校長室
嘆きの邂逅(最終回/全6回)
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「みんなヴァイシャリーにつれていくです。しばった後は、ケガしている人にはちりょうしてあげて下さい」 「はい」 ヴァーナーが白百合団員に指示を出し、白百合団員達は倒した組織の者達を縄で縛っていく。 「おいたはメーなのよ」 クレシダも登山用ザイルで、負傷している組織のメンバー達をぐるぐる縛っていく。 「おいたはだめです。大人しくするです」 縛り終えた敵を、ヴァーナーはリカバリで癒してあげる。 「あれが所長のようですわ」 セツカはビデオカメラで建物や所長、重役と思われる者達を撮影していく。 ジィグラ研究所の所長とコリスは両手を縛られた状態で鮪と神楽崎分校生に外に連れ出された。 鮪は信長に所長を引き渡すつもりだったが、襲撃の主導を握っていた竜司や神楽崎分校生により阻まれ、所長も白百合団員の前に引き出された。 「まあそれもよかろう」 闇組織の末端部分を手中に収めたいという野望があったが、信長もこの状況では無理に交渉を持ちかけようとはしなかった。 「くそっ」 コリスの捕縛を知り、舎弟や下っ端達は次々に逃走を図っていく。 「一人たりとも逃がさないで下さい」 取り囲んでいる舎弟にそう指示を出した後、黎明は拳銃型光条兵器を手に捕らえられている所長の元へと歩み寄った。 「ヴァイシャリーにキメラを向わせたようですが、それを止める手段はありますか?」 瞳に鋭い光を宿しながら、黎明は穏やかな口調でそう尋ねる。 「貴様……あの場で殺しておくべきだったか……っ」 「質問に答えて下さい」 「キメラは凶暴な野獣と一緒だ。野獣を止める手段があるのなら、あるだろうよ」 その答えに、黎明は所長の足を銃で撃ちぬいた。 血が辺りへと飛び、所長は大地に膝をつき、うめき声を上げる。 「では、同じ方向に向わせることや、この拠点を護らせることは何故できたのでしょう?」 黎明の静かな問いに、所長は敵ではないものを認識させることが出来ること、キメラを寄せる避ける程度は電波で行えることなどを、苦しげに話したのだった。 ヴァイシャリーに向っているキメラは、側で率いている者がいるため、そちらの指示が優先される。こちらから干渉をしようとしても帰還させることは不可能だとも説明する。 黎明の舎弟達が捕らえた組織のメンバー達も次々にその場へと集められる。 「大人しくしろ。逃げるよりもマシな人生が待っているさ」 圭一も下りてきて、捕縛を手伝っていく。 「お前達も、手伝え」 そして、勝利に酔いしれている分校生に声をかける。 「おー! 大量大量」 そんなことを言いながら、分校生達も圭一に従って敵の捕縛を行っていく。 そうして、組織拠点への襲撃はC級四天王朱黎明、及び白百合団の指揮の下の、神楽崎分校の奮闘と、組織メンバーの裏切りにより、襲撃側は死者は勿論、重傷者が出ることもなく、敵の全ての捕縛にも成功したのだった。 移転の為に重要書類の荷造りを組織側が行っていたため、押収もスムーズに進んだ。 「さて、最後の仕事だよ!」 白百合団と分校生が全ての作業を終えた後、破壊工作の知識と武器を用いて、ヨルは分校生達と共に傾いている組織拠点を破壊していく。 「これで最後かな?」 ニニが縛った少年を引き摺って、イリィと共に現れる。 イリィが悲しみの歌を消沈させた後、ニニの子守歌で眠らせて一緒に引き摺ってきたのだ。 「おじちゃん? おじちゃん?」 イリィは捕まっている人や、作業をしている人々の顔をじろじろと見回していくが、目的の人物の姿は無かった。 「いません、ね……」 未憂も、1人1人を確認し、悠司の姿がないことにため息をついた。 「あの、この人のこと知りませんか〜」 メイベルは、コリスの元に駆け寄って転送してもらったルフラの写真を見せる。 「知らねぇな」 「でも、ここを護ってる人の中にいたんですぅ」 確証はないけれど、似た人物がいたことは確かだから。 「パシリの顔まで覚えてねぇな。ここにいたってんなら、捕まえた奴等ん中にいるだろ? いねぇってんなら、てめぇらと内通していた裏切り者ってことじゃねぇのか」 コリスはぶっきらぼうにそう答えた後、白百合団員に引っ張られ馬車に乗せられていった。 彼はここにいたかもしれない。 何か目的があって、組織に入り込んでいたのかもしれない。 メイベルは携帯電話をぎゅっと握り締めた。 押収された全ての物と、捕らえられた人々はヴァイシャリーへ連行され、ヴァイシャリー軍に引き渡された。 軍での調査を終えた後、各首長家や権力者に情報を提供し、拠点の一掃を行うことになるだろう。 「サルヴァトーレ様、遅くなり申し訳ありません」 三井 八郎右衛門(みつい・はちろうえもん)が沢山の荷物を馬に乗せて、その場へ到着をする。 「全て……終わられたのですね。見事です」 手もみをしながら、八郎右衛門は言った後、共に組織を裏切り襲撃を行ったパラ実生達に、酒と煙草を配っていく。 「職業斡旋所から感謝の気持ちでございます」 サルヴァトーレと仲間達は、その場で簡単な祝杯をあげていく。 「こらこら、未成年はダメだぞ」 圭一の言葉にブーイングがあがる。 祝杯に加わろうとした分校生の多くは彼に引き止められてしまう。 「帰ったらパーティしたいよね」 皆の様子に微笑みながら、拠点の破壊を終えたヨルがそう言う。 「よし、分校でパーティやって騒ごうぜ! 激戦地に行ってる優子達も帰ってくるって話だしよォ、分校名も考えようぜ!」 ヨルと竜司の言葉に、神楽崎分校生から雄叫びのような賛成の声が上がり、周囲に響き渡った。