校長室
嘆きの邂逅(最終回/全6回)
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「ヴァイシャリーを守りたい気持ちは私も一緒。だからお願いします。私達の作戦に協力してください!」 冒険屋のメンバー、フレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛い)は船着場に配置されていた兵士達にそう呼びかけて、協力を願っていた。 再開された検問で引っかかる船ももうなく、軍人達は警戒と片付けを行っているところだった。 飛行系のキメラの姿は見かけるが、ここで撃ち落すことは得策ではないと考え、手出しはしていない。 「どうかお願いします」 ルイーザ・レイシュタイン(るいーざ・れいしゅたいん)もフレデリカと一緒に軍に頭を下げる。 ……フレデリカ達の願いに、軍側の指揮官が軍本部に確認をとったところ、臨機応変に動いて構わないと返答があった。 そして約半数がフレデリカ達の作戦に協力することになったのだった。 同じく冒険屋のメンバールイ・フリード(るい・ふりーど)とパートナーは建物のない湖岸にキメラの討伐の為待機していた。 ルイは大きく深呼吸をして、心を落ち着かせていく。 冒険屋としてレン達に頼まれたのだ。期待に応えなければ漢が廃ると思い、集中力を研ぎ澄ませていく。 「さ、第二ラウンドと行きますよ。キメラ達よ前回は多く取り逃がしましたが今回は易々と突破させませんよ!」 空を見上げながら言う彼の元へ、フレデリカと軍人達が駆けつける。 互いの姿を確認した後、ルイは空飛ぶ箒で上空へと飛び立つ。 地上から見えたキメラよりも上へ、上へと。 その間に、フレデリカは軍人と一緒にパン焼き結界を使った罠を仕掛けていく。 「飛行系のキメラは一箇所に集まってるそうなんです。多分集めて離宮にテレポートさせるつもりです。現場にも軍隊や向ってくれている契約者がいますが、そこに着くまえに、少しでも落としておければと思います」 フレデリカは本部とのやりとりで得た情報を軍人達に簡単に説明する。 そうしている間に、次のキメラがヴァイシャリーへと飛来する。 数は15くらいだ。 半分くらいは落とせるはず。 「この辺りに落ちてくると思います。少し下がって下さい」 軍人達に指示を出し、フレデリカとルイーザも少し後ろへと下がる。 「相も変わらず切羽詰まった状態だな」 しかし、弱音を吐くわけにはいかない。 前面に出るルイの背中は自分が護ると強い意思を持ち、リア・リム(りあ・りむ)が近くの高台へと跳ぶ。 「皆、注意だよ」 シュリュズベリィ著・セラエノ断章(しゅりゅずべりぃちょ・せらえのだんしょう)は、疲れを隠してフレデリカ達の前に立つ。 負けられない。 ここで折れたら、自分だけではなく、皆の明るい未来までなくなってしまうから。 きっと楽しいことがあるという希望さえも。 セラは強い眼で空を見上げた。 「今よ!」 フレデリカが声を上げる。 「覚悟願おうか!」 リアがレールガンをキメラに向って撃つ。 続いて、六連ミサイルポッドを立て続けにキメラへと撃ち込んでいく。 「行って!」 セラは使い魔をキメラの方へ放つ。 「強い相手だけど、頑張って」 使い魔はキメラの周りを飛びまわって注意を奪っていく。 「行かせませんよ」 ルイが混乱するキメラの翼に上空から遠当てを放つ。 落とすよりも、倒すことよりも足止めをまず目的に、ルイはキメラの翼を打っていく。 「ギャーッ、ギーッ」 軽傷のキメラがルイに襲い掛かる。 空飛ぶ箒は冒険向けの乗り物であり、機敏な動きはできない。 殺気看破でキメラの接近を感じ、素早さを上げていても、体を捻って急所を避けるので精一杯だった。 「いいわ、落として!」 地上からフレデリカの声が響き、彼女が放った矢がキメラの体を掠めた。 その合図を受け、ルイは集中してキメラを落とすことを優先にする。 「援護する」 高台からはリアがレールガンでキメラの翼を打った。そこにルイが更に遠当てで攻撃し、地上に落とす。 (……フリッカを守る力を貸してください) ルイーザは転経杖で味方の魔法攻撃力を上昇させた後、フレデリカの兄を思い浮かべながら氷術を発動し、キメラを攻撃。 「街へは行かせませんよ!」 精神力が尽きたところで、ルイは急いで地上に下り、今度は接近戦で罠の方へキメラを導いていく。 地上に落ちたキメラは7匹。翼を折られたり、凍らされてはいるがいずれも軽傷だ。 「さて、こちらに来ていただきましょうか」 ルイはキメラの1匹に、イーグルフェイクを繰り出して、その肌を裂いた。 「ギィィィ! ギャーギャー!」 キメラが奇声をあげ、ルイに飛びかかってくる。 ルイは罠の方へと走り、キメラを引き寄せ、離脱しそうなキメラへと飛んで、攻撃を鉤爪で受け、そしてまた引き寄せるという方法で、誘導していく。 「今よ、離れて!」 フレデリカが声をあげ、ルイは迫り来るキメラの顔を爪で裂いた後、横へと飛び退いた。 「じゃ、いくよ!」 禁じられた言葉で魔力を上げていたセラがキメラが集まる一帯にブリザードを放った。 冷気が渦巻き、キメラの体が凍りついていく。 次の瞬間に、フレデリカがパン焼き結界を起動、ルイーザはサンダーブラストを放つ。 炎と雷がキメラを襲う。 「もう1発行くわよ!」 直後にフレデリカはファイアーストームを発動する。 「撃て!」 続いて、ヴァイシャリー軍の一斉射撃が行われる。 ――すさまじい連続攻撃により、キメラは全て倒れていた。 「見事な生命力だ」 しかしまだ、体の一部が動いているキメラがいる。 リアが高台から狙いを定め、レールガンを撃っていく。 「仲間を傷つけさせるわけには、いきません……!」 吠え声を上げ、足を震わせながら立ち上がるキメラに、ルイが走りこんで鉤爪で止めを刺す。 そうして、ルイ以外は殆ど負傷せずに、落とした全てのキメラの殲滅に成功した。 「また来ます。回復いたします!」 ルイーザがルイにヒールをかける。 上空にまたキメラが現れる。 少しでも減らすために、仲間達の助けに、そして離宮で死と隣り合わせで戦う人々の為に、冒険者達は戦い続ける。