リアクション
「やれやれ、みんな好き勝手にどこへ行ったんだか。それにしても、いったい、いつこんな絵が描かれていたんだろう」 自分たちの描かれた絵を見て、ココ・カンパーニュ(ここ・かんぱーにゅ)が一人つぶやいていた。 書かれた時期が違うのか、アルディミアク・ミトゥナ(あるでぃみあく・みとぅな)が加わっている物と、いない物が両方ならべられていた。 他の場所にも、十二星華の姿絵がそれぞれ飾られている。どうやら、一時期それをテーマにして描いていたからアルディミアク・ミトゥナの姿もあるのだろう。 「うーん、私たちはおまけ? いやいやいや、私が真ん中にいるから私が主題でもあるよね」 独自の解釈をしながら、ココ・カンパーニュがうんうんとうなずいた。 なかなかにゴチメイ隊のメンバーの性格がよく表れている絵だ。 「やっぱり、シェリルは今のスタイルの方がいいなあ。見せてやりたかったなあ」 軽く手首をさすりながら、ココ・カンパーニュは独りごちた。 それにしても、こうして十二星華を一同にならべてみると、彼女たちはなんだったんだろうという思いも浮かんではくる。 アルディミアク・ミトゥナに聞いてしまえばいいだろうことなのだろうが、本人が話そうとしないことを無理に聞くことはないとココ・カンパーニュは思っていた。あるいは、再生槽に長い間入っていたせいで記憶の一部が失われていると聞かされたこともあった。 いずれにしろ、昔の自分を捨て去り、ココ・カンパーニュのパートナーであって妹として再生したアルディミアク・ミトゥナにとっては、すでに十二星華であるというのは意味を持たないことだ。それゆえに、ココ・カンパーニュに関係のない戦いには一切関与していない。 ゴチメイたちにしても、今のところは他の十二星華たちと直接の面識はない。せいぜいが、クイーン・ヴァンガード入隊試験で、テティス・レジャ(ててぃす・れじゃ)と一度会ったくらいであった。 様々な人々のポートレートを順に見ていくと、いかにこのパラミタに人が集まっている、あるいは人が暮らしているのだということがよく分かる。その何人かは、ココ・カンパーニュにとっても見覚えがあった。 「この場所に来たから会えた、そして、これから会えるかもしれない。面白いよなあ」 そうココ・カンパーニュが思ったとき、スーッと霧と共に閲覧者たちが流れ込んできた。ドライアイスのスモークが広がるように霧が人々の足許を隠しているが、火災報知器とかは反応しないのだろうか。 それに、おかしなことに、すべて、今見ていた絵と同じ人物たちだ。偶然とするには都合よすぎる。これは、本当に本人たちなのか? 「屋内なのに霧か……」 ちょっと嫌なことを思い出して、ココ・カンパーニュが顔を顰めた。 そういえば、先日のイコン博覧会でも、あの時と同じ霧が目撃されたという噂もある。 もし、あの時の霧と同じ物であれば、ココ・カンパーニュの意識に反応して、霧が今見ていた絵の人々の姿を作っているということになる。一種の実体を持った幻影だ。 とはいえ、出会った人をそのたび殴り倒して本物かどうか確かめるというわけにもいかない。 実害がなさそうなら、今のところは放置しておくしかないというところか。 未だあの霧が残っているとしたら少し驚異だが、黒蓮がないのだからこれ以上増えるということはないだろう。誰かが処分していけば、いずれはいなくなるはずだ。 「とりあえず、シェリルたちを探しておかないと」 念のため仲間たちと合流しようと、ココ・カンパーニュは展示室を出ていった。 |
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