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俺の祭りを邪魔するな!!

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俺の祭りを邪魔するな!!

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「みんな、今よ!」
 【『シャーウッドの森』空賊団】副団長リネン・エルフト(りねん・えるふと)が声をかけると民家の陰に隠れていた仲間が一斉に、誘導されてきた≪氷像の空賊≫達へと攻撃をしかける。
「後は任せてくださいな! ファイアストーム!!」
 ユーベル・キャリバーン(ゆーべる・きゃりばーん)が【ファイアストーム】を発動し、先頭の≪氷像の空賊≫達を焼き払いつつ足止めした。
 ≪氷像の空賊≫達は自分達が誘い込まれたことを知り、一端退却しようとする。
 だが、後方にレッサーワイバーンに乗った【『シャーウッドの森』空賊団】団長ヘイリー・ウェイク(へいりー・うぇいく)が立ちふさがった。
「こっちもダメよ! デファイアント!」
 ヘイリーの乗ったレッサーワイバーンから火炎ブレスが放たれた。
 火の波に襲われ戸惑う≪氷像の空賊≫達に、とどめとばかりに【『シャーウッドの森』空賊団】団員フェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)が空中から降下しつつ【煉獄斬】を叩き込む。
「おっしゃ、残りは全員爆発しやがれーッ!」
 三つの炎に焼かれ≪氷像の空賊≫達は殲滅された。
「よし、オレが一番倒したぜ」
「この場合、倒した数はあまり関係ないと思いますわよ」
ユーベルの言葉にフェイミィは頬を膨らませていた。
「別にいいだろ。……なぁ、リオン。褒めて――」
「あ、ごめん。連絡が来た。ちゃっと待って……」
 【テレパシー】を受けたリオンが引き離すと、フェイミィは余計にふて腐れてしまった。
「うん……うん……え? それ本当なの!?」
「どうかしたの?」
 大きな声を上げたリオンに視線が集まる。
 リオンは戸惑いながらも、仲間を見渡してからゆっくりと口を開いた。
「もう一度≪機晶式ジィビナイド・カノン砲台≫を使うらしいわ」
 皆が一様に驚きの表情を浮かべていた。


「もう手はないのですか!?」
 集まってくる≪氷像の空賊≫達を迎撃していた【846プロ】のアイドル神崎 輝(かんざき・ひかる)は、シエル・セアーズ(しえる・せあーず)と共にこれからのどうするのか確認すべく歴史博物館に戻ってきた。
 その場にいた生徒全員に問いかけた輝に対して、落胆した様子の一瀬 瑞樹(いちのせ・みずき)が答える。
「弾は一発だけだったんです。その弾がなければ砲台もただのガラクタ同然ですよ」
「そんな……」
 戦いの要を任されながらも失敗してしまった悔しさと絶望感。それらが、重い空気となって館内を覆っていた。
「せめて、魔法みたいな砲撃だったら、サルヴァに邪魔されなかったのに……」
 シエルが悔しそうにぼやく。
 すると瑞樹が思いだしたようにシエルの言葉を復唱した。
「魔法みたいに……それだ!」
 突然、瑞樹が声を張り上げ、生徒達は項垂れていた顔を上げた。
「瑞樹、急にどうした!?」
「マスター、≪機晶式ジィビナイド・カノン砲台≫をエネルギー砲に改造するんですよ!」
 多くの者が何を言っているのかわからないという表情をしていた。
 そんな中で閃崎 静麻(せんざき・しずま)が考えを整理しつつ、質問をしていきた。
「詳しく説明してくれるか?」
「はい。私が思うに、改造すれば今まで弾丸を撃ちだすのに利用していたエネルギーを、そのまま砲撃にすることができると思うんです!」
「……なるほどな。それは面白い考えだ」
 皆の表情に少しだけ明るくなる。
「それには最低でも膨大なエネルギーと砲台の改造が必要だな」
「そうですね」
「それで何をどう改造のしたらいいと考えているんだ?」
「えっと、それは……」
 瑞樹は必死に考えたが、具体的な方法が思いつかなかった。
 静麻が話にならないと首を振り、館内にまたしても諦めムードが漂い始めた。
 その時、匿名 某(とくな・なにがし)が声を上げる。
「ちょっと待ってくれ! これを参考にできないか!?」
 某はいつの間にか、館内に設置されたパソコンの前に座っており、ディスプレイには大量の文章と複数の写真が映し出されていた。
「これはエネルギー砲に関する資料か……だが、これだけではどう改造したらいいかはっきりとはわからないな」
 それらは某が【ユビキタス】により見つけた資料だったが、内容は専門用語の並べられた物や、作業に使用した部品や製造された経緯などが書かれた断片的な内容だった。
 残念ながら設計図は見当たらず、このままでは何をどのように改造すればエネルギー砲が作れるのかわからなかった。
 皆が困っていると、皆川 陽(みなかわ・よう)がおずおずと手を挙げた。
「あの……ボク、ある程度ならわかるけど」
「本当か?」
 陽が頷き、某が椅子を譲る。
「……大丈夫。なんとかなると思う」
 暫くパソコン画面を見つめていた陽はそう答えると、静麻を見つめた。
 静麻は困ったように頭をかくと、鼻で笑って宣言する。
「しょうがねぇ。いっちょダメもとでやってみるか!」
 館内に活気が戻る。
「俺は前線にもう一度時間を稼ぐように伝えてくる」
 柊 真司(ひいらぎ・しんじ)は急激に騒がしくなった仲間達から離れ、【テレパシー】で前線に連絡を取りに行く。
 
 ――こうして陽の【博識】で足らない部分を補いつつ、生徒達の砲台改造計画が始まった。