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リアクション
SCENE 12
北郷 鬱姫(きたごう・うつき)の受け持つ役割は、李梅琳のすぐ後方ながら前線で戦う役割ではなく、さりとてベースキャンプでもない。しかし、非常に重要な役割だ。
「退路の確保は大事です……それに、地形の把握も……」
地図を作成しているのだ。梅琳隊が怪植物を掃討した場所にて、ベースキャンプからの情報を元に効率的に探索部分を洗い出し、味方に指示を送っていた。退路の確保はとりわけ命にかかわる作業ゆえ正確を期す。小枝に布を巻きつけ小さな旗を作り、地面に突き立て固定する等、手持ちの裁縫道具関連を駆使して目印付けを行い地図に記載していく。
「距離は50メートル……と」
鬱姫は電子メモに線を引くと同時に、手元の紙に手書き地図も作成している。心配性ゆえ電子情報だけだと不安になるのだ。
「よしっと……パルフェ……通信お願い」
ある程度まとまったところで、鬱姫は顔を上げた。
彼女の横では、同じようにしてパルフェリア・シオット(ぱるふぇりあ・しおっと)が地図を書こうとしている。しかれどパルフェリアの作成物は、よく言えば前衛的、悪く言えば落書きのようで、さっぱり要領を得ないのだった。
「うーん……うまくいかない! 無理。パルフェには無理」
パルフェリアは芸術作品のような地図をくしゃくしゃに……しようとして考え直し、四つ折りにしてポケットにしまった(これはこれで記念品だ)。通信装置のスイッチを入れ暗号の周波数に合わせる。
「こちらパルフェ&鬱姫〜。今のところ特に異常ないよ。地図情報おくるね。どうぞ」
データの転送だけなら数秒とかからない。折り返しに瓜生コウからも、最新情報が届けられる。
「えっとねー、『義剣連盟』『トレハンガールズ』の連合チームが、この地点の……」
と、パルフェリアは地図の空白地点を鬱姫に示し、
「この地点の遺跡を探検してスイッチを発見、操作して周辺の植物を枯らしたそうだよ」
「はっきりとは言えないけれど各遺跡も……周辺の植物にとっての生命線だった……ってことかしら」
「多分ね〜」
「でも……『緑の心臓』ってものは……まだ見つかってない……みたいですね……やはりその名の通りすべての植物を統括する存在……なのでしょうか……それとも……」
手書き地図の表面を、トントンと鉛筆で叩いて鬱姫は首をかしげた。
「鬱姫〜鬱姫〜、コレ目印に丁度いいんじゃない?」
いつの間にかパルフェリアが、倒された怪植物の脇に立っている。先行のエリーズ・バスティードが剣を振るったのだろうか、バッサリと切断されており、その切り口が真っ直ぐである。
「目印……って……?」
「ほらコレ、この花だよ。切り株に生えてるの〜」
コスモスに似たピンク色、拳ほどの大振りな花だ。
「可愛い〜……って、うわっ!」
ところがその花はただの花ではなかった。だしぬけにザンッ、と鰐のような歯を生やし、飛びついてパルフェリアに噛み付こうとしたのだ。
「襲いかかってきたよ! うわ〜、鬱姫、助けて〜!」
花は地中に根を下ろしたまま、茎をするすると伸ばしてパルフェリアを追ってきた。
「うぅぅぅ……痛いのは嫌です……」
肝心の鬱姫にしたって、仰天してパルフェリアと一緒に逃げ回る始末であった。
結局、花が追って来られないほど距離を取れば安全とわかり、そこから雷術を浴びせ倒すことができたのだが、それは二人がこれから、十数分ほど逃げ回ってからの話であった。
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