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横山ミツエの演義乙(ゼット) 第1回/全4回

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横山ミツエの演義乙(ゼット) 第1回/全4回

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金剛にて


 熱いおっぱい談義が終わり、静かになった副会長室で鷹山剛次がくつろいでいると、あらかじめ面会の連絡のあったサルヴァトーレ・リッジョ(さるう゛ぁとーれ・りっじょ)の一行が到着したという知らせが入った。
 部屋に案内するよう指示を出し、待つこと数分。
 入ってきたサルヴァトーレにソファを勧めると、彼は余計な挨拶はなしに用件に入った。
 人によってはそれを不快と思うかもしれないが、その簡潔さを剛次は嫌ってはいなかった。
「グライダー空爆部隊と騎兵が敵の注目を集めている隙に、校舎を手に入れたい。校舎にこもる賞金首をまとめて捕獲できよう」
「校舎? あのピラミッドか。いったいどうやって?」
 その問いを待っていたというよに、自らの案を説明するサルヴァトーレ。
「この生徒会室を牽く二頭の巨獣は、今回の作戦で使われる予定はないはずだ。兵と共に使わせてもらいたい。巨獣と空母を牽く鎖で校舎を引っ張ってこよう」
 突拍子もないその案に、剛次は低く笑った。
「あいつらか。あれらは俺の契約者達だ。悪いがおいそれと貸してやるわけにはいかんな。それに、他人の言うことを素直に聞くような性格でもない。鎖も……人間の力でどうにかできるものでもないぞ。おもしろい案だが協力はできない」


「……と、いうわけだ。さて、どうする? 艦内の立ち入り禁止区域以外なら見物していっていいそうだが」
 副会長室から出てきたサルヴァトーレの報告に、出番を待っていたヴィト・ブシェッタ(う゛ぃと・ぶしぇった)マルコ・ヴォランテ(まるこ・う゛ぉらんて)は残念そうにした。
 ヴィトはあまりそれを表情に出さず頷いただけだったが、表情豊かなマルコは盛大に顔をしかめた。
「そりゃねーよ。ミツエ軍には顔が割れてると思っていろいろ考えたってのに!」
「マルコ、落ち着きなさい」
 静かにヴィトにたしなめられ、マルコは唇を尖らせてそっぽを向いた。
 ところで、とサルヴァトーレはもう一人の連れの姿がないことを不審に思った。
「八郎右衛門はどうした?」
「止めたのですが、勝手に行ってしまいました」
 困ったものですとため息をつくヴィト。
 最近仲間になった三井 八郎右衛門(みつい・はちろうえもん)のことだ。
「……どこかで商売の伝でも作っているのだろう」
 サルヴァトーレの予想通り、八郎右衛門は艦内の各階級の四天王に会っては自分を売り込んでいた。
「金貸しやら問屋やら、しがない商売をやらせていただいております。もし不足しているものがあれば、どうぞこの越後屋にお申し付けください」
 もみ手をしながら屋号を名乗る八郎右衛門。
 今、相手をしているのはD級四天王だった。
「へえ、越後屋か。覚えておくぜ。何なら知り合いにも宣伝しといてやるよ。問屋ってあれだろ、大量発注できるとこだろ。すぐには思いつかないけど、何かあった時はあんたを思い出すとするよ」
 越後屋の名は、ここからじわじわと広まっていった。