リアクション
第五章 初日の出3
大奥の御花実様の一室では秋葉 つかさ(あきば・つかさ)が、布団をせっせと並べていた。
大部屋に敷き詰められたそれは、さながら修学旅行のようである。
つかさは彼らの到着を今かと待っていた。
「遅れて悪かった。仕事がたまっててな。で、大奥の御花実様が『八咫烏(やたがらす)』に何のようだ?」
呼び出された武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)は、小さくなった胸が透けてみえそうなほどの薄い肌襦袢で、あられもない格好でいるつかさを見てぎょっとした。
「ななな、何のつもりだ!?」
「見てのとおりですよ。お世話になった『八咫烏(やたがらす)』の皆さんを慰労して差し上げようと思って」
「慰労? ……それはつまり……アレってことか?」
つかさが答える前に、牙竜はそそくさと部屋を出て行った。
「俺には惚れた女が居る。あとは……任せた」
頭領に任せたといわれて、取り残される忍者たち。
つかさは『八咫烏(やたがらす)』に向かってにっこり微笑んだ。
「頭領は案外真面目な方ですね。でも、皆さんはもっと素直になってよろしいんですよ」
つかさは帯紐を緩めるが、忍者たちは表情ひとつ変えない。
肉体も精神も鍛え抜かれている彼らにとって奸計など日常茶飯事だ。
つかさは内心舌打ちした。
「……さすが『八咫烏(やたがらす)』の方々ですね。では、こうしましょうか。『私が』ではなく……『皆さんが』私を気持ちよくしてください。どうでしょうか?」
忍者たちが互いに目合わせをしている。
男たちはつかさを取り囲んだ。
「では、つかさ様。ごめん」
「ふふ……息子の貞嗣(さだつぐ)は今、現示おじちゃんのところへお年玉をもらいにいかせてますから、ゆっくりできますよ。それこそ、二、三日足腰がたたなくなるまでね……」
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「ああ……気持ちい……い。そこをもっと、強く……」
つかさが息も絶え絶えに声を上げる。
彼女は全身のツボというツボを指圧されていた。
「最近、慣れない事して疲れましたものね。ああ、そこ……お上手です」
つかさは快適ツボマッサージを受け、つかの間の極楽気分に浸っていた。
「たまにはこんな寝正月も、ありでしょうね……?」