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第3章 お正月はのんびりと

 元旦。
「うわぁー」
「みゃぁ」
 空京神社を訪れた、少女と、少女の頭の上に乗ったミミズク型のギフトが驚きの声を上げた。
 少女――ミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)の小さな体では、神社の本殿は全く見えないし、鳥居の場所さえもよく分からない。
 道路から人々の行列が続いていて、人の姿しか見えないのだ。
「ジーク君人がいっぱいですごいね。落ちないように気をつけてね」
「みゃぁ!」
 頭の上に乗っているのは、誕生したばかりのギフトの子、ジーク・シーカー(じーく・しーかー)
 ミーナの上にいるジークには少しだけ人々の流れが見えていた。
 それに、見えなくても感じることがある。
「みゃぁ、みゃぁ!」
 ミーナの髪の毛を掴んで、ジークは引っ張った。
 いい匂いが届いてきたのだ。
 参拝客の列の左右に、屋台が立ち並んでいた。
「ダメだよ、大人しく並んでないと」
 ミーナは手を伸ばして、ジークを押さえた。
「みゃぁ……」
「帰りに寄ろうね」
 ミーナがジークの身体を撫でると「みゃぁ」と残念そうな声を上げて、ジークは大人しくなった。
 鳥居をくぐり、参道をゆっくり歩いて。
 1時間ほど並んで、ミーナ達はようやく参殿の前へと到着をした。
 前の人に倣って、賽銭を入れて、鈴を鳴らして。
 深くお辞儀をして、拍手をして、ミーナとジーク願い事を言う。
「みんな仲良くけんかせず元気にくらしたいです! あと、恋人の先輩ともっとラブラブしたいです」
「みゃ!」
 それからまた深くお辞儀をして、次の人の邪魔にならないようすぐにその場を離れた。
「それじゃ、お参りもすんだし、絵馬をかけて帰ろう。帰りにちょっと屋台にも寄ろうね♪」
「みゃぁ」
 ジークがミーナの肩に下りてきた。
「ん?」
 何か用でもあるのかな? と、顔を向けたミーナの頬に、ジークはすりよった。
「みゃぁ」
 それはジークからミーナへの、今年も宜しく、の挨拶だ。
「うん、今年もよろしくね、ジーク君」
 ミーナは微笑んで、首を振って答えながら、ジークの頭を撫でた。
 それから、初穂料をお納めして絵馬を受け取って、ミーナは祈願を書いた。ミーナの祈願は、大好きな人との結婚だ。
「さーて、どの屋台に寄りたいのかな? ジーク君はミーナの頭の上から確認できてたかな?」
「みゃぁ」
 ジークが翼をビシッと一方に向けた。
「食べ物屋さんの屋台が立ち並ぶ方だね。どこに寄るか迷っちゃうね〜」
「みゃぁ」
 ジークは再び、ミーナの頭の上に乗る。
「お土産も買って行こうか。持ち帰り出来るものあるかな」
 ジークが落ちないように気を使いながら、ミーナは屋台の方へと歩いて行った。
 初詣を終えたあと、今年の正月はパートナー達とのんびり、ゆっくり過ごす予定だった。