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喋るんデス!

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喋るんデス!

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 ペットショップを後にしたエリザベート達はくれあを探知したポイントに向かっていた。
 先行している者達とも、そろそろ合流できるだろう。

「結局、その仔猫は何て言ったの?」
 先程の会話の内容を桜子に聞く明日香。
「その……」
「いいからはやく教えるのですぅ!」
 未だ言いにくそうにしている桜子をぽんぽん叩きながら、エリザベートがせがむ。
 なんとも言いがたい表情で、桜子は口を開いた。

「……ママはどこにいっちゃったの? おなかすいたよう……」

「…………」

 押し黙る一同。
「お母さん……この子達も助けてあげられないかな……」
「ミーミル……」
「校長先生、私からもお願いします!」
「ソアお姉ちゃん……」
 ソアが頭を下げる。
 ミーミルにとって、今目の前で起こっているこの現実は見過ごせないのだろう。
 それはもちろん、他の人間にとっても同じ想いだ。

「エリザベート師、そこでひとつ提案があるのですが……」
 音井 博季(おとい・ひろき)がそう口にしかけた、その時……

 思わぬ光景が彼らの目の前に飛び込んできた。





「これ以上の妨害は、止めていただけませんか?」

「く……さすがに……強いですね……」
 傷付き倒れているのはラムズ・シュリュズベリィ(らむず・しゅりゅずべりぃ)……地図を頼りに先行していた一人だ。

「まずそいつらを放せ! 話はそれからだ!」
 目を血走らせクロ・ト・シロ(くろと・しろ)が吼える。
「却下、それではお話になりません」
 冷徹に言い放つ志方 綾乃(しかた・あやの)、その手には一匹の白猫……くれあが捕らわれていた。
 それだけではない、彼女の後方には一台の車両……鉄格子に囲われたその荷台には、多くの犬や猫達が積まれている。


 ――空京保健所、愛玩動物特殊対策課――

 ……一般には、もっとわかりやすい名前で……「野犬狩り部隊」と呼ばれていた。

「そいつにこれ以上何かしてみろ、お前らを絶対に……」
 許さない……クロがそう言おうとした時、綾乃はくれあを宙に放り投げた。
「な!! てめぇ!」
 あまりにも無造作なその動作に、クロの反応が遅れる。
 もちろん、その隙を逃す綾乃ではなかった……

「これは公務ですから、障害の排除は……いた志方ない」
 一気に間合いを詰めた綾乃が拳を叩き込む。
 同胞であるくれあに気を取られるであろうクロの行動を予測するのは、容易かった。
「……がはっ!」
 見た目以上に重い一撃を受け、壁に叩きつけられるクロ。

「しばらくそこで、大人しくしていてください」
 そう言いながら綾乃は頭上に手を伸ばす。
 寸分違わず、放り投げられたくれあがその手を目掛けて落ちて……こなかった。
「??」
 いぶかしげに頭上を見る綾乃……くれあの姿が、ない。

「ヒャッハー! 今度こそ当たりだ!」
 空中でくれあをキャッチした鮪が、そのままダッシュローラーで逃走を計っていた。
「いつの間に……油断しました」
 慌てて追いかけようとする綾乃を霧雨 透乃(きりさめ・とうの)が制する。
「そんなに慌てなくても大丈夫だよ……陽子ちゃん、お願い」
「はい」
 返事をするよりも早く緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)が放った鎖が鮪を捉えた。
「アヒャアァあああ!」
 鎖によって負荷がかかり、大きく方向転換させられた鮪は、妙な角度から電柱に叩きつけられてしまった。
「はい終了、と……」
 鮪の手を離れ、逃げようとするくれあを透乃が捕獲する。

「ねぇ、この子達、この後どうするの?」
 くれあを荷台に積みながら、透乃が問う。
「一箇所に集めて、ガスで殺処分ですね……大型動物の場合は別ですが」
「ガス、ねぇ……」
 顔色一つ変えずに淡々と答える綾乃、透乃はどこか不満げな顔だ。
「一匹貰えないかな?」
「? あなたが飼うのですか? あまりお勧め出来ませんよ?」
 猫に情でも湧いたのかと思った綾乃だが、続く透乃の言葉はそんな予想とは違っていた。
「いや、そうじゃなくて……どうせ殺すなら食用にした方がいいかなって……」
「食べるのですか?」
「殺した命はちゃんと食べて、次の命に繋げていくべきだよ」
 ガスで殺すのでは、命を無駄にするようなもの……透乃はそれが不満だったのだ。
 確かに犬や猫を食べる食文化は存在する……ペットとはいえ、食用に出来ないことはない。

「……やめ……ろ……」
 食べる、という言葉が聞こえたのか、意識を取り戻したクロがよろよろと立ち上がった。
「……その体でまだやる気ですか?」
「同胞は絶対に、返してもらう」
 クロの目には不屈の闘志を感じられた。
「……どうやら、手加減をした事を謝罪しないといけないようです」
 本気を出すに足る相手とクロを認め、刀に手をかける綾乃……

「そこまでですぅ!」
 エリザベートの声が響いた。