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リアクション
4&【1】
森ガール・コミュニティ『ニコリーナの家』。
コミュニティの奥にある赤い三角屋根の細長い家。憧れの北欧ファンタジー風の屋敷。
こここそがコミュニティを統べるカリスマ、【C.W.二コリーナ】の居城である。
丘の上にある屋敷を目指すアゲハ。
しかし、騎沙良 詩穂(きさら・しほ)はちょっと待って、と止める。
「流石にその頭じゃ目立ち過ぎると思うの。ボス戦前は慎重に行動しなくちゃ。変装しちゃおうよっ」
「変装ってなにそれ……?」
「その意見には私も賛成しますわ。その年中正月頭では敵に自分の居場所をおしえて回ってるようなものですもの」
アゲハをライバル視するファトラ・シャクティモーネ(ふぁとら・しゃくてぃもーね)もそれには同意。
まずは詩穂。愛の宿り木、ドリアードの枝、榊の枝に黄金の枝、あと扶桑の枝、生け花の要領で頭に差していく。
次にファトラ。こちらはなにやら怪しい液体を頭に塗り込む。何かはおしえてくれなかったが。
そして、完成したのはハイドロカルチャー風。森での擬態効果は期待出来そうだ。
詩穂は密林仕様になったアゲハの頭に満足そう。
でも、土台のハイドロボールって紙オムツに使うヤツだよね……。
紙オムツ頭……ううん、紙オツムね。パラミタパンツ四天王の1人、紙オツムのアゲハ、なんちゃって。
ひとりニヤニヤ妄想に耽る詩穂。アゲハは怪訝な顔で「なんだコイツ?」と首をかしげる。
準備が整ったところで前進開始。先頭は完全に薬丸さん清風 青白磁(せいふう・せいびゃくじ)。
その筋の人にしか見えない風貌とは裏腹、慎重に慎重にトラップの有無を確認して進んでいく。
「わしの通ったところをちゃんと歩くんじゃ。何が仕掛けられとるかわかったもんじゃない」
「あのさー」とアゲハ。
「なんじゃ神守杉……、むっ、まさか不審なものでも見つけたんか。どこじゃ、わしに任せぇ」
「じゃなくて、おっさん歩くのおっせーんだけど。マジ日が暮れっから」
罠があろうがなかろうがおかまいなし。デコバットを肩に担いでずんずん先に行ってしまう。
「お、おっさん……」
詩穂はぽんぽんと背中を叩き慰める。
そして辿り着いた屋敷の入口。扉はさほど強固には見えず、押し入るのは簡単そうに見える。
しばし迷う。迷う。迷っていると樽型機晶姫樽原 明(たるはら・あきら)がしびれを切らした。
「古人曰く『兵は神速を尊ぶ』と言う。迷ってる場合ではない。先手必勝、敵の意表を付いた奇策が必要なのだっ」
ゴロゴロと転がりすこし脇に裏口を発見。ニヤリとダンディに笑み、明は声をかける。
「奥さん、武器屋です!」
しばらくして……うちは「武器屋なら間に合ってます」とつれない返事が。
ならば、と米屋パン屋三河屋チンドン屋……など考えつくものを手を変え品を変え呼びかけていく。
若干目的がぶれつつあるが、そうする内に「もう。うちはセールスお断りなんですぅ」と扉が開いた。
「ぶぅるぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
圧倒的勝利を確信した明の咆哮。胸部内蔵の六連ミサイルポッド……おっぱいミサイルを叩き込む。
爆発。勢いよく外に噴き出す黒煙。やったか……いや、そう思った時は絶対にやっていない……!
中から反撃のビームキャノン。明は直撃を喰らい、ぬおおおっと転がる。
そして次の瞬間、壁を体当たりで粉砕し巨大な重ね着森ガール、ニコリーナがあらわれた。
「たかだかミサイルでわたしを仕留めようなんて、随分甘く見られたものですねぇ。ナメてんですかぁ?」
ボロボロと焼け落ちる衣服、しかし重ね着の所為かダメージはほぼ通らず、服の下にはまた別の服が重ね着されてる。
恐るべき重ね着の防御力。まさか森ガールにこれほどのポテンシャルがあろうとは誰が想像しただろうか。
続いて正面玄関も開き、配下の森ガールたちがアゲハたちを完全に包囲する。
「にしても、わざわざこんなとこに来るなんて、アゲハさんはヒマなんですねぇ。ほんとうらやましいですぅ」
「うるせー。あんたに病院送りにされた仲間に代わって、ボコボコにして泣かしてやるっ」
「えっらそーにぃ。ふんだ、いいもんね。空京まで行く手間はぶけたしぃ、ここであなたをぶっ殺しちゃいまぁーす」
緊張の糸がキリキリと引き絞られる……と、そこで詩穂がちょっと待ったと割って入る。
「おっぱじめる前に一言だけ!ニコリーナちゃん、あなたは間違ってるわっ!」
「はい?」
詩穂の相棒セルフィーナ・クロスフィールド(せるふぃーな・くろすふぃーるど)が前に出る。
「いいですか。エコロジストを名乗るなら、その格好はなってません。自然に還るには生まれたままの姿でないと」
「大体、ニコリーナちゃんの重ね着、普通の感覚で言っても、おかしいよ! 脱ぎなよっ!」
「脱げないとおっしゃるなら、わたくしのクロース(衣類)ファイアでお手伝いしましょうか?」
気のせいだろうか、さっきも湖畔でこんなアホな主張を聞いたような……デジャブだろうか。
……と、突然、ニコリーナが吠えた。
「……って、森ガールが重ね着やめたら、アイデンティティクライシスだろがっ!!」
凶暴さをむき出しにするニコリーナ。そのゆったりワンピの隙間から突如鋼鉄のアームが飛び出した。
アームの先には大口径マシンガン、ダダダダッと火を吹くや、セルフィーナは吹き飛ばされ屋敷の壁に突っ込んだ。
唖然とする一同……を尻目に、ニコリーナはまたいつもの調子に戻る。
「あら、ニコリーナいっけない。キレちった。めんごめんご」
「な、なにそれ! その下になんかメカっぽいのあるでしょ! なんだそのメカ! 自然じゃないよ、不自然だよ!」
食って掛かる詩穂に頬を膨らませる。
「失礼な人ぉ。【ゴリアテ】は大自然を護る太古のガーディアンなのにぃ」
すると、ワンピの下から昆虫を思わせる六本の脚が飛び出し、ビームキャノンを搭載したもう一本の腕も出てきた。
彼こそニコリーナのパートナー、重戦車を彷彿とさせる機晶姫のゴリアテである。
元々はシボラの森を護ってきた太古の戦士とのことだが……、その辺りの事情はまだ謎な部分がたくさんある。
「古代過ぎて言葉が意味不明なのがあれなんだけどぉ、ゴリアテは強いんだよぉ」
「9538472398393888!!」
人機一体のニコリーナとゴリアテ、それには理由がある。
彼女は重ね着で鉄壁を誇るが重過ぎて動けない、そこを補うため常にパートナーの上に乗っているのだ。
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