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リアクション
53. 三日目 観光客船 午後六時四分
パーティ会場の一角では、一つの事件が終りを迎えようとしていた。
「エーテル館もなんだか物騒だからな。相棒にもこの船に来てもらった。維新、謎はクタートが解いたぜ。マッシュの動きに捜査陣の意識を集中させ、自分をノーマークにさせるやり口、見事だったな」
「ふふん、どうやらわしの出番のようじゃ。かわい維新、おぬしのやろうとしている事は、全てお見通しじゃ!」
葛葉翔に、カラーグラスごしににらまれ、翔のパートナー、少女の姿の魔道書クタート・アクアディンゲンに、ぴしっと指を突きつけられても、維新に動じた様子は、まったくなかった。
「まただ。今回は、一のゾロ目。私は、こんな結末を迎えるのは、うれしくない。維新くん、結局、きみは、私や翔くんを利用したかったのか。列車に乗る時、きみに頼ってもらえて、私は、うれしかったよ」
本郷涼介は、手の平のダイスを悲しげに、見つめている。
「維新。これは、どうなるのじゃ。わしと共に夜をすごしておったから、アリバイはあるし、そこらへんを説明してやれ」
「ファタちゃんとプレイはしたけど、放置プレイだから、僕が電車に行く時間はある。
ファタちゃんだって、わかってるだろう。
ヴァーナーちゃんを見たって証言は、王ちゃんのウソと、マラッタさんの真犯人を泳がせるための罠さ。
ヴァーナーちゃんは、ほんとは、犯人を見たんじゃないかな。でも、あの子、優しいから、すべてが解明されるまで、自分からは口を開かないんだよ。竹丸さんを助けられなかった自分に責任を感じてるのかもね。
電車の脱線は、王ちゃんか、京子さんか、リン太郎さんに操られた阿久先生の仕業か、僕には、わかんない。
竹丸さんは、本気で僕ら全員の邪魔をしようとしてたからね。強行手段にでるのも辞さずでさ。実は、むこうもこっちの隙をうかがってたんだ。
僕には、助けたい大切な人がいるから、役に立ちたかった」
維新は、横にいるファタ・オルガナの頬を両手で挟んで、真正面からファタを見つめた。
「ごめんね。ボク、竹丸さん、殺しちゃった」
「んふ。また、そういう、でたらめを。いくら、わしを騙そうとしても」
「言い訳はしない。バレちゃったら、しかたない。みんなは正しくて、僕は間違ってるよ。さよなら」
維新は背にしていた鉄柵に腕をかけ、くるりと後方に回転し、七、八メートル下の湖に落ちた。
水音が、重く、鳴った。
「そんな古典的なテでは逃がさんぞ!」
さらに、維新を追って、柵を乗り越え、ファタが湖に飛び込んだ。
「船をとめてくれ。人が落ちた。早くとめろ!」
翔が叫ぶ。と、ほぼ同時に船は停止し、どぅん、下の方からの轟音。船は揺れ、傾いた。
「京子、報酬をもらいにきたよ〜」
殺人鬼の声がきこえる。