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喋るんデス!

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 02と書かれた部屋。
 こちらは美菜達が居るのとは別室だ。
 この部屋の人間もまた、アテフェフによって眠らせれていた……

 ベッドの上でエッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)がかすかに瞼を開く……
 アンデットの肉体には睡眠という概念が存在しない。
 当然睡眠薬などいくら飲んでも平気なのだ。

(さて、どうしたものか)
 監視されている可能性がある以上、うかつに動くのは危険極まりない。
(ほかの誰かが目を覚ますか、連中側で何か動きがあるか……それまではこのまま寝たフリですね)
 エッツェルは狸寝入りを決め込むことにするのだった。

 狸は彼だけではなかった。
 一見豪快にいびきをかいているように見えるエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)もまた寝たフリをしているのだ。
 彼はアテフェフの睡眠薬を拒み、魔法で眠らせろと要求。
 魔法を耐えきった彼はそのまま寝たフリをしているのだが……
(このいびきというのは、なかなか堪えるな)
 短時間ならどうってことのないいびきだが、長時間続けるとなると、じわじわと疲労が貯まっていった。
 いびきは健康に良くないという話も、今なら頷ける。
 寝たフリの方法にいびきをかく事を選んだのを深く後悔するエヴァルトだった。

 そしてもう一人、久世 沙幸(くぜ・さゆき)は……
「すーすー」
 ……眠っていた。
 他の二人と同様に寝たフリだったのだが、彼女にあてがわれたベッドは寝心地がとても良かったのだ。
(……沙幸、沙幸)
 どこからか彼女を呼ぶ声がする。
「うーん、むにゃむにゃ」
 だが沙幸はすっかり夢の中だ。
(……沙幸、起きんか、沙幸)
 その声は沙幸のすぐ近くから沙幸の頭の中に直接響いてきた。
「あと5分だけ〜」
 だが沙幸は目を覚まさなかった。
(……仕方あるまい)
 沙幸の服がふき飛び、人の姿となる。
 魔鎧状態で身につけられていたウィンディ・ウィンディ(うぃんでぃ・うぃんでぃ)が魔鎧を解除したのだ。
「ほれ、沙幸、起きんか」
 魔鎧が解除された事で、一糸纏わぬ身となった沙幸の胸に手をのばすウィンディ。
「あ……やだ……ちょっと……」
「どうじゃ沙幸? 目が覚めたかのぅ?」
「もうっ! ウィンディってば!」
 顔を真っ赤にしながら飛び起きる沙幸がいそいそと服を着る。

 その周囲では……
 (く……アンデットとはいえ、この光景はなかなか……)
 (むぅ、こんな状況の中には、起きるに起きられん)
 ……完全に起きるタイミングを逸した2人だった。
 そんな彼らをよそに、事態は、動き始めたようだ。

「む! 誰か来るぞ!」
 気配を感じ取ったウィンディが問答無用で沙幸の口を塞ぐ。
 ……部屋の外から足音と共に、ゴロゴロと何か車輪のついたものを曳く音が聞こえてきた。
 それは、別室で眠らされた者達を乗せたベッドだった……美菜達が運ばれているのだ。

「あやつら……何か始めるつもりのようじゃな……」
 ドアの隙間からその様子を覗いていたウィンディが真面目な顔で言う。
「むぐぐ……むーむー」
 顔を真っ赤にしてもがく沙幸、その口はまだ塞がれていた。
 慌てて手を離す。
「おお、すまんすまん、酸欠か? 人工呼吸が必要かのぅ」
「もぅ、ウィンディ! そんなこと言ってる場合じゃないよ!」
「まったく、その通りだ」
「そろそろ動いた方がいいでしょうね……」
「え?」
 背後から聞こえた声に沙幸が振り返る。
 ようやく起き上がるタイミングを得たエヴァルトとエッツェルの2人だった。