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リアクション
【◎2―5・前進】
繭たちと入れ代わりに、今度は神代 明日香(かみしろ・あすか)が校長室を訪れていた。
明日香は扉のノブに手をかけたところで、ふっと前日のことを思い出した。
静香が亜美の助けを断ったことで、亜美は所持していた猿の手を使ってしまった。そのときのことは光に目が眩んだせいでよくわからなかったけれど。
目が元に戻った頃には、アイリスの手によって亜美は気絶させられ、そのままどこかへつれられていき。猿の手も静香がちゃんと保管すると言っていたので、安心して帰宅したのだが。
今再び発生したループに明日香は気がつき。事件が終わっていないことも理解した。
「いつまでこの繰り返しは続くんでしょうかぁ。はやく全て解決してくれるといいんですけどぉ」
ひとまず中心人物である静香に話を聞くべく、ノブをひねって中へと入った。
「こんにちはぁ、静香校長」
「……こんにちは」
なんだか、ナーバスになっている様子の彼女に。
「どうかしましたぁ? なんだか、元気ないですぅ」
「ううん。べつに? 昨日までのこととか、色々考えちゃって」
「ああ。そのことでしたかぁ。ですよねぇ、ループから抜け出せると思っての事でしたが、2回目のループの時に西川亜美の助けを断ったのは失敗でしたねぇ。逆上されて猿の手を使用されてしまいました、今はどうなってるのでしょ「ちょっと待って」
発言のさなか、いきなり遮ってきたかと思うと。なにやら驚いた表情でこちらを凝視してきていた。
「どうして知ってるの? 猿の手が使われたこと」
「え? だって、あの状況から考えてそうかなぁって。ループも起きてますし」
「あ……そうか。アナタあのとき現場にいた……」
「あの、どうかしたんですか?」
「ううん。なんでもないよ。そうだね、状況からしたらそう推察できてもおかしくないね」
激昂したかと思うと、ホッとしたような顔を作っている彼女に、明日香は心の中で不審さが湧き上がってきた。
静香校長とはそれなりに面識もあり、一昨日から急にカタコトになったりしていろいろとおかしい部分はあったけれど。今回の彼女はどうも毛色の違うおかしさだと明日香は察していた。
まさか偽者かなにかなのでは、という疑念も頭をよぎる。
「えっと、それで何か用なのかな?」
改めて問いかけられて、明日香は困った。
もしも今の疑念が真実だとするなら、ここにいる偽者に知られては邪魔をされてしまうかもしれない。なのでここは、
「あ、べつにたいしたことじゃないんですぅ。体調がすぐれないみたいですし、失礼しますねぇ」
気が付かなかった振りをしてやり過ごすことにし、そのまま校長室を後にした。
明日香が去って、亜美は思わず頭を抱えてしまった。
「まったく。普段こんなに次々来客がきてるのかしら」
もしやまたすぐ誰かがやってくるんじゃないかと身構えたが、そんな気配は無かった。
依然としてどこかから喧騒らしき声は届いているものの、まだそれは遠い彼方のようだった。亜美はそのまましばらく、日が夕暮れに染まっていくのをぼんやり眺めていた。
そのころ静香はというと。
脳しんとうをおこして保健室へかつぎこまれていた。
(頭がぐらぐらする。今回はもう、これ以上動くのは無理か……情けないけど)
それでも決して落ち込んではおらず。次はもっと上手く立ち回る方法を考えながら、今は眠りについて。
やがてループが起こり始めた。
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