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リアクション
21. 一日目 エーテル館 大ホール 午前十一時二十八分
V:墨死館事件の最後に、ベルディータさんの携帯でみせたもらった画像のような光景が、いま、あたしの目の前にあります。くるとくんがこれだから、こういういかにも名探偵らしいシーンって、なんだか感動するわ。
青いドレスのブリジットは、隣に少し困った表情浮かべているメイド服のイルマ・レストを従えて、ホールの一同が注目する中、悠然と語りはじめた。
「お集まりの皆様。冴えた推理でカキーンと解決! 百合園女学院推理研究会、代表のブリジット・パウエルよ。
私たちがこのかわい家についてから、すでに三時間、死体も一つ転がったようだし、そろそろ解決してもいい頃あいね。
これ以上、被害者もだしたくないし、私がこの事件に幕をおろすわよ」
「くるとくん。よくみて、名探偵ぽさの勉強をするのよ。いいわね」
どこかへ行こうとしていたくるとは、あまねに服の襟をつかまれ、顔をブリジットの方へむけさせられた。
「実行犯の阿久路井門が消されて、事態は、一刻の猶予も許さないわ。
事件の鍵は、みのるの遺言。
あの遺言はおかしいわ。一見、麻美のために書かれているように見えるけど、麻美に財産が確実に入るのは、誰も選ばなかった場合だけ。あれでは、もともと不仲な一族の者に財産のために互いに争え、とけしかけているようなものよ。
そして、遺言を残した時点で、みのるは、麻美が結婚できる年齢にあり、なおかつ結婚していないことを知っていたことになる。
つまり、遺言はつい最近、作られたのね。
出生がわからない青年。
しかし、実は彼には、本来なら、かわい家の財産を得る権利があった。なぜなら、彼は、当主みのるの隠し子だったから。彼は自分の生い立ちに同情的なオサム、阿久を味方につけ、ほうけた使用人を演じ、母と自分の存在を闇に葬ったかわい家に、復讐の機会を待っていた。
オサムにみのるを殺害させ、一族を殺し合いに導く遺言を捏造する。
いまさら逃げ腰になったオサムを阿久の力を借りて、毒殺した。
捜査陣がかわい家についた今朝、秘密を知りすぎている阿久も殺害した、今回の事件の黒幕、それは」
ブリジットが、まっすぐのばした指先は、閉ざされたドアへとむけられていた。
そのドアがゆっくりと開く。
「犯人はあなたよ。麻美。」
ピシッ。
「おおっ」
ホールはどよめきに包まれた。
「・・・・・・母さん」
開いたドアから、入ってきた麻美は、五人いた。
同じ姿をした麻美が五人、横に並んで、ぼんやりとブリジットを眺めている。
「・・・なんで、あんた、五人もいるのよ」