校長室
嘆きの邂逅(最終回/全6回)
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ミヒャエル・ゲルデラー博士(みひゃえる・げるでらー)は、分校生数名とパートナーを伴い元闇組織の拠点であった酒場兼職業斡旋所を訪れていた。 この建物を任されているサルヴァトーレ・リッジョ(さるう゛ぁとーれ・りっじょ)の指示により店には改装中の札が下げられており、営業はしていない。 預かった合鍵でドアを開けて中に入った時、携帯電話が鳴った。 分校長顧問のキャラ・宋(皇甫 伽羅(こうほ・きゃら))からだ。 「……了解。三井氏の拘束解除を指令する。送レ」 拘束している三井 八郎右衛門(みつい・はちろうえもん)は、ロドリーゴ・ボルジア(ろどりーご・ぼるじあ)に監視をさせたまま分校に残してある。 ミヒャエルはロドリーゴに連絡を入れて、拘束解除を指示した。 ロドリーゴは即三井の拘束を解き、これまでの拘束に対し重々詫びるのだった。 そして、ロドリーゴから拘束を解いたと連絡を受けた後、ミヒャエルはキャラへ電話を入れる。 三井はサルヴァトーレの居場所へ早急に向うとのことだった。 ロドリーゴは残った分校生と共に、見回りや援農に従事するとのことだ。 「人質なんて取るもんじゃないわよね……」 問題が収束に向ったことに、イル・プリンチペ(いる・ぷりんちぺ)がため息をついた。 「あたしは何をすればいいのかな。やる事沢山ありすぎて、困っちゃうよね。しかも地味な作業ばかりだし」 ぶつぶつ文句を言いながら、指揮をとるアマーリエ・ホーエンハイム(あまーりえ・ほーえんはいむ)に近づく。 「たりーな、俺も連絡係やりたいぜ」 「自分とこの遊び場直すんならともかくなー。やる気でねぇ〜」 「あの男は重要な連絡を担当してるんだ。神楽崎分校には携帯電話が通じないんだ仕方ないだろ。ごちゃごちゃ言うな」 厳しく言いながら、アマーリエ自身も分校生と一緒に建物の修繕作業を進める。 運びこんだ木材と釘で、空いた大穴を塞いでいく。 傷ついた壁にも板を貼って平らにし、色を塗ってカモフラージュする。 「さて、俺も手伝うぜ」 ミヒャエルが全ての連絡を終えて、ベニヤ板を一枚取った。 「窓にはこれをはめ込めばいいか。天井は透明のビニールシートで覆って空を見えるようにすればいいか? いや、有翼人の為に、天井にも入り口を設けるべきか!」 襲撃前の酒場に訪れたことのないミヒャエルは、真顔でそう言い作業を手伝いはじめる。 「それ楽しそ〜」 「俺等好みに改築しようぜー!」 意外にも分校生達の支持を得る。 「いや、ちょっとそれは……」 アマーリエはどう止めようかと思案する。 できれば、彼にはずっと連絡係に徹していて欲しかった。 余計な作業が増えてしまいそうだ。アマーリエがそんなことを考えている間にも、ミヒャエルは木材を運ぼうとして、壁にぶつけて更に傷をつけてしまったりしている。 「店長……戻ったら驚くかもね」 イルも軽く苦笑しながら、分校生達を手伝うのだった。 もとより以前も襲撃を受け、更に闇龍の影響によるダメージも受けているので、あまり状態の良くない建物だ。 崩れかけていようが、雨風を防げればパラ実生はあまり気にはしないものの、長期営業を目指すのなら、建て替えを検討した方が良さそうではあった。