リアクション
〇 〇 〇 闇龍内部から現れたモンスターの襲撃により、この辺りも被害を受けていた。 組織拠点は復興作業が行われておらず、移転の準備が進められている。 「状況はかなり悪いと思いますっ。実質的な貢献をしても、視てもらえないと功績にならないです。頭使わないとですね〜」 マスクと同じく、組織の使いパシリの立場にある桐生 ひな(きりゅう・ひな)は、拠点の前でマスクと相談をしていた。 「大声を上げながら、前線で戦ってコリスさんを逃がすとかでいいんじゃないかな? 研究所の話も聞いたけど、敵側は多分殺さずの方針だと思うしな」 「殺されなくても、捕らえられたら終わりです〜。寧ろ、殺害を厭わない人もくるかもです〜」 「そこはキメラを前面に出して防ぐとか。とにかく今度のチャンスは逃したくないんだ」 「わかりますけどー」 ひなはマスクにこの作戦の危険性について話してきかせる。 「研究所にも結構有名な四天王が加勢したようですからー。舎弟の物量で押してくるでしょー。情報掴めてないですけど、研究所の時と同じで、実力の有る契約者も結構くる筈ですね〜」 「そうだけど……やるしかないんだ!」 具体的な策などないけど、マスクはやる気だけはあるようだった。 「悠司さんにも何か策があるみたいですから、そこそこのところで後退して再登場してはどうでしょう? こういうのはタイミングが命です〜」 「うーん……わかった。ひながそう言うのなら。自分は兎も角、ひなは下がった方がいいと思うし。キミの案に従うよ」 マスクは軽く息をついて肩の力を抜き、ひなにそう言った。 サルヴァトーレは組織の一員として、ひな達と同じように拠点の警備についている。 幹部のコリスの舎弟というわけではないのだが、これまでの手腕が認められており、舎弟と同格くらいの立場であった。 「終わったら祝杯をあげましょう」 ヴィト・ブシェッタ(う゛ぃと・ぶしぇった)が共に拠点前にずらりと立つパラ実生にそう言うと、おおーと声があがる。 自分達にずっと付き従っていたパラ実生には事情の説明をしてある。 危険な仕事であること。見返りも少ないこと、鼻につく人間との協力が必要になることもあるということ。 だが、シャンバラでの力を手に入れたい者がいるのなら、ついてきて欲しいと。 その話を聞いて尚、同行を希望した僅か数名のパラ実生にはこの作戦の真の目的も話してあった。 組織側はサルヴァトーレ本人以外が建物の中に入ることは拒否したが、警備については下っ端に出した指示と同じ指示をサルヴァトーレに出してきた。 下っ端を捨て駒に準備を進め、重役は別の拠点に移るつもりのようだ。 「随分人数多いっすね。これなら安心して移転準備すすめられるっすね!」 下っ端の監視と警戒を任されている高崎 悠司(たかさき・ゆうじ)は、僅かに窓を開けて外の様子を確認し、組織の幹部であるコリスにそう言った。 悠司の言葉に答えることはなく、コリスは舎弟達に指示を出し、荷造りを進めていく。 悠司は胸の携帯電話に軽く触れる。 通話状態にし、とある人物に自分の会話が常に流れるようにしてあった。 裏切ったら爆発すると説明を受けている腕輪に、今のところ反応はない。 獣が一匹、裏道を歩く。 「なァ、ホントに信用できんのか? 獣だぜ獣!?」 その後ろに、続いていた南 鮪(みなみ・まぐろ)がそう声を上げる。 「獣人を知らんのか貴様は」 織田 信長(おだ・のぶなが)はそれだけ言い、獣の後に颯爽と続いていく。 「おじちゃんは? おじちゃんは? おじちゃんがいるとこ行く〜」 イリィ・パディストン(いりぃ・ぱでぃすとん)はパタパタ飛んで獣に近づこうとするが、ニニ・トゥーン(にに・とぅーん)が後ろから抱きしめて止める。 「おじちゃん……おじちゃんとはね、もう直ぐ会えるかもしれないけど、会わない方がいいかもしれないね。はははっ」 イリィがおじちゃんと慕っているイル・ブランフォード(いる・ぶらんふぉーど)から、組織の拠点の情報が信長に流れていた。 前を歩いているのは、獣化した彼だった。 「契約者を含む舎弟や関係者が100人以上集まっている。騒ぎが起きるまで、ここで待て。流石に2人じゃ全く歯が立たない」 組織拠点の裏近くにイルは4人を招いて、声色を変えてそう言う。 「……頼んだ」 言った後、イルは足早にその場を後にした。 |
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