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喋るんデス!

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喋るんデス!

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「これまた派手な到着だねぇ」
 研究室付近に着陸した飛空挺から降りてきた真言とベアを佐々良 縁(ささら・よすが)が出迎える。
「突然押しかけてすいません」
「いいっていいって……で、まこっちゃんが調べてほしいものってのはどれかな?」
「はい、取り急ぎこれを調べていただきたいのです」
 そう言って真言が取り出した『喋るんデス!』を興味深そうに見つめる縁。
「へぇ〜、これが今噂の……なかなか面白そうだねぇ」
「どうだ、なにかわかりそうか?」
 待ちきれないとばかりにベアが聞く。
「さぁどうだろう、一度バラしてみない事にはなんとも……」
 縁は解体したくてうずうずしているようだ。
 しかし、一度解体してしまうと、もう一度組み上げられないかも知れないという不安があった。
「構いません、やれるだけやってみて貰えますか?」
「まこっちゃんならそう言ってくれると思ってたよ、任せて」
 真言にウィンクを飛ばし、研究室へ向かう。

「伯楽先生、ちょっとこれを見てもらえますか?」
「ふむ、また妙なものを見つけてきましたね、縁は」
「見つけてきたのはまこっちゃんですよ、ホラ」
 縁に諭され、伯楽先生と呼ばれた男……孫 陽(そん・よう)は研究の手を止め、振り返る。
「おや、沢渡さん、あなたでしたか……お久しぶりです」
「お忙しい所すいません、この器具が今、問題になっていまして……」
 ……経緯を説明する真言。
「種類を問わず動物と話せる……それが真実だとしたら、恐るべき技術ですね」
「魔術的な力も使われているそうですので、わかる部分だけお願いします」
「わかりました、さっそく取り掛かりましょう……お二人はしばらくお茶でも飲んで待っていてください」
「俺の勘だが、こいつが事件の鍵を握ってるに違いない、しっかり頼むぜ」
 そう言ってベアは飛空挺の所に戻っていった……いつでも飛べるように準備しておくらしい。

「では解体開始といきますか☆」
 話をしている間に機器を準備していた縁、ノリノリである。
「くれぐれも慎重にお願いしますよ」
「わかってますって……ありゃ……意外と単純な構造ですね」
 動物の心を読み取る部分と、それを人間の言葉にして出す出力部分。
 そして、その2つを制御する装置が必要になるはずなのだが……
「おそらく、これがスピーカーでしょう……しかし……」
「他には妙な結晶体があるだけ……こいつがメインってことですよね?」
 『喋るんデス!』内部は中央に赤い結晶があるだけで、制御機器の類は一切見られなかった。
 あっさり終了してしまい、がっかりする縁。
「魔術的な、と言うよりほぼ魔術具ですね……沢渡さん達を呼んできてください」

「魔術具、ですか……」
「ええ、この結晶体がほぼ全ての機能を担っていると思われます」
 説明しながら『喋るんデス!』から取り出した赤い結晶体を見せる孫陽。
「せっかくのまこっちゃんの頼みだったけど、ここまで単純に作られてるとはねぇ……手の打ちようがないよ」
 すまなそうに頭を下げる縁だが、これで一歩前進したのは間違いない。
「いいえ、とても助かりました、魔術具となればイルミンでいくらでも調べがつくと思います」
「じゃ、次はイルミンにひとっ飛びだな、任せてくれ」
 二人を乗せ、飛空挺が飛び立つ。

「校長があの時感じたという魔力の正体……ますます怪しくなってきましたね」
「こいつは急いだ方が良さそうだ、飛ばすぜ!」
 ベアが機体を限界まで加速する。
 まさに弾丸のように、飛空挺はイルミンスールへ飛んでいった。