リアクション
終章
雷火は片膝をついたまま、那美江に守り刀を差し出した。
那美江は紐を解き、刀袋を捨てた。豪華な装飾の柄と鞘だ。鞘には逆さ紅葉の紋が彫られている。――甲斐家の紋である。
「ようやった、九十九。じゃが」
那美江は目を細め、鯉口を切った。すらり、と刀身が半分だけ現れる。反りがなく、刃文は互ノ目だ。装飾を抜きにしても、美しい短刀だった。
「小僧はどうした?」
「残念ながら、落ち延びたようです。ですが」
「殺せ」
雷火は絶句した。
「しかし、これさえあれば――」
「わらわの言うことが聞けぬのか?」
「いえ――」
だが、短刀さえこちらにあれば、当麻が跡継ぎになることはまずない。
「殿は小僧の存在を知ってしもうた。生かしておいては、厄介なことになる。よいか、憂いは断たねばならぬ」
「――承知仕りました」
雷火は深々と頭を下げた。シュッ、那美江が着物の裾を翻す音が聞こえた。顔を上げたとき、そこには刀袋だけがあった。雷火は手を伸ばして、それを拾った。
雷火はしばしの間、刀袋を見つめていたが、ひょいと放り上げると、目にも留まらぬ速さでそれを切り裂いた。
はらはらと切れ端が落ちる中、雷火は己が役目を果たすため、歩き出したのだった。
実は続くのです(御免!)。
この度は「狙われた少年」へのご参加ありがとうございます。泉 楽(いずみ・がく)です。
せっかくの葦原明倫館、時代劇をやろうと考えたシナリオですが、長くなったので二回に分けることになりました。このシナリオはシナリオで一応完結していますので、次回から参加ということも、可能です。もちろん、引き続き参加というのも。というかお待ちしております。
大方(というか、全員?)の予想通り、当麻はご落胤ということが判明しました。しかし、その証拠が奪われ、まだ当麻の身も安全ではありません。次はその跡継ぎ問題をどうするか、という話になりますが、それはシナリオガイド公開をお待ち下さい。
今回のアクション、私のサンプルアクションのせいもあるのでしょうが、「当麻の母親の勤める一膳飯屋に行く」人が感触としては一番多かったようです。一度に描写するのは無理があったので、こちらで店と長屋の二つに分けました。ご了承下さい。人数がある程度いる場合には、グループアクションも一つの方法だと思います。(グループアクションについては、マニュアル「マスターシナリオ講座」をご参照下さい)
それでは次回「ご落胤騒動」でお会いしましょう。