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リアクション
第2章 信ずる友のための護り手と気ままな娘たち Story1
イルミンスールの森の中では・・・。
研究所を探していたが、セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は気絶したままだ。
パートナーとはぐれてしまい、幼い頃に災害に巻き込まれたトラウマに襲われてしまった。
苦しそうに小さく呻き声を上げ、ゆっくりと目を開く。
自分を押し流そうとした濁流の痕跡がどこにもなく、さらさらと流れる川も、増水した様子もない。
「濁流に飲み込まれたはずよね?なのに、どうして傷1つついていないのかしら・・・」
立ち上がったセレアナは、いったい何が起きたのか把握しようと辺りを見回す。
「甘い匂い・・・・・・?どの植物からも、同じような匂いがするわね。そうか・・・これは、この香りのせいだったのね!」
森の植物の香りによって、過去のトラウマが襲ってきたのだとすぐに理解した。
「あっ、そうだ・・・私ってセレンとはぐれてしまったのよね。セレン、セレンー!どこにいるのーっ!?」
はぐれたパートナーの名を呼び、森の中を歩き始めた。
セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)の方はというと・・・。
「もう触れないで・・・。いやっ、こっちに来ないで!」
過去の幻影を見せられ、セレンは悲鳴あげながら、鬱蒼と覆い茂る草むらの中を逃げ回る。
それもある売り飛ばさた先で、今のような力もなく、無力な自分が快楽の道具のように汚されてしまった。
たとえ幻であったとしても、錯乱しないほうがどうかしているというものだ。
「―・・・来るな、・・・来るなって・・・・・・言ってるのが聞こえないの!?」
手にしている二丁のマシンピストルのトリガーを引き、自分を汚そうとする者たちの頭部を吹っ飛ばす。
しかし、彼らはくたばる様子もなく彼女の足に手を伸ばす。
「ひっ・・・!」
また汚されてしまうのではと、小さく悲鳴を上げて、汚らわしいその手から逃れようとする。
ズタタタンッ。
銃声を鳴り響かせ、銃弾を浴びた彼の手首が千切れる。
相手が不気味にニヤリと笑うと、離れたはずの手がセレンフィリティの足をギリギリと握り締める。
「―・・・・・・・・・っ!?」
次々と群がる者たちに手足を捕まれ、またあの時のように・・・と思った瞬間、ぐらりと倒れて気を失ってしまう。
「セレン!」
パートナーが打ち鳴らす銃声を聞きつけ、ようやく発見したが・・・。
人の形をした卑しい者に襲われ、まるで凍りついたかのように動けない彼女の傍へ駆け寄る。
セレンフィリティの足首を握っている手を掴み、憎々しげに地面へ叩きつける。
「早くこの森から出たほうがよさそうね・・・」
夢の中でも恐ろしい目に遭っているのか、震えている彼女を背負うと、先に進んだ者が残した目印を頼りに、セレアナは森の出口を目指す。
“皆さん、無事に封神台の中へ入れたようですが・・・。まだたどりついていない人もいそうですね。”と、レリウス・アイゼンヴォルフ(れりうす・あいぜんう゛ぉるふ)は小さな声音で呟き、封神台の出入り口を守るべく、駆けたその時。
これ以上、中へ入らせまいと、毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)と数人の魔女が行く手を阻む。
「おっと、簡単には通さないぞ?」
「別に入る気はありませんけどね。けど・・・」
ギラリと睨む彼女の視線に怯む様子もなく、冷静な口調で言う。
2度も幻影を見てしまったが、なんとか逃れてここまでやってきたのだが、やはり過去のトラウマと向き合わなければならないのか。
しかし、今は自分がやるべきことを最優先するべきだ。
それは・・・。
「あなたを倒す気はありますよ」
残った敵である大佐や魔女たちを倒すことだ。
ヘリファルテに乗り、龍飛翔突をくらわそうとする。
「フッ・・・・・・そっちから突っ込んできてくれるとは・・・、なんともありがたいことだ」
メガネを人差し指でくいっと持ち上げ、迫り来る相手を見据える。
「待て、その焔に近づくな!」
「―・・・・・・!」
原田 左之助(はらだ・さのすけ)の声にレリウスはヘリファルテのハンドルを握り、大佐を守るように燃え盛る焔から離れる。
「ちっ、余計なことを!」
「接近戦は不利ということですか・・・」
「皆が出てくるまで、もてばいいだけの話しだろ?」
「フンッ。無事に出られたとしても、その先の道があれば・・・だがな!」
この持久戦だけ耐え切ればと言う左之助に、大佐は小ばかにしたように笑い、封神台の回りをソリッドフレイムの焔で囲む。
「無傷で逃がしてやると思っているのか?」
「あなたを倒せば無傷で済みそうですね」
フラワシを使役している者さえ倒してしまえば、避けて脱出することも出来るはず・・・。
ハイラル・ヘイル(はいらる・へいる)に目配せをし、ブライトクロスボウで彼女を狙わせる。
「そんなもの・・・、命中しなければ意味がないぞ」
「簡単に仕留められるとは思ってないしな」
無意味な行動に理解出来ない、という顔をする大佐を見て、ハイラルはニヤリと口元を笑わせる。
彼の表情にレリウスは小さく頷き、ターゲットを大佐からコンジュラーの魔女に替えた。
「こっちもあまり手段を選んでいられませんから、少し痛い目に遭ってもらいますよ!」
小型飛空艇ヘリファルテの高度を地面ギリギリまで下げ、幻槍モノケロスの柄で龍飛翔突を魔女の腹に叩き込み気絶させる。
「まったく躊躇しないなんてな・・・」
土の上に転がる魔女の身体をロープで拘束しながら、月崎 羽純(つきざき・はすみ)が小さな声音で呟く。
羽純の声が聞こえたのか、“それはお互い様でしょう?”というふうに、ちらりと彼の顔を見ると、他のコンジュラーの方へ視線を戻す。
「相手の回復手段を絶ったほうがよさそうよ、歌菜」
せっかく手傷を負わせても回復されては厄介だと、カティヤ・セラート(かてぃや・せらーと)はパートナーに顔を向ける。
「えぇ〜、もっと遊びましょうよ?」
魔女はクスクスと笑い、紅の焔を纏ったかのように、使役している焔のフラワシに守らせる。
「あんたなんかじゃ、私に近づけもしないわ♪」
「随分と余裕そうじゃないの?」
「見えないものを相手に、どう戦うっていうのよ?そーんなこと、出来るわけないじゃないのっ。キャハハハッ♪」
「術者さえ倒してしまえば済むことよ」
とは言ったものの、姿が見えないものがいる場所へ飛び込むのはさすがに無謀か、と羽純の方をちらりと見る。
彼の殺気看破で迫る敵意を察知出来たとしても、基本的にコンジュラーしか見えないため、姿までは確認出来ない。
避けることは難しそうだ、と首を左右に振る彼に“援護をお願い”と、くいっと親指で後ろを指す。
羽純は小さく頷くとカティアと遠野 歌菜(とおの・かな)にパワーブレスをかける。
暖かな光の風が彼女たちを包み、2人の力となる。
「ありがとう、羽純!」
「焔の壁に突っ込む気?ばっかじゃないのぉ〜」
ワイルドペガサスの手綱を掴み、迫るカティヤに臆することなく、余裕たっぷりの表情を崩さない。
「あんた、完全不死の男に燃やされた女じゃない?今度は私に燃やされるのね、かわいそぉお〜♪」
「聞くな、カティヤ!」
嫌なことを思い出させ、狙いを狂わせようとする言葉に、苛立ち見せるカティヤに羽純が言う。
「分かってるわよっ」
「ほらほら〜、早く燃えちゃいなさぁ〜い」
「火遊びしたいならどうぞ?その焔が私に届けばだけどね」
「その程度で避けきれるとでも?攻撃も届かず、とぉ〜くでダンスしているだなんて。だっさぁ〜い♪」
まるで踊るように焔をかわす姿を眺めながら高笑いをする。
「フラワシって1体しか降霊ないんでしたっけ?なんだか、とーっても不便そうですね♪」
カティヤをバカにする魔女に対して、歌菜が皮肉たっぷりに言う。
パートナーに気を取られている隙に背後へ迫り、シーリングランスをくらわそうとする。
「―・・・ぁっ!!」
しまったと小さく声を上げ、歌菜の方へ振り返ろうとする。
「油断しすぎよっ」
歌菜の技がコンジュラーに届く寸前、ウィザードの魔女がブリザードで彼女を吹き飛ばす。
「きゃあっ」
「大丈夫かい、遠野嬢ちゃん」
地面に叩きつけられそうになる歌菜の身体を、左之助がガシッとキャッチする。
「ありがとう・・・左之助さん」
「リベンジするなら付き合うぜ」
「拘束するのも一苦労な感じだね」
敵意を向けてくる魔女たちを見据え、椎名 真(しいな・まこと)がため息をつく。
「まー・・・助けられるものなら、助けてあげたいじゃない?」
目先の利益のせいでおかしくなっているだけだからね、と佐々良 縁(ささら・よすが)は彼の背を軽くぽんぽんと叩く。
「って、世話焼きの誰かさんなら、そう言うと思うんだよねぇ」
魔法学校に連れ帰ろうと封神台の中にいるその彼女なら、きっと言うだろうね、とにんまりと笑みを浮かべる。
「さてもさても、現状どうにかせにゃいかんねぇ〜」
その封神台の回りを焔の海にしてしまった大佐を見て、ふぅ〜っと歎息する。
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