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三つの試練 第三回 砂漠に隠されたもの

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三つの試練 第三回 砂漠に隠されたもの

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2.

 表彰式は、会場を移し、ジェイダスの屋敷にて執り行われることになった。
 すでに日が暮れたことと、会場を変更することで、空気を変えるためだ。
 薔薇学の生徒たちが調えたホールにて、優秀選手の名が発表されていく。

●優秀選手賞 大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)『機体 イーグリット・アサルト』
●優秀選手賞 クリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)『機体 シパーヒー』
●優秀選手賞 ヴァル・ゴライオン(う゛ぁる・ごらいおん)『機体 シパーヒー』

●最優秀選手賞 南臣 光一郎(みなみおみ・こういちろう)『機体 シパーヒー』

「以上の者たちは、イコンの能力を最大限引き出すよう努力し、また、素晴らしい試合を行ったということを讃えて贈るものである」
 引き続き司会を務める久途 侘助(くず・わびすけ)が、用意された原稿を読み上げる。そして、やや間をおいて。
「……また、タシガン領主、ウゲン様より直々の推薦により、特別賞として……」

●特別賞 変熊 仮面(へんくま・かめん)『機体 シパーヒー(?)』

 会場が、苦笑めいた笑みにどっと沸いた。
 名前を呼ばれた生徒は、それぞれにウゲンから、直接にメダルを受け取ることとなった。薔薇のレリーフが彫られた、銀色のメダルである。光一郎のみが、金色をしていた。
 拍手がわき起こり、生徒たちは深々と一礼をすると、それぞれの席へと戻った。

 来賓からの締めの挨拶も終わり、最後に壇上に立ったのは、ラドゥだった。
「……さて。貴様らも知っての通り、我が校にはイエニチェリという存在がある。いずれは、薔薇の学舎と、ひいてはジェイダスの持つものを全て受け継ぐ、そのために選ばれし生徒だ」
 ラドゥは一度、言葉を切り、壇上から人々を見下ろすと、軽く鼻で笑った。
「貴様らのなかにも、目指していたものもいるだろう。そのために、様々な試練を受けたはずだ。……ここに、新たなイエニチェリを発表する。心して、聞くが良い」
 一枚の紙片を、ラドゥは開く。そこには、13の名前が並んでいた。

ルドルフ・メンデルスゾーン(るどるふ・めんでるすぞーん)
真城 直(ましろ・すなお)
黒崎 天音(くろさき・あまね)
藍澤 黎(あいざわ・れい)
鬼院 尋人(きいん・ひろと)
南臣 光一郎(みなみおみ・こういちろう)
早川 呼雪(はやかわ・こゆき)
クリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)
リア・レオニス(りあ・れおにす)
皆川 陽(みなかわ・よう)
 以上、十名の名前が、告げられた。
 驚く者、密かに安堵する者、喜びを露わにする者、反応は様々だ。
 そしてさらに、ラドゥは続けた。
ヴァル・ゴライオン(う゛ぁる・ごらいおん)
大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)
「この者たちはは、薔薇の学舎に転入するという条件がつく。異論があれば、辞退するがいい。それと……」
ブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)
 その名に、彼を知る者たちは、一様にざわめきの声をあげる。
 しかし、ラドゥはただウゲンを一瞥した。ウゲンは微笑んでいる。……彼の推薦であることは、明らかに思えた。

「選ばれた者たちは、より励むがいい。今回選ばれなかった者たち。貴様らは劣っているというわけではない。ただ、イエニチェリたる者としての熱意が、ほんの少し足りなかったというのみだ。……な、慰めているわけではないぞ! 勘違いするな。つまり、選ばれた者たちとて、切磋琢磨がまだまだ必要だという意味だ!」
 ラドゥはそう付け加えると、足早に壇上を降りていった。
 入れ替わりにそこに立ったのは、ジェイダスだ。
「本日は、楽しんでいただけただろうか。我々が手にしたイコンの能力は、ご堪能いただけたことかと思う。今後も、ともにパラミタの開発、および地球の経済発展のために、手をとっていこうではないか」
 そのようにジェイダスは語り、そして、最後に。
「イエニチェリと、そしてそれを支える人々は、私の、そして人類にとって、希望の星となりうるだろう」
 そう、高らかに宣言をしたのだった。


 ……そうして、様々な驚きと思惑を秘めつつも、表彰式はつつがなく終了した。



「イエニチェリが決定ですか」
 一連の出来事を、裏から調査し続けていた戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)が、報告のためのメモを片隅でとっていた。
 昨夜、同じく教導団のトマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)から聞き取ったことによれば、ジェイダスの目的は、あくまでエネルギー問題ということのようだが……。
「黒い迷宮とは、その装置のことか、あるいはそれがある場所か……」
 小次郎はそう独りごちる。
 ここにやってきた理由は、シャンバラにとって、急激なパワーバランスの崩壊に繋がるような出来事があれば、それを未然に防ぐためだ。
 カミロの登場には驚いたものの、彼はあっけなく退散したとことから見ても、目的はただシパーヒーの能力確認だったようにも思える。故に、カミロは、エネルギー関連の問題とは今のところ関係がないのかもしれない。
 いずれにしても、推測の域はでないにせよ、ジェイダスがなにをしようとしているかはハッキリした。パラミタ大陸における、なんらかのエネルギー精製手段を確立しようとしていること、そしてそのために……おそらく、イエニチェリをそろえる必要があるということだ。
「案外、イエニチェリとは、人柱なのかもしれませんが
 不穏なことを呟きつつ、小次郎は人気を感じ、静かにその場を立ち去った。
 イエニチェリがどのようなものであろうと、薔薇学がどんな未来をたどろうと、小次郎自身には関係がない。ただそれが、多く影響をもつようであれば、今後も警戒は必要であろう。
 エネルギーが、争いを引き起こす。それは歴史をひもとくまでもなく、事実なのだから。





「お別れ、寂しいな……。また、遊びに来てね」
 パラミタに戻る日。
 ヤシュブは涙ながらに、生徒達にそう訴えかけた。
「いつか、少年も来るといい。いつかパラミタに来たら…もっと素敵な景色を見せてやろう!」
 変熊仮面がそう胸をはって請け負うと、ヤシュブはようやく笑った。
「お待ちしていますよ」
 神楽坂翡翠もそう言うと、微笑んでみせる。
「ああ、そうだ。景色といえば……アスカから預かっていたのだけど、昨日は渡せなかったの。どうぞ」
 オルベール・ルシフェリア(おるべーる・るしふぇりあ)が差し出したのは、師王アスカが今まで見てきた風景や人物が描かれている、一冊のスケッチブックだった。
「わぁ……! ありがとう!」
 色とりどりの美しい景色に、ヤシュブは目を輝かせた。これから彼は何度も、そのページをめくり、夢をはせることだろう。
 冒険心と、憧れと、夢をこめて。
「頑張って、身体が丈夫になったら……絶対、遊びに行くね!」
「はいなのです!」
 すっかりヤシュブと仲良くなったあいじゃわが、自身も涙を堪え、大きく頷いた。


 そう、いつか、パラミタで再会することもあるだろう。
 そのとき、パラミタは、ヤシュブが夢見る通りの、平和な美しい国であるように。彼が、失望することのないように。
 生徒たちはそれぞれに、強く胸に誓うのだった。


担当マスターより

▼担当マスター

篠原 まこと

▼マスターコメント

 ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
 とくに全三回を通しておつきあいくださった方々、本当に、ありがとうございます。
 私信にて色々なご意見も伺い、こちらも学ばせていただいたことを、最初にまずお礼申し下げます。
 
 さて、イエニチェリのことについて、いくつか捕捉です。
 ●薔薇学の生徒でイエニチェリに選ばれた場合は、原則として辞退不可です。
 ●他校生徒の方は、「薔薇学に転入する」が、イエニチェリとなる条件です。
 運営にご連絡いただければ、転入手続きをいたします。
 ただし、ブルタ・バルチャさんについては、基本的に強制転入となります(監獄から解放の上、身柄を薔薇の学舎にて預かるという形になります)。
 また、出来ましたら、LCの外見性別も女性の場合、転入後のアクションでは「男装している」と心得てください。ご協力をお願いします。

 なお、シパーヒーの基本装備は「レイピア」です。今回使用した武器の「サーベル」は、試合のために用意されたものとお考えください。大会中でのイコン能力につきましても、基本的に今回のシナリオに限るものとします。

 イエニチェリになることだけが、ゲームの目的ではありません。
 今後薔薇の学舎生徒として、イエニチェリだけが優遇されるということもありません。
 どうか今後とも、お気軽に、そして楽しんで、参加していただければ幸いです。
 
 どうもありがとうございました。