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リアクション
捕縛されたハーリー・デビットソン(はーりー・でびっとそん)の周りには、意志の疎通を図ろうと試みる生徒たちで賑わっていた。
「同じ機晶姫同士、腹を割って話しましょうね」
モミ手をしそうな勢いでハーリーに話しかけていったのは、人型機晶姫のジーナ・フロイライン(じいな・ふろいらいん)だ。
「まずはお近づきの印に100%合成機械油なんていかがでしょう?」
そう言ってジーナが差し出したのは、パーツへの影響を最小限に留めた特製の機械油である。
興味を引かれたのか、ハーリーのライトが点滅しかけたが、ジーナとは犬猿の仲である英霊の緒方 章(おがた・あきら)が割って入ってくる。
「甘いですね、カラクリ娘。捕虜への尋問といえば決まっています」
緒方は持ってきた工具箱を開くと、スパナやラチェットレンチなどを取り出してみせる。こちらの質問に答えなければ「分解する」というデモンストレーションだ。
緒方のあからさまな態度にジーナは顔をしかめた。
「機晶姫であるワタシへの嫌がらせですか?」
「カラクリ娘を分解する前の練習台といったところです」
ニヤリと口角を上げた緒方は、ジーナに見せつけるようにスパナを掌の上で踊らせる。
「折角ですし、貴方もこれを味見してみますか?」
そう言うや否やジーナもまた機械油の入った缶を抱え上げた。
言葉は穏やかだが、目は笑っていない。今にも緒方にぶっかけそうな様相である。
「じにゃも、あきも、こあいことするの、めーなのれす」
舌っ足らずな口調で仲裁に入ったのは、緒方の工具箱に入っていたカエル型ゆる族林田 コタロー(はやしだ・こたろう)だ。
その横では、巨漢アリスのポポガ・バビ(ぽぽが・ばび)が目を輝かしてハーリーを見つめていた。
「バイク…カッコイイ!」
男の子とは得てしてバイクや車と言った乗り物が大好きだ。
ポポガは「またがっても良い?」と聞きたげな様子で首を傾げながら、ハーリーのシートを撫でた。
「おやおやポポガさん。お友達ですか?」
何とかハーリーと仲良くなろうと試みるポポガを彼の保護者である明智 珠輝(あけち・たまき)は温かく見守る。
一方、もう一人の保護者であるリア・ヴェリー(りあ・べりー)は心配でたまらないようだ。
「ポポガ、あんまりベタベタしちゃダメだぞ!」
そう言いながら、万が一の事態に備えて禁猟区を発動させるとポポガ自身に術をかける。
しかし、ハーリーに心ひかれていたのはポポガだけではない。
「うわぁ、ハーリーさんって近くで見るとますますステキです。大排気量の空冷オーバー・ヘッド・バブルとV型ツインエンジンが生み出す独特のフォルム…。ぜひ一度その背中に乗せていただきたいわ!」
猫なで声を上げながらハーリーを褒めちぎっていたのは、アリシア・スウィーニー(ありしあ・すうぃーにー)だ。そのたおやかな外見から想像もつかないが、実は大のスピード狂である。
「やっぱり直接的な会話は難しいわよね?」
今にも頬ずりしそうな勢いで、ハーリーのボディを磨きあげているアリシアを呆れたように見つめながら、眉間に皺を寄せていたのは、彼女のパートナーであるレベッカ・ウォレス(れべっか・うぉれす)だ。
彼女はパートナーの一人であり、かつて織田信長の家臣であった明智光秀の分霊明智 ミツ子(あけち・みつこ)の抱いている懸念を何とかはらそうと頭を巡らせているところだった。
しばらくの間、パートナーの一人であるオーコ・スパンク(おーこ・すぱんく)と相談していたレベッカだったが、何やら名案が浮かんだのだろう。
「そうだ!」
片手を大きく振り上げると、豊満な胸を揺らして小さくジャンプしてみせる。
「Yesならエンジン音を。Noならばクラクションを鳴らす。分からない場合はライトを点滅。これでどう?」
「それ! オレも同じこと考えていたんだ〜。やってみようよ!
ハーリー殿も無理しなくても良いから。答えたいと思ったときだけでも答えてね!」
すかさずレベッカに同意したのは、エディラント・アッシュワース(えでぃらんと・あっしゅわーす)。
露出度満点の美少女と、穏やかな笑みの美少年に微笑まれれば、ハーリーとて男の子。例え人のような表情を浮かべることはできなくとも、心の中では相好を崩さずにはいられない。
レベッカに言われた通り、微かに機体を振るわせると、ブォン…とエンジン音を鳴らして見せた。
「よ〜し、それじゃ。第一の質問。永楽銭の旗印は、あなたたちの旗印でいいのかな?」
レベッカがそのよく熟れた果実のような胸を近づけると、ハーリーはまたもやブォォンとエンジン音を鳴らしてみせた。
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