リアクション
51. 三日目 観光船 午後五時三十一分
V:ズタ袋を持って船内の犬、猫を回収してるナガンだぜ。食わないとは否定はしないが、食わないんだぜ。
レキ・フォートアウフから古森あまねに連絡があって、今日、船が出港してから、誰かが、船の下層部に何匹か犬、猫を放したらしい。
細菌兵器とか、それ自体が生物兵器とか、危険な可能性があれこれあるんで、改造人間のナガンさん、様子をみてきてね、って古森あまねに頼まれた。
同じ船でパーティしてる連中がいるのに、どうしてこうなるんだかなァ・・・。
しかし、何匹か捕まえたら、袋が重くなったな。こうなったら、湖に捨てるか、だぜ。買うやつがいるなら、グラム単位で売るぜ。
船内にいた犬、猫をそれぞれ入れた袋を二つ背負い、歩くナガンの前に、黒猫のデュパンがあらわれた。
「にゃにゃにゃにゃん」
「新たな獲物だぜ」
「にゃーにゃんにゃんにゃ」
「しかし、うるさい猫だねぇ。おまえ、ナガンをかんだり、ひっかいたり、呪ったりしたくて、うずうずしてるぜ」
「にゃんにゃにゃにゃ、しゃーあ」
日頃、人懐こいデュパンが、ナガンに対しては、爪を立てて臨戦態勢だ。
「他のやつは、犬も猫もやたらおとなしくて、従順で、ぐったりしてるやつもいたのに、おまえは、しつけがなってない。うん? ううう。普通、はじめてナガンと会って、ナガンが捕まえにきたら、犬も、猫も、人間も、おまえみたいになったりするんだよなァ。おい、ナガンが担いでるこいつら、おかしくないかヒィーハァァアア!」
V:最悪の事態を想像して、笑いと悲鳴が同時にでちまったぜ。
ナガンが担いでるこいつら、普通じゃねえぜ。調教されすぎだ。ナガンは、生物兵器、爆弾を担いでるのと同じことをしてるかもしれねェ。
「ヒィーハァァアア!」
二つの袋をさげたまま、笑いながら途方にくれているナガンを、まるで導くように、デュパンは、ナガンの前をゆっくり、ゆっくり歩きだした。
笑い終えたナガンは、デュパンの後をついてゆく。