大変です」
それでもやっぱり、ヴァーナーちゃんは、魔法の後に、ちゅっをした。
もはや、この子にとっては、無意識にしてしまうレベルの行為の気がするので、注意しません。
「かわいいとキレイは大事です。かわいいは正義! です」
「いっくん。きみは、かわい家の誰かが、鏖殺寺院とつながっている、という話を聞いたことがあるか」
「僕は、つい最近、PMRという言葉のかけ合いを得意とする組織と、知り合ったんですけど、かわい家は、寺院よりもPMR寄りの一族だと思います」
「はっはは。稽古場にいたイレブンくんたちか。愉快な若者たちだね。冗談は、ともかく使用人や女中たちの間に、寺院が今回の騒動の裏で糸を引いているという噂が、流れてるんだ」
「みんな、不安になってるです。竹丸おじさんとボクは、誰がそんな噂を流したかも、調べてるです」
「そういうことしそうな人は、なん人かいますけど・・・。あのお、お船には、誰が乗るんです」
「僕とヴァーナーちゃん。あまねちゃん、くるとくん。刃くん。月桃さん。銀さん。クリストファーくん。クリスティーさん。ナガンさん。それに、ジャジラッドさんとゲシュタールさん。美沙かな」
僕は、お船でも無差別殺人や沈没は、反対だ。
「竹丸さん。ボゴルさんたちは、要注意だ。もしかしたら、噂を流したのも彼らかもしれない」
「ほう。なぜ、そう思うんだい」
今日は、いくら僕でもいい加減にしゃべり疲れてるんですけど、それでも、竹丸さんに小屋での一件を話そうとしてたら、携帯が鳴った。
ブオオオオ。
汽笛が響く。
「いっくん。また連絡する。ヴァーナーちゃん。行こう」
「はい。維新ちゃん。ばいばいです」
竹丸さんたちは、タラップを上って、行ってしまった。
美沙ちゃんの大きなお船が、発着場を離れてゆく。
「んふ。ファタじゃ。部屋で待っておるぞ。お風呂とご飯の支度はどうする。今日は、遅くなるのかのう?」
電話は、ファタちゃんだった。
彼女、ほんとに待ってるんだ。