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リアクション
【◎2―3・説得】
亜美が逃走を図ったことを知り、高原瀬蓮(たかはら・せれん)とアイリス・ブルーエアリアル(あいりす・ぶるーえありある)も捜索に加わっていたが。
「おかしいなぁ? アイリス、どこ行っちゃったんだろう」
瀬蓮は捜索開始から三分と経たないうちに、アイリスとはぐれてひとり彷徨っていた。
「もぉ、こんなときに迷子になっちゃうなんて。せわがやけるんだから」
もっとも瀬蓮本人に、迷っている自覚は無かったが。
「あれ。瀬蓮ちゃんですぅ」
そこへ声をかけられ、瀬蓮が振り返るとメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)、セシリア・ライト(せしりあ・らいと)、フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)、シャーロット・スターリング(しゃーろっと・すたーりんぐ)の四人が佇んでいた。
「どうしたんですかぁ? おひとりで」
「あ、うん。じつは亜美を探してるとちゅう、アイリスがいなくなっちゃって。いま探してるところなの」
純粋なる口調でしゃべる瀬蓮に、四人はひそひそと。
「これは、きっとあれですぅ」
「うん。瀬蓮ちゃん自身が迷子に間違いないよね!」
「そうですわね。教えてさしあげたほうがいいかしら?」
「いえ。ここは、知って知らないふりをしてあげるのが優しさでしょう」
いきなり円陣を組んで作戦会議する彼女たちに、瀬蓮はぴょんぴょんとそれに混ざろうと跳ねていた。
ここは話を切り替えようということでまとまり、四人は笑顔で瀬蓮に向き直った。
「なになに? どうしたの? 瀬蓮もまぜてよー!」
「いえいえ。たいしたことではないんですぅ。そんなことより、ちょうどいいところで会えましたぁ、少しあなたにお話があるんですぅ」
「? なにかな?」
「校長先生のことだよ! 瀬蓮ちゃんも、亜美ちゃんのことは聞いたでしょう?」
「あ、うん。わるいことをした人だから、みんなでつかまえないといけないんだよね!」
「あらあら、勇ましいですわね。ですけど、少しおかしいとは思いません? あのお優しい方が生徒の皆さんにわざわざ捕獲命令を出すだなんて」
「んん……まあ、めずらしいなぁとは思ったけど」
「そうでしょう? 私たちは彼女になにかあったのだと考えています。だとすると、簡単に西川亜美さんを捕まえていいと思いませんか?」
メイベル、セシリア、フィリッパ、シャーロットからの言葉に瀬蓮は可愛らしくうーんと考え込んだ末。
「瀬蓮にはよくわかんないけど、あんまりらんぼうなことしたくないと思ってたし。つかまえる前に、おはなししようかな?」
わかってくれたらしく、四人と共に行動するのを決めたのだった。
そんなとき、中庭から喧騒が届いてきた。
神楽坂有栖&ミルフィに連れられて逃げ出した静香は、
「つまり、今日目が覚めたらなぜか西川亜美の姿になってて、逆に亜美が静香になっていたわけなのね」
「うん。これまでのことから考えて、猿の手を使って亜美は望みを叶えたんだと思う。僕になって何をしたいのかは、まだわからないけど」
「そのあたりは、当の本人に聞く以外はなさそうですわね」
「それはいいとして……とりあえず現状をなんとかしなきゃね」
揃って中庭の茂みの中に身を隠していた。
予想外に早く追っ手がかかってしまい、校内を歩けばすぐ誰かに見咎められてしまい。ひとまず外に出て息を潜めているのだが、
「いたわ!」「こっちよ!」
「わあ! もう見つかっちゃった!」
百合園生の包囲網は易々と突破できるものではなさそうだった。
「こうなったら一度皆を説得してみない? ちゃんと話せばわかってくれるよ」
このまま逃げ続けてもキリがないかと思案した有栖は、走り出そうとした静香を引きとめ提案を持ちかける。
「え? でも」
難色を示す静香だが、そもそも選択肢に迷っている暇などなく。
あっという間もなく三人は十数人の生徒達に囲まれてしまった。
「皆さん、どうか、私達の話を聞いて下さい……!」
「いいえ。話を聞く必要は、ないと思いますわ」
そんな中、一歩前に歩み出てきたのは泉美緒(いずみ・みお)だった。
「その方は、ラズィーヤお姉様を一度殺めようとしたと聞きました。それは間接的なことであったかもしれませんが、危険な思想を持っているのは間違いありません」
いつもおっとりで天然系の美緒だが、そんな彼女でも親しい間柄の人を傷つけられたことに対し、少なからず怒りに震えているらしい。
「だから、話はそういうことじゃないんです。ここにいる彼女は校長先生なんです! それで校長先生が西川亜美になっているんですよ!」
「……? なにが言いたいのか、よくわかりませんわ。彼女に何を吹き込まれたのか知りませんけれど。話なら捕まえた後で伺います」
有栖の説明に一切耳を傾けようとしない美緒。
(こういう状況で本当に捕まったら、結局ろくに話を聞いてもらえないですわよね)
焦るミルフィはどう説得すればいいか悩んだ挙げ句、
「美緒様っ、何卒ご理解下さいまし! わたくし達『けしからん胸』を持つもの同士ではありませんか……!」
彼女なりの説得を試みていた。
が、当然のように、
「っっ! 即刻捕らえさせていただきます!」
頬を朱に染めて完全なる逆効果になってしまった。
多勢に無勢で、諦めかける静香だったが。
「ふぅ、やっと見つけたぜ」
「聞いた話だと、彼女が本物の校長先生なのよね?」
そこへ助けに現れたのは、トマスとミカエラだった。
「細かいことは置いといて、今は偽校長の目論見を邪魔させてもらうぜ!」
そう言ってトマスは美緒をはじめとした生徒達を、サイコキネシスで動けなくしていく。
「桜井静香様といえば、穏健なお方と伺っていますが、このように強硬的に、キツネ狩りでもするようなけたたましさで、1生徒を捕まえるような指示をなさる方なのですか?」
ミカエラのほうも、生徒達を押さえつけたりしながら説得を試みていく。
「わぁあ、みんな。ケンカはダメだよぉ」
「瀬蓮ちゃん! 今行ったら危ないよぉ!」
さらに騒ぎを聞きつけた瀬蓮やメイベルたちまで乱入して、一気に中庭はカオスになっていった。
「あわわ……なんだか大変なことに」
事態に慌てふためくしかない静香。
そんな彼女の頭上に、流れ弾の魔法がひとつ降り注いだ。
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