リアクション
26. 一日目 発着場 午後三時四十三分
「ごめんね。泣かすつもりは、なかったんだよ。あなたと京子さんが使う、入れ替わりトリックを顔に火傷させて、未然に阻止する作戦だったの」
「・・・・・・」
「ほら、こうしてガーゼをはっとけばいいわ」
僕は、左の頬に薬を塗られて、ガーゼをはられた。
「維新ちゃん。怒ってる?」
「・・・まだ、顔が熱い」
「俺様は、まさか月実がこの子相手に作戦決行するとは、思ってなかったわ。二十才の京子さんと二十二才の美沙さんなら意味あるけど、維新ちゃんは八才だし、誰と入れ替わるの。子供にお茶ぶっかけて、児童虐待だろ、あんたはっ!」
「敵の一味だから、各個撃破かなって。てっか、わかってんなら、とめろよ。リズリット」
「ふう。こんなのが主人って、どうなんだろ〜」
「二人とも、仲良くしてよ」
僕のお願いに、二人は頷いた。
熱湯で殺されるかと思った。ひどい殺され方だ。
「維新ちゃん。本当にごめんね」
「うん」
月実ちゃんは悪意はなさそう。ハイテンションで話しだした時点で、僕は警戒すべきだった。
自分は正義だと思って、とんでもない行動をするから、探偵は、おそろしい。
「あのね。教えて欲しいの。京子さんは、どこにいるの」
「知らない」
「あなたもここに、彼女を探しにきたのかな」
「違う。レストレイド警部に、怪しいやつだと思われて追っかけられたんだ」
「警部? ああ。彼のそれは自称で、私たちと同じ学生だよ。刑事になりきってるの」
ニセ刑事。だから、探偵ってやつは。
「私たち、いまから京子さんの電車をぶっ壊しに行くんだけど、一緒に行こうか」
今度は、テロ探偵?
「電車が動かなければ、そこでの犯罪も起こらないしね。作戦その二なの」
その一は、熱湯ぶっかけでした。
「京子ちゃんは、こないと思うよ。電車は出発しないんじゃないかな」
「なら、車両も壊しておけば、鉄道犯罪は完璧に阻止だね」
月実さんは、ガッツポーズ。あなたのその行動が犯罪なんだけど、それでいいのか、本当に。