First Previous |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
19 |
Next Last
リアクション
4&【3】
事態はますます混乱の様相を呈す。
こんな時、舞台なら機械仕掛けの神が舞い降りるだろう。
デウス・エクス・マキナ……と呼ばれるそれは、あらゆる混乱を、神の一声のもとに収束させる超展開だ。
しかし、ここに機械の神はいない。いるとすれば、鍛冶の神である。
一部始終を見ていた天津 麻羅(あまつ・まら)は大きな声で言い放つ。
「ここまできても力を捨てぬとは愚かなり、ニコリーナ!」
「……?」
辺りを見回し、上を見上げ、三角屋根のてっぺんに彼女の姿を見つける。
「……ってなにやってんの、麻羅っ!」
彼女を捜していた契約者の水心子 緋雨(すいしんし・ひさめ)は、ようやく見つけた相棒の暴走に唖然……。
「神を語る怪しい宗教があるって聞いた途端いなくなって……」
「ああ!?」
「あ、失礼……」
前々から時折、全知全能の神のように尊大な態度になる時があったが、今回のこれはそれにしても重症だ。
「おぬしが力をもって排除するのであれば、いずれはより大きい力によって排除されよう。それが自然の摂理! 誰かが手を下さなくてもいずれは自然に淘汰されるじゃろう。じゃが神のような振る舞い……例え自然が許そうとも、神であるこのわしが許しはせぬ! おぬしを倒しおぬしが作ったコミュニティを新たに『麻羅教』とするのじゃ!」
一瞬、私欲が垣間見えた気がしたが……さておき、彼女は飛翔、落下の加速を持って正義の鉄槌を繰り出す。
だが、真正面から来る彼女を迎え撃とうと、ニコリーナはビームキャノンを構えた。
「くたばれっ!」
引き金に指をかけた刹那……!
カレンのフルスイングが銃身を殴打、更に祥子が足下を払い態勢を崩す。光線は明後日の方向に飛んでいった。
そしてもはや、麻羅を止めるものはどこにもいないっ。
「か・み・の・い・ち・げ・き!」
顔面を叩き潰す衝撃。ぶしゅっと鼻血が噴き上がり、バキボキと前歯がへし折れた。
そのままゴリアテが崩れるように転落。あまりの痛みに顔をぐしゃぐしゃにしてニコリーナは泣きわめく。
「ひ、ひどいですぅ……! ど、どうしてわたしが負けるんですかぁ……!」
「……うぜーコイツ……」
デコバットを振り上げるアゲハ……しかし、ファトラが止める。
「とても簡単なことですわ。それは彼女……アゲハのほうが真のエコロジストだからです」
「ハァ?」
奇天烈発言に、当の本人も目をぱちくり。
「この頭をよくご覧なさい、ニコリーナさん」
「え、頭って……え? ええ!? ま、まさかそれって……!!」
ハイドロカルチャー化され、緑の楽園となった彼女の頭をよく見ると、蠢く何かがちらほら……。
世にも珍しいシボラ産のカブトムシやハチが、頭に塗られた蜂蜜を求め、絶賛パーリータイムを満喫中である……!
そう。ここに来る前、ファトラが塗り込んでいたものとは虫も大好き蜂蜜だったのだ。
「あなた達に身を呈して蟲達の為に尽くすことができますか?」
「ぐ……、そ、それは……」
「もはや彼女の頭は蟲達のコロニー、言うならば、彼女自身が大自然となったのですわ。森羅万象の全てがアゲハの髪にあると言っても過言ではありません。これぞ究極のエコロジー、自然を守るために戦うあなた達と、自然そのものとなったアゲハではレベルが違います。彼女こそがシャンバラの誇る最強のビーストマスターなのですわ!」
ニコリーナは俯き、ぷるぷると震えながら言った。
「わたしの……負けですぅ……」
決着。そして次の瞬間、アゲハは絶叫した。
「ホギャーーーーッッッ!!!」
虫嫌いのアゲハにとってこれほどの悪夢はない。ぶくぶくと泡を吹き、ばたんとその場にひっくり返った。
計画どおり……、ファトラはニヤリと微笑む。
これで森ガール達をアゲハの傘下とすれば、シボラの珍しい植物から化粧品の素材が手に入るかもしれないわ。
いいえ、それだけじゃなく寒い冬の時期に常夏のビーチが何時でも手配できるかも……。
ああ、夢は膨らむわぁ。ま、可哀想だからビーチにはアゲハビーチって付けてあげようかしらねぇ。
しかし……、それは夢のまた夢。
回復したアゲハとの間に、今回の戦争ばりの壮絶なバトルが勃発したことは言うまでもない。
First Previous |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
19 |
Next Last