校長室
嘆きの邂逅(最終回/全6回)
リアクション公開中!
舎弟数百名を引き連れて、C級四天王朱 黎明(しゅ・れいめい)もその地を現れた。 「頃合ですね」 ラズィーヤ・ヴァイシャリーから届いたメールを見て、そう呟く。 組織本拠地への突入が開始されたそうだ。 黎明は携帯電話でメールを1通打ち、2人の人物のアドレスを宛先に入れる。 高崎 悠司(たかさき・ゆうじ)とナリュキ・オジョカン(なりゅき・おじょかん)だ。 ヴァイシャリー側の動きの報告、襲撃を開始するとの連絡。そして最後に1文こうつける。 『ラストダンスを楽しみましょう』 送信を終え、携帯電話を仕舞うと黎明は舎弟に指示を出し、組織拠点の建物をずらりと取り囲んでいく。 更にオリヴィエ博士改造ゴーレムを、拠点の方へと向わせる。 「コ、コリスの旦那! すげぇ人数っすよ!」 外の様子を伺っていた悠司が驚き声を上げる。 「うろたえるな。あと少し時間を稼げればいい。飛空艇も用意してある」 といっても、舎弟全員分は用意してないんだろうなと思いつつ、悠司は監視役を演じ続ける。 「ちっと俺も出ていいっすかね。ここの情報を漏らしているヤツがいそうっす」 「構わん。裏切り者は殺せ」 「了解っす」 悠司は武器を持って、建物の外へと向う。 「百合園女学院、生徒会執行部『白百合団』です。ここにキメラと人がにげていったこと、知ってるです。こうさんしてください!」 武装したヴァーナーが声を上げる。 無論、組織側の答えは先制攻撃だった。 「ヴァーナーは守るの」 ペット犬に乗ったクレシダ・ビトツェフ(くれしだ・びとつぇふ)がヴァーナーの前にでて、斬り込んできた組織の者達に、奪魂のカーマインで攻撃をする。 「剣を持ってる人は足。銃を持ってる人は手優先ね」 クレシダはシャープシューターで狙いを定めて、敵の手足を撃ち抜いていく。 「いくです! みんなをかなしませるけんきゅうはココでおわりにするですよ!」 ヴァーナーが指示を出し、白百合団員が武器や盾を持ち、組織の者達を抑えていく。 ヴァーナー自身も紺碧の槍を持ち、迫る敵の腕に繰り出して武器を落とさせる。 「ヴァーナーいくわよ」 クレシダがヴァーナーに近づき、弾幕援護。 怯む敵に、白百合団員が次々に武器を繰り出していく。 「ファイアストームは押収が終わるまで使いませんわ」 言って、セツカはブリザードを放ち、敵の体を凍らせる。 「よォォォォォし、いくぞォォォォォ!」 「ヒャッハー!」 竜司が声をあげ、分校生達が鬨の声を上げる。 「最初の敵はキメラだ!」 分校生と共に、敵を抑える白百合団の脇を走りぬけ拠点の前を守るキメラの元に飛び込む。 「い、行け!」 竜司達不良軍団の姿に、キメラに命令を出している青年……マスクは逃げ腰だった。 ただそれは怯えているというよりは、攻撃することへの迷いだった。 「容赦しませんよー」 ひなは紋章の盾を構え、槍で襲い来る分校生達を牽制していく。 スタイルが良く、背が低くて普通の女の子に見えるひなの応戦に分校生達は少し戸惑いを覚える。 「女は手加減しとけェ!」 キメラと戦いながら、竜司が言う。 「女性が女性を相手にするのでしたら、良いでしょうか。それにしても……」 竜司の後方でジュリエットが微笑みを見せる。 「……こうして見ると、吉永分校長代理の背中が頼もしく見えますわね」 「!!!」 このままでは、また百合園生に惚れられてしまう! ちょっと動揺してしまった竜司の肩を、キメラが爪でさっくりと裂いた。 「竜司……」 高台から分校生の突撃を見守っていた圭一は、一抹の不安を覚える。 即座にスナイパーライフルで狙撃をし、キメラの前足を撃ちぬいた。 「大変!」 ジュスティーヌは竜司に駆け寄ってヒールをかけ、心配そうな目で竜司を見上げた。 「無茶はなさらないでくださいね。分校長代理は分校生の要ですから……」 「お、おう! 可愛い舎弟共を護ってやるぜェ!」 どきどきしてしまうので、美人な2人のことは今は忘れることにした。そして、竜司は自分と少し似ているかもしれないキメラへの攻撃に集中する。 「お気をつけて下さいませ」 くすくすと笑みを浮かべながら、ジュリエットは機関銃を下ろしてキメラに弾丸を撃ち込んでいく。 「ヒャッハーじゃん!」 アンドレもまた、機関銃をセットして別のキメラへ攻撃を加えていく。 「さっさと片付けてパーティにするじゃん!」 そう声を上げると、分校生達から賛同の「ヒャッハー」という声が上がっていく。 契約者以外の分校生と竜司の舎弟達が、ジュリエット、アンドレが攻撃を加えたキメラに、集団で殴りかかっていく。 「可愛い娘の人質でもいないかな〜」 湖畔はジュリエットの後ろから、建物へと目を向けて中を覗き見ようとする。 今のところ人質などはいなそうだ。窓は全て曇りガラスであり、覗くことは出来なかった。 「お嬢さん逃げた方がいいよ。寧ろ一緒に来る〜?」 盾を構えて備えているひなにそう声をかけるが「結構ですー」と断られてしまう。 「うぉぉぉぉ!」 吼えながら、竜司は血煙爪でキメラの首を全て落とし、1体に止めを刺した。 「畜生ッ!」 襲ってきた少年には、爪は使わず甲で打撃を加えて沈ませる。 「白百合団の皆が抑えてくれてるし、奥に進もう」 ヨルは竜司達が進みやすいように、機関銃で弾幕援護をする。 弾丸はなるべく足へ。致命傷にはならないように気をつける。 (分校の方針は、敵側の人間は確保、か。トップクラス以外始末すれば簡単なのに) ヨルの隣で、カティはそんなことを考えていたが、それを口にしたらヨルに嫌な顔をされてしまうので、口には出さないでおく。 でも、ヨルや共に戦う皆や自分の命の方が大切だから、必要になった時には汚れ役だろうがなんだろうが冷徹な対処をするつもりだった。 「さて、注意していこうか」 カティは竜司、未憂、リンにアイスプロテクトをかける。 「ありがとうございます」 未憂は礼を言った後、敵にバニッシュを放つ。先にギャザリングヘクスで魔力を上げてある。 「行きます」 敵が怯んだ隙に、建物の方へと駆ける。 「みゆうの通り道、開けてもらうよ!」 リンもギャザリングヘルスで魔力を上げた状態で、サンダーブラスト、アシッドミストを放っていき、敵を近づけさせない。 「偉い人の部屋は一番奥の部屋かな? 逃げる準備してそうだよね」 そして、未憂と共に駆け抜け、建物の近くまで走りこんだ。