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第5章 デート!?

「アゾートさーん!」
 1月1日の昼過ぎ。
 空京神社に訪れた風馬 弾(ふうま・だん)は、恋人であるアゾート・ワルプルギス(あぞーと・わるぷるぎす)の姿を見つけて、慌てて駆け寄った。
 待ち合わせの時間の5分前。遅刻はしていない。
「すみません、待ちましたか?」
「ううん、今来たところ」
「!! くぅう……」
 弾は幸せを噛みしめる。
(初詣に恋人と一緒に行くなんて、リア充っぽいというかデートっぽいというか、昔からの憧れで、こんなやりとりも、ずっとしてみたかったんだー)
 弾は一人で赤くなって、喜んでいた。
 しかし。
「待ちました」
 アゾートの後ろから、ひょっこりノエル・ニムラヴス(のえる・にむらゔす)が顔を出した。
「待ち合わせの1時間前の到着は常識でしょう?」
「の、ノエルなんでここに、せっかく2人きりで……」
「さあ、行きましょうー」
 ノエルはアゾートの手を引いて、歩き出す。
「あああああ……リア充っぽくないよ、これ」
 がっくり肩を落としながら、弾はついていく、が。
 2人は華やかな振袖を纏っていて、とっても可愛らしかった。
「アゾートさん、とっても似合っていて、か、かわいいですっ」
 弾はアゾートの隣へと走り、彼女に赤い顔を向けた。
「あら、弾さん! 鼻の下が伸びてますよ!」
「えっ!?」
 弾が両手で鼻を隠す。
「キミ達はホント、面白いよね」
 アゾートはくすくす笑っていた。
 そんなやりとりをしながら、参殿の前にたどり着き、3人は賽銭を入れて鈴を鳴らした。
 それから礼をして、祈願していく。

「アゾートさんは何をお願いしたの?」
 祈願を終えた後、3人並んで歩きながら弾がアゾートに尋ねた。
 ノエルのことは見ないことにしている。
「成功を目指して頑張るって誓いかな。キミは?」
「僕は……『もっと強くなって、皆を守れるようになりますように』かな」
 言ってちょっと赤くなる。
 とくにアゾートさんをと、弾は小さく付け加えてお願いしていた。
「私はリア充爆は……」
 聞いてもいないのに答えだすノエルを、弾は非難を籠めた目で睨む。
「コホン。嫌ですわ、あたしったら何を言っているんでしょう、オホホ……」
 目を逸らして笑った後、ノエルはこう言いなおした。
「正しくは『今年中に二人がチューぐらいまでは進みますように』ですね」
 そしててへっと笑いながら舌を出す。
「!!!」
 ボッと弾は赤くなり、俯いた。アゾートがどんな顔をしているか、気になるけれど見る事が出来ない。
「お、おみくじ引かないとね!」
 言って、ぎくしゃくおみくじを引きに行く。
 引き当てたのは『末吉』だった。
 うーんと思いながら、内容を確認すると……恋愛運にはまずまずの運気であり、積極的な姿勢が必要と書かれていた。
(積極的、積極的にだね。よし、頑張らないと……!)
 弾はうんうん頷きながら、今後のアゾートとのお出かけプランを練っていく。
 それから、アゾート達がみくじを引いている隙に、お守りをいくつか頂いておいた。
 恋愛成就のお守りはこっそり自分のポケットに入れて。
「アゾートさん、どうぞ」
 諸願成就のお守りをアゾートに渡した。
「ありがとう」
 アゾートは大切そうに御守を両手で包み込んだ。
「ノエルにはこれを」
 体力が弱めのノエルには、無病息災のお守りを渡す。
「ありがとうございます、弾さん」
 ノエルは素直に、お守りを受け取って笑みを浮かべた。
「それにしても、凄い混雑してるね……。屋台にでも行ってみたいところだけれど」
 人の流れに沿って、順々に回っていくしかなさそうだ。
「スリとかいるかもしれないし、はぐらにようにね」
 と、弾はアゾートの肩を抱き寄せた。
「あっ、えっと……」
「あ、いや、決してくっつくのが目的なワケじゃなくっ
 あくまで庇うためでいやくっつきたくないわけじゃないけど、そんな不埒なことじゃなくてあのそのあうぅー」
 赤くなって混乱しながら弾はアゾートを見た……が、抱き寄せたのはアゾートではなく、ノエルだった。
「アゾートさんは、お手洗いに行かれましたよ、弾さん」
 にっこりノエルは微笑んだ。
「あ、うー……」
 がっくり、弾はまた肩を落とした。
 ともあれ!
 戻ってきたアゾートと無事合流をし、その後は弾とアゾートと二人で肩を並べて歩き、ノエルは後ろからついてくる形で、散策を楽しんだのだった。