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第三章 展開

「大丈夫ですよ。もうすぐご両親の所へ着きますから」
 笹野 朔夜(ささの・さくや)は逃げ遅れた子供を背負って路地を走っていた。
 すると前方に≪氷像の空賊≫が立ちふさがる。
「冬月さん、お願します!」
「了解」
 後方を走っていた笹野 冬月(ささの・ふゆつき)が朔夜を追い抜き、≪氷像の空賊≫に向けて走り出す。
 冬月は≪氷像の空賊≫が剣を振り下ろすより早く脇を駆け抜け、すれ違い際に銘刀【風雅】で胴を真っ二つにした。
「冬月さん、ありがとうございます」
「いえ……」
 二人は住民が避難している場所まで走り続けた。
 そして避難場所である開けた場所にたどり着いた。
「ほら、つきましたよ。ん、あれは……アンネリーゼさん?」
 朔夜が両親に子供を引き渡していると、家を抜け出していたパートナーのアンネリーゼ・イェーガー(あんねりーぜ・いぇーがー)を発見した。
「アンネリーゼさんもここにいたのですか」
「あ、朔夜お兄様と冬月お兄様。もしかしてわたくしを追ってきてくださったのですの?」
 アンネリーゼを追って≪ヴィ・デ・クル≫までやってきた朔夜と冬月は、無事に再会できたことにほっと胸を撫で下ろした。
「当たり前ではないですか。冬月さんなんかすごく心配してたいんですからね」
「そうなんですの?」
「いや、俺はそこまで――」
 否定しようとした冬月の言葉が住民の悲鳴によってかき消される。
 周囲を見渡すと路地から≪氷像の空賊≫達が次々と現れてきていた。
「朔夜、行くぞ」
「わかりました。アンネリーゼさんはここで皆さんと一緒にいてください」
 冬月と朔夜が応戦に向かった。
 アンネリーゼは脅える住民を必死に落ち着かせようとする。
「大丈夫ですわ。お兄様方が皆さんを守ってくださいますわ」
 すると、別方向から≪氷像の空賊≫が現れ、住民に近づいてきた。
 たった一体ではあるが、住民は脅え、逃げ惑うしかできないでいた。
 朔夜と冬月は手が離せず、新しく現れた≪氷像の空賊≫の相手にしている余裕はなかった。
「えい!」
 アンネリーゼは≪氷像の空賊≫を引き付けるため、【サイコキネシス】で石ころをぶつけると、顔面にエアーガンを乱射した。
「こ、こっちですわ! えい! えい!」
 エアーガンの乱射で顔面が削れた≪氷像の空賊≫は怒り狂い、アンネリーゼを追いまわし始めた。
「い、今のうちに逃げてくださいですわ!」
 アンネリーゼは必死に逃げながら、住民に避難を促す。
 その様子を見ていた街の大人達は思った。
 
 小さな女の子が必死になる中で自分達は何をしてるのだろう……