空京大学へ

天御柱学院

校長室

蒼空学園へ

嘆きの邂逅(最終回/全6回)

リアクション公開中!

嘆きの邂逅(最終回/全6回)
嘆きの邂逅(最終回/全6回) 嘆きの邂逅(最終回/全6回)

リアクション

 街中で暴れるキメラを、土嚢などで道路封鎖を行い倉庫街へ誘導する者もいた。
 高性能 こたつ(こうせいのう・こたつ)はメモリープロジェクターで、小太りの子供の姿を映し出し、キメラを誘う。
「避難をお願いします。倉庫街に誘導しています」
 こたつは人々にそう呼びかける。
 街中で機関銃などを乱射するわけにもいかず、誘導中は攻撃も最低限しか行えない。
 大掛かりな戦闘を行う場所として、指揮をとっていたレン、こたつやパートナーは倉庫街が最適と判断し、本部のメティス経由で空いている倉庫の場所の確認も取っていた。
 倉庫も含めなるべく建物は破壊しないようにといわれているが、そうも言ってられない状況でもある。
「これ以上、被害を出させるわけにはいかないでござる、ニンニン」
「さあ、こちらにいらっしゃい! 血の匂いお好きなのでしょう?」
 秦野 菫(はだの・すみれ)梅小路 仁美(うめこうじ・ひとみ)もキメラの誘導に協力し、怪我をした体でキメラを引き寄せ、引き離し、倉庫街へと走っていた。
「ここで、終わらせます……ッ!」
 倉庫街の一角で、志方 綾乃(しかた・あやの)が立ち止まる。
 エンデュアを使って攻撃耐性を上げて、SPリチャージで精神力を回復させる。そうして無理やり戦える状態を作っていく。
 肩で息をし、体は汗と血でまみれている。
 だけれどそれでも、一般の人々より自分達は戦えるはずだと意志を強く持つ。
「前衛はわらわに任せるのじゃ」
 代わりに袁紹 本初(えんしょう・ほんしょ)が前衛にして、殿を務めるために前へ出る。
 ライトニングウェポンで帯電させたリベットガンでキメラを撃っていく。おびき寄せたキメラは5匹だ。
 キメラの体が傷つき、雷の衝撃に奇声を上げる。だがそれだけではキメラは倒せない。
「一掃します」
 こたつが機関銃で弾幕援護。代わらずメモリープロジェクターでも惑わせていく。
「全部は押さえきれん!」
 本初は銃を撃ち続けるが、大したダメージを与えられていないキメラが回り込んでこちらの方へ迫ってくる。
「く……っ」
 禁じられた言葉を唱え終えた綾乃は近い方のキメラに、火術を放つ。
 業火がキメラを包み込み、キメラがもだえる。
 ただ、別方向から迫るキメラへの対処は遅れてしまう。
「お゛姉゛ち゛ゃ゛ーーーーん゛」
 鋭い一撃を身に受ける覚悟をした綾乃の前に、大きな男が下りてくる。
 パートナーの仲良 いちご(なかよし・いちご)だ。
「お゛姉゛ち゛ゃ゛ん゛を゛傷゛つ゛け゛よ゛う゛と゛し゛た゛ね゛!?」
 キメラの爪で肌を裂かれるが、いちごは怯むことなくキメラに体当たりして飛ばし、更に遠当てで打ち飛ばす。
「ありがとうございます……っ」
 礼を言った後、綾乃は火術を放ち、そのキメラも火達磨にする。
「あとは任せるでござる、ニンニン!」
 菫が最初に炎に巻かれたキメラの方へと走り、鉤爪で首を引き裂き致命傷を負わせる。
「私はこちらを!」
 仁美はもう1匹の方へと走り、ライトブレードを燃えている体に振り下ろす。
「もう立たないで下さい!」
 更に、轟雷閃を放ち、最後に剣を体へと突き立てる。
「次、行くぞ!」
 本初がリベットガンを撃ちながら声を上げる。
 ヒロイックアサルトを発動し力を上げると、キメラに飛びかかり多少の時間をかける。
 残りのキメラのうち2匹が綾乃の方へ向う。
「あと、少し――倒れません!」
 綾乃はさざれ石の短刀を抜き、襲い掛かるキメラの顔面に突き刺した。同時にキメラの爪が綾乃の首を切り裂く。
 綾乃の首から血が流れ落ちる。
「石になりなさい!」
 攻撃を受けながら、綾乃は何度も短刀をキメラに突き刺す。
「お゛姉゛ち゛ゃ゛ん゛か゛ら゛離゛れ゛て゛」
 いちごが大きな木箱を持ち上げ、キメラに投げつける。キメラが体勢を崩した隙に、綾乃はアルティマ・トゥーレを使い、キメラの胸に短刀を突き刺し息の根を止める。
「今です」
 仁美は爆炎波でもう1匹のキメラの足を攻撃した。
「止めでござる、ニンニン!」
 菫は隠形の術で身を隠して近づき、仁美の攻撃を受けたキメラの全ての頭部を切り裂いた。
「最終手段です」
 本初の手を逃れ、疲弊した皆に飛びかかってくるキメラに、こたつが加速ブースターで加速し、サイコキネシスを発動、及び自分もキメラの頭目掛けて体当たりする。
 ものすごい勢いで眉間に角が衝突したことで、キメラの頭の1つが声もなく昏倒する。
「終わりです……!」
 綾乃が火術を打ち込み、菫と仁美が斬り込んで最後のキメラを倒す。
 全て終わった後には――契約者の荒い呼吸音だけ響いていた。
 互いの健闘を称え、地に膝をつきながらも淡く微笑みあった。