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横山ミツエの演義乙(ぜっと) 第2回/全4回

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横山ミツエの演義乙(ぜっと) 第2回/全4回

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シャンバラ大荒野に休みなし


 乙軍はひとまずイリヤ分校手前まで戻り、体を休めることにした。
 怪我人の様子を見て回っていた悪徒の内ポケットから声がしたのはその時だ。
「よくやった……と言いたいところだが、貴様、脱出していないと思われる者がいるのには気づいているか?」
「……マジですか?」
 声の主は小型 大首領様(こがた・だいしゅりょうさま)。悪徒の上司である。
 その時、何故か上空が騒がしくなった。
 まさか生徒会のグライダー部隊か、と警戒して見上げた先にいたのは、空飛ぶ箒でゆっくりと降りてくるエレンディラ・ノイマン(えれんでぃら・のいまん)ルカルカ・ルー(るかるか・るー)達だった。
 両者は脱出の際合流し、下に流れていく警備兵をやり過ごして甲板から逃げたのだ。
 下ろされた風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)を見たとたん、テレサ・ツリーベル(てれさ・つりーべる)ミア・ティンクル(みあ・てぃんくる)は悲鳴を上げ、諸葛亮は艦内で嫌な気分だったのはこのことだったかと確信した。
 テレサとミアは泣きながら優斗の手当てをしていく。
 その傍には、エリザベート・バートリー(えりざべーと・ばーとりー)に支えられたカーシュ・レイノグロス(かーしゅ・れいのぐろす)
 エリザベートはハルトビート・ファーラミア(はるとびーと・ふぁーらみあ)を探した。
 すると、ミツエと共に駆けつけてくる姿が見えた。
 ハルトビートは目を閉じたまま顔色の悪いカーシュを目にすると、呆然としたように立ち止まってしまった。
 彼女もまた、諸葛亮のように胸のざわつきを覚えていたのだ。
 ミツエがそっと背を押すとようやく足を進めてカーシュの横に膝をつき、手当てを始めた。
「青木はどうした?」
「ぶちのめしてやったよ」
 という夏侯淵とルカルカの会話を聞き流しながら、テレサは近くに立つミツエを見上げた。
「ミツエさん、これからは優斗さんを護衛のみに専念させてくれませんか? 私、優斗さんが怪我をするのは……」
「それを決めるのはあたしじゃないわ。確かに、優斗は行方不明だったあたしを探すために生徒会に捕まってしまったわけだけど……。でも、他に捕まった人はもっと軽傷なのに、どうして優斗とカーシュはこんな大怪我なの?」
「生徒会室で何かあったのでしょうね。詳しいことはわかりませんけれど」
 答えたのはエリザベートだった。
「鷹山剛次ね……」
 テレサやミア、ハルトビートの手当てによりだいぶ状態も良くなった優斗とカーシュに安堵の色を見せたミツエは、他の仲間達の様子を見るためその場を後にした。
 それからミツエは和希を見つけて無事を喜んだ。
 金剛であったことを少しずつ聞いていると、支倉 遥(はせくら・はるか)が現れてミツエに一抱えもある包みを渡した。
「いつかまた変装する機会があったら、これを使ってください。きっと役に立ちますから」
 何のことかよくわからないミツエは、遥の後ろの正宗達を見るが、彼らはそろって何とも言えない表情をしているだけだった。
 一通りみんなの無事を確認したミツエは、このことを『達也さん』に報告しようとメールを送った。今となってはドージェであり妻もいることも知りショックだったが、それでも伝えておきたかったのだ。
 ところが。
「届かない……? どうして? 何で?」
「ミツエ?」
 何か変な様子に桐生 ひな(きりゅう・ひな)が不審に思った時、背筋にゾクッくるような殺気が走った。
 考えるより先に体が動いていた。
 白刃と盾がぶつかり火花が散った。
 邪魔されたことにムッとした顔を見せたのはマッシュ・ザ・ペトリファイアー(まっしゅ・ざぺとりふぁいあー)だった。
「邪魔しないでよ……せっかくミツエに毒の味をプレゼントしようとしたんだから」
「させません!」
 けれど、こんなやり取りもミツエには聞こえていないようで、焦ったようにケータイをいじっている。
 次の手に出ようとマッシュが『光精の指輪』の力を発動させようとした時、足元に数本の矢が突き刺さった。
 見れば、配下を従えた李厳 正方(りげん・せいほう)がマッシュに諸葛弩を向けていた。
 二回目の攻撃が成功でも失敗でもミツエ陣営から脱出するように、とマッシュのボスであるシャノン・マレフィキウム(しゃのん・まれふぃきうむ)から言われていたのを思い出す。
 二回目の攻撃はまだやっていないが……。
「チッ」
 マッシュは引くことにした。
 彼を追いかけようとした李厳をひなが止める。
「油断も隙もないですな」
 李厳は念のために周囲を見回ることにした。
 彼が行った後、ひなの横で何か落ちるような音がした。
 見ると、ミツエが倒れている。
「ミツエ!? 攻撃は当たってないはず……すごい熱」
 ひなは急いで近くの人に曹操達を呼びに行かせた。