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リアクション
12:演習 ―反撃―
清泉 北都(いずみ・ほくと) は黒い髪をシャギーにカットして青い瞳を持ち、小柄でごく普通の少年だ。
「リオンはこういうの初めてだろうから、まずは色々な出店を見て回ろうか。欲しい物があったら言ってね? 流石に全部を食べ尽くすのは無理だろうけど」
そう言う北都の傍らにはパートナーのリオン・ヴォルカン(りおん・う゛ぉるかん)の姿があった。
リオンは目覚めたばかりで世界のことを殆ど知らない剣の花嫁――ロングの綺麗な黒髪と茶色の瞳を持つ美形の少年――だ。
「北都、あのラムネという飲み物を飲んでみたいです」
「わかった。ラムネだね。100Gか、安いね。じゃあ二本ください。はい、ありがとうございます」
そう言って二人はラムネを受け取る。フタを開けると炭酸が一気に吹き出してくる。
「これは冷たいのになんで沸騰しているんですか?」
リオンの問に
「これはね、炭酸って言うんだ。まあ、飲んでみなよ」
「ん……シュワシュワしていて気持ちがイイですね」
それから、二人はかき氷を頼む。北都はブルーハワイだった。
「北都は青い色が好きなのですね?」
「ん……まあね。それより座って上を見上げてごらん。あれがイコンだよ」
「すごく……大きいです」
(リオンは目を輝かせて見ているね。純粋に感動できるっていいよね。僕も小さい頃はこうだったのかな。誰にも構って貰えなかったから、いつの間にか嬉しいとか悲しいとか表現することも無くなってしまった)
そんなリオンを見ながら北都は己の過去に思いを馳せる。
「どうしたんですか北都、様子がおかしいですよ。安心してください。北都には私がいます」
そう言って北都の頭をなでるリオン。
「うわ。やめろよ、人が見ているだろう。すまなかった。心配かけたね。でも大丈夫。それよりイコンを見よう」
「こちら【フリーダムヘッド】随伴飛行歩兵の殲滅を確認しました」
「了解。こちら【ウィスプ】。隊長。これで教官機はレーダーに頼ることしかできません。今のうちに一気にやっつけちゃいましょう」
秀臣がそう言うと茉莉が答えた。
「こちら【ウィッチ】了解よ。【パンプキンヘッド】よりフリーダム中隊各機へ、敵を叩くなら今よ。敵の目はもうないわ」
「了解。こちら【アーチャー1】の【ヤハタ】これより支援砲撃を行ないます。【クリムゾン】以下各機準備よろし?」
媛花の言葉にエリィと他の小隊の面々が答える。
「こちら【クリムゾン】了解」
「こちら【ガンナー1】こちらも支援砲撃を行う」
「こちら【コンフュ1】の【スプリング】砲撃のあと突撃をかける。タイミングを送れ」
直哉がそう言うと【ガンナー1】からタイミングが送られてきた。
「あと5……4……3……2……1……ファイア!」散開したスプリング小隊とハロウィン小隊の隙間を縫うように、コームラントの砲撃が襲う。
「シュメッターリングA、撃墜!」
判定の声が割って入る。
「やったあ!」
ナギサが歓声を上げる。
「今よ。【パンプキンヘッド】より【コンフュ1】突撃開始」
「了解!」
ハロウィン小隊は教官たちを騙せなかった恨みとばかりに突撃すると高度な空間機動をレーダーのみで行う教官機をライフルの射程に収める。
「発射!」
茉莉の声に全員が一斉にライフルを発射する。
シュヴァルツ・フリーゲとシュメッターリングBにペイント弾が集中する。
「シュヴァルツフリーゲ、シュメッターリングB、撃墜!」
しかし教官機からもマシンガンが飛んでくる。だが
「あたりませんよ教官!」
やませがからかう。
目視無しでの銃撃というのは非常に難しいようだ。
「残り一機。確実に仕留めましょう」
ナギサがそう言うとコームラントの集中砲撃の合図が送られてくる。
「散開!」
茉莉の号令と共に散開する一同。シュメッターリングCのコクピットブロックに8発のペイント弾が命中し教官機を打ち倒す。
「シュメッターリングC、撃墜!」
その報告に【フリーダム中隊】の面々から歓声が上がる。
「こちら【ウォッチャー2】の【KAZU】。【ルーラー中隊】が苦戦中。至急援護に動け」
『了解!』
和眞の言葉に【フリーダム中隊】の面々が一斉に動き出す。これで大勢は決したも同然だった。
ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)とメリッサ・マルシアーノ(めりっさ・まるしあーの)は、イコンが展示してある出店に来ていた。
「凄いスピードで空を飛んでいますけど、よく目を回さないですね」
ロザリンドは青のロングウェーブと金色の瞳を持ち優しそうで真面目そうな少女だ。
それに応えるのは迷彩服風ハイレグ競泳水着を着た天王寺 沙耶(てんのうじ・さや)で黒髪をポニーテールにしていて茶色の瞳を持ち、胸が大きくて色っぽいので彼女目当ての男性客もやってくる。
ちなみに彼女はエルフリーデと共同で出店を出しており、焼きそばを売っていた。イコンもキャンギャル風に塗装されて武器を持たせられている。ちなみに実弾入である。
「あはは、慣れですよ、慣れ。あ、海鮮焼きそばもいかがですか? 1個300Gですよ」
「いただきます」
「はい、まいどありっ」
「ねーねー、イコンっておっきい鎧の人?」
メリッサが尋ねる。イコンと機晶姫の区別がついていないようだ。ちなみに彼女は茶髪をポニーテールにした、黒い瞳を持つ毛並みが良くてかわいい少女だ。
「ちがうわよ、イコンはロボットよ」
そう答えたのはスク水(ひらがなでかいた名前付き)のアルマ・オルソン(あるま・おるそん)だった。これまたマニア受けする格好である。
青いセミロングの髪を風に揺らし緑色の瞳でメリッサに対応しているが、小柄で子どもっぽいのでどう考えてもメリッサの方が歳上である。
「敵とか味方とか、あんなにビュンビュン動いているのに判断つくのですか?」
そう尋ねるのはロザリンド対して答えるのはシャーリー・アーミテージ(しゃーりー・あーみてーじ)。
彼女は白のロングウェーブと赤い瞳を持ち、知的そうで胸が大きい。そんな彼女がハイレグビキニを着ているんだから男性客にはたまらない。
「敵と味方機体は違うし、敵味方識別信号もありますからねー。誤射くらいはあるかもしれないけど……」
「あ、あはは……そうですか」
ロザリンドは多少引いてしまった。
「それじゃ、荷物運びとか細かい作業や土木工事とかできないんですか?」
それに対してはクローディア・アッシュワース(くろーでぃあ・あっしゅわーす)が答える。
金色の髪を頭の横で一本に束ね青い瞳を持ち、胸が大きい美少女である。彼女も競泳用ハイレグ水着を着ている。
「できないよ! イコンを重機替わりに使うのは無理があるんだよ♪」
「そうですか。わざわざ丁寧にありがとうございました。それじゃ、焼きそばをいただきながら模擬戦を観戦することにします」
そう言ってロザリンドが店を離れると、次々に男性客が買いに来た。
「あっ、おしい!」
メリッサは手をブンブン振ってイコンへの応援をしていた。
「右、右にいるよー」
聞こえはしないのだが叫びたくてしょうがないらしい。
「こちら【コキュートス】。【シュヴァルべ】へ。このまま囮を続けるのは厳しくないですか?
シフの言葉がリオに伝わる。
「了解。こちら【アルファ1】援護を求めます」
そしてリオが援護を求める。
「こちら【エコー1】、了解」
天御柱の生徒が答える。
「こちら【ブラボー1】了解」
晴人が答える。
「こちら【デルタ1】。【エコー】【ブラボー】両少隊の砲撃のあとに隊長機を撃墜する」
綾がそう言うと、
「こちら【イロドリ】。待ってました」
と彩羽が答える。
そしてタイミングが図られて一斉に砲撃が行われ、教官機のそこかしこにペイント弾が付着する。
「ボロボロですね、教官機」
雪香がそう言うと
「今です」
と佐那が言う。
そして【デルタ小隊】はシュバルツ・フリーゲに肉薄すると模擬刀で手足や推進部等を攻撃した。
「シュヴァルツ・フリーゲ、撃墜!」
判定の声が入る。
歓声が無線を通して響く。
「トリック、オア、トリート?」
そこに駆けつけてきた【ハロウィン小隊】が、バルカンによる頭部センサーの破壊を行う。
無論反撃のマシンガンもある。
「パンプキン1、2、4撃墜!」
コクピットブロックに命中して破損判定を受けた。
だが、名誉ある敗北と言えるだろう。
「【クラースナヤ】より【ムラクモ】へ提案。今がチャンスではないですか?」
オリガが初めて小隊長に意見を出す。
「【ムラクモ】同感。【ファング】【カムパネルラ】【イルマ】各機一斉に攻撃。ライフルをコクピットブロックへ……」
『了解!』
そしてシュメッターリングAにペイント弾が付着する。
「シュメッターリングA、撃墜!」
シュメッターリングに撃墜判定が入り格納庫へ戻っていく。
「こちら【アイビス】。今のうちにやってしまいましょう」
智宏の呼びかけにリオが答える。
「こちら【シュヴァルべ】。了解」
【アルファ小隊】の面々は突撃をするとまずバルカンで威嚇し、それからライフルでシュメッターリングBに集中攻撃する。
こちらもコクピットブロックに命中判定が入り撃墜される。
「こちら【スプリング】。【コンフュ小隊】各機に継ぐ。残り一機は俺達の獲物だ」
そして最後に残ったシュメッターリングCが破壊判定を受ける。
こうして教官機は全滅した。
(そこまで。これにて天御柱開放祭における演習の全ては終了する。ご苦労だった。直ちに格納庫に戻って整備を受けたまえ)
コリマ校長がテレパシーで演習の終了を告げる。再び花火が上がって生徒たちはイコン格納庫へと戻っていった。
――一方、格納庫。
「真琴ちゃんおつかれ。景勝だよー」
整備をしていた長谷川 真琴(はせがわ・まこと)は景勝に話しかけられ、弱干迷惑そうな顔をした。
「お疲れ様でした、桐生さん」
黒髪を後ろで束ねて同じ色の瞳を持ち、目つきは優しいがそれ以外はとりたてて目立つところのない真琴ではあるが、イコンの整備士としては標準的な技能を有していた。
これまでの演習や戦闘データを参考に個人用のチューニングを施したりと、影で大活躍していた真琴であったが、ペイント弾まみれのイコンの軍勢を目にして弱干目眩を覚えていた。
(これ全部落とさなきゃならないのかぁ……)
と、真琴はコリマ校長からのとある命令を思い出してパイロットたちに伝える。
「イコンに実弾を装備させて第一級臨戦態勢につけ?」
秋穂は疑問に思いながらも、イーグリットに再び乗り込み<ビームライフル>と<ビームサーベル>を装備し頭部バルカンのペイント弾を排出するとイーグリットから降りて装填を手伝う。
「校長先生も何考えてるんだろう?」
「全部テレパシーで伝わってきたら楽なんですけどね」
真琴と秋穂がそう言葉を交わす。
「そう上手くは行きませんよ……」
真琴はそう言って溜息をついた。にわかに慌しくなる格納庫。いったい何が起ころうとしているのか……
作業着に安全靴、さらにヘルメットをしてメガネと安全ゴーグルという整備士の正装ともいえる格好をしている真琴はさらに溜息をついてゴーグルを曇らせるのだった。
そして格納庫警備班からスパイ発見の報を受けたのはまもなくしてからのことだった。
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