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リアクション
3fairyland【7】
森ガール・コミュニティ『湖畔』。
立て続けに起こる爆音や悲鳴のもろもろに、のんびり写真を撮っていた森ガールたちも戦闘態勢に入る。
しかし、既にアゲハに同調したのぞき部が誇る精鋭……『エロリスト部隊』が動いていた。
「森を守れ、自然を守れというなら、すべてを自然にゆだねるでござる……」
「だ、だれ? どこにいるの!?」
銃を構え周囲を見渡す森ガールたち……だが、声はすれども姿は見えず。
いや、別に隠れ身や光学迷彩を使っているわけではない、忍者椿 薫(つばき・かおる)はずっとそこにいた。
全裸に葉っぱ一枚、ボディペインティングで周囲に溶け込み、威風堂々仁王立ちしている。
「きゃあああああ!!」と悲鳴を上げる彼女たち。しかし静まれよ、と薫は制す。
「やかましくては自然の声は聞こえぬでござる。さぁ拙者を見るでござる、そして拙者を見習うでござるっ!」
森を守れ、自然を守れ……ならぬ、盛りを守れ、据え膳守れののぞき部精神ここにあり。
これぞ忍びを超えた忍び。いっそ忍ばない。ありのままの自分を見せつける。
薫は語る。まっすぐ自分を曲げねぇ、それが拙者の忍道……いやぴんと勃った忍棒でござる……と。
そして、もうひとりのエロテロリスト鈴木 周(すずき・しゅう)も立ちはだかる。
「うちの相棒の言う通りだ。まことに遺憾ながらおまえ達はエコを取り違えてる、完全にっ!」
ビシィとおびえる森ガールに指を突き付ける。
「いいか、例えば合成繊維! これが何から出来てるか知ってるか、石油だぞ!? さらに例えばシルク! 自然の中で生きる蚕たちを抵抗できない繭の間に茹でる! そしてその銃火器! 鉄のために自然を破壊し大地を掘りつくす!」
「そ、それはそのぅ……」
「人はもっと自然に生きるべきなんだよ、生まれたままの姿で本能のまま男と女が愛し合うんだよ!」
慈愛に満ちた眼差しで言うと、クロスアウト。周もまた生まれたままの姿となった。
とそこにまたひとり更なる変質者があらわれる……パンツ番長こと国頭 武尊(くにがみ・たける)だ。
「今の話が本当なら捨て置くことはできねぇな……」
「パンツ番長……!?」
「環境エロロジストを名乗るくせに、化学繊維由来の下着なんて付けてた日にゃ……重大な裏切り行為だぜ?」
エロロジストじゃないよぉ、と言う森ガールの声はシャットアウトし、武尊と周は目で語る。
「確かめるっきゃねぇよなぁ、鈴木さんよぉ!」
「当たり前だ、いつから俺の股間がマキシマムだと思ってんだ。こちとらはなっからそのつもりだぜ!!」
漢の魂ゲージマックス。二人は蝶のように舞い、森ガールと言う名の花に飛びかかる。
反撃の銃弾もなんのその、2、3発もらうも、股間のヴリトラ砲に血液が行ってる周にさほど出血はない。
「見せてやるぜ、歴戦の必殺術……じゃなかった歴戦の脱衣術をっ!」
すれ違い様に服に手をかけ、乳・尻・ふとももと流れるようにスキンシップ……そして、一気に剥ぎ取る。
が、しかし、浅い。重ね着がデフォルトの森ガール、一撃では全てを剥ぎ取ることが出来ない。
「オレに任せろ! うおおおおお!!」
武尊はアクセルギアで加速。ラスター血煙爪二刀流で残りの衣服をバラバラにし、下着を神速の手つきでひっぺがす。
森ガールはきゃあああ、と悲鳴を上げ、大事なところを押さえてうずくまった。
武尊はいち早く材質を確認するため、パンツとブラを鼻先に押し当て、クンカクンカと鑑定を行う。
「……綿100%だ」とちらり裸の森ガールを一瞥。「科学繊維ならケツバットにしてるところだ、命拾いしたな」
渋く決め、戦利品を懐に忍ばせようとする……が、そのパンツを周が掴んだ。
「ちょっと待ちな。そいつをどうする気だ。まさか独り占めしようってんじゃねぇだろうな……?」
「……パンツ番長がパンツを頂いて何が悪い」
「ふざけたこと言ってんじゃねぇ! パンツはのぞき部の……いや、俺のもんだ!!」
「ざけんな! 汚い手を放しやがれ! オレのパンツにしわがつくだろうが!!」
先ほどの共闘はどこへやら、人間とはまこと醜いものである。
そして、さっきから大人しい薫はと言うと……、他の森ガールたちをヘビのように執拗に追いかけ回していた。
「ほらほら、シンガポール名物、マーライオンでござるよぉ〜。椿印のマーライオンでござる〜」
「なんでシンガポールなのよぉ!」
逃げる森ガール。しかし、その行く手にまたひとり変態が立ちはだかる。ここ、変態しかいねぇな。
変態お兄さんクド・ストレイフ(くど・すとれいふ)が花柄パンツ一枚で堂々たる構え。
まだパンツをはいてる分、エロテロリストよりは若干紳士にも見えるが……。
「違います。お兄さんはありのままの姿が良かったのに、ハンニバルさんがどうしてもはけって……」
誰に言い訳してるのか知らないが、クドは森ガールに向かってスキップまじりに駆け出した。
「エロテロリストの一団がお兄さんに向かってくるなんて……これは、これはてぇへんですよ! てぇへんです! そして、お兄さんの社会的地位は底辺ですよぉー! いや、そんなことはどーでもよく……はないんですけど、とにかくお兄さんのテンションがてぇへんです! エロテロリストだなんて……どんなことをしてくれるんでしょう!」
正確に言えばエロテロリストは薫のほうなのだが……常軌を逸したテンションでクドは一団に飛び込む。
だが、花も恥じらう乙女と言えど、武装集団の森ガール、近付く彼をライフルの柄でボコボコに叩きのめす。
「いやー! こないでよぉ!」
「むしろあえてパンツをはいてるのがホンモノっぽいし! このとんでも変質者がぁ!」
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
メッタ打ちにされるクド……けれど我々の業界ではご褒美である。その表情は幸福に包まれていた。
一発一発のなんなら金を払っても良いぐらいの重い一撃に紳士である彼は感謝の心を忘れない。
そんな血に染まるレイクサイドに、ノート・シュヴェルトライテ(のーと・しゅう゛るとらいて)がやってきた。
一見するとそれは泥人間だった。頭には練乳のように白濁した汁がかかっており、何か不定形の生物にも思える。
何故こうなったのか……それはシボラサイドをご覧になれば一目瞭然だろう。
「うう、着替え……」
腹黒大和撫子風森 望(かぜもり・のぞみ)は呻くノートにため息ひとつ。
「まったく汚れだらけになるのは目に見えていたのですから、着替えを荷物に入れてくればよろしいのに」
「そ、そんなこと今更言われてもどーしよもないですわ」
「どーしよもないのは出会った時から知ってます。ほら、森ガールさんから服を頂戴したらどうです?」
「なるほど……、現地調達、剥ぎ取ってこいと……?」
納得するノートにペタペタと葉っぱを貼付ける望。
「……なんの真似ですの?」
「迷彩効果が期待できるんじゃないかと思いまして。戦に赴くには細心の注意が必要ですよ」
「うーむ。しかし、これじゃ迷彩と言うより『珍獣』じゃな」
伯益著 『山海経』(はくえきちょ・せんがいきょう)はポツリと言い、本体たる山海経にさらさらと書き込む。
山海経は古代中国の地理書、未開のシボラの情報をついつい書き留めてしまうのは、もはや習性と言ってもいい。
「東方シボラ。奥深い密林に、我、珍獣『泥団子ヴァルキリー』を発見す……、と」
「ちょっと! 誰が泥団子ヴァルキリーですの!」
「気に入らんのか。ヴァルヴォロスとかどうじゃ。他にもダーティヴァカキリー、泥んこ戦乙女とかあるが……」
「わたくしは珍獣じゃありません!」
プンスカ怒ったノートは勢いに任せ、ゴロゴロゴローとバーストダッシュで森ガールに突っ込んだ。
土を巻き込んで更に巨大化した泥団子がストライク。ボウリングのピンのごとく森ガールははね飛ばされた。
そして、押し潰され唯一飛ばされなかった森ガールの服を、ノートはむしるように剥ぎ取っていく。
「やー! な、なにするんですかぁ! やめてくださぁい!」
「ええい、うるさいっ! 大人しくなさいっ! ウブなねんねじゃあるまいし!」
「お嬢様……それじゃただの痴女ですわ」
呆れて呟く望。と、その前を人力車を押すハンニバル・バルカ(はんにばる・ばるか)が通り過ぎる。
「廃人回収ー、廃人回収にやってきましたなのだー。ボクが引き取るので変態には近づいちゃいけませんのだー」
車には薫と周、武尊、そしてクドと言う……変態の森の住人たちがオールスターで乗せられている。
「ああ……見るでござる……。拙者のマーライオンが。タマセクもうずいてきたでござるよ……」と薫。
周と武尊は殴り合ったのだろう、互いにボコボコ……だが、そこに友情が芽生えたようだ。
「先にかぶれよ」とパンツを差し出す武尊。「おまえ、優しいな……」と周はパンツで涙を拭う。
クドはズタボロながら、満足そうに果てていた。何故か両手でティッシュを抱えている。
納得の廃人たちを一瞥し、ノートを一瞥、望はハンニバルに声をかけた。
「はいはーい。廃人回収ですよー。誰か引き取って欲しい廃人でもありますかー?」
「ええ、珍獣を一匹お願いします」
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