リアクション
「なんだろう、この部屋、嫌な予感がす……」 「きゃー、マサラさんみっけ♪」 嫌な雰囲気を感じて展示室の前で足踏みしていたマサラ・アッサム(まさら・あっさむ)を、背後から忍びよった朝野未沙がタックルをして展示室の中へと引きずり込んだ。 「このお、いきなり何をする!」 あわてて朝野未沙をふりほどくと、マサラ・アッサムが部屋の奥へと避難しようとする。 展示室の中には、なぜか中央にベッドが二つならんでおかれていた。その片方では、ホイップ・ノーン(ほいっぷ・のーん)がもう一人の朝野未沙にもみもみされて暴れている。 「は、放してください。ああ、いやん」 朝野未沙にどさくさに紛れて半脱ぎにされたホイップ・ノーンが悲鳴をあげて身をよじる。もちろん、本人であるはずがない。 「なんなんだ、この部屋は?」 マサラ・アッサムがちょっと絶句した。 背後の壁にかけられた『【イベカコンテスト】仰向けマッサージ』というタイトルの絵の光景が、そのままこの展示室内に具現化しているのだ。 「まあ、素晴らしいんだもん。絵、その物が具現化してるよ。ようし、マサラさんも、一緒にマッサージ受けてよ。気持ちいいよ♪」 ニコニコしながら、朝野未沙がマサラ・アッサムに迫った。両手をワキワキさせながら、少しずつマサラ・アッサムに迫っていく。 「まだ諦めていなかったのか……」 はっきり言って、マサラ・アッサムにとっては、朝野未沙はトラウマである。 身構えつつじりじりと後ずさりしていったマサラ・アッサムであったが、ベッドの手前まで追い詰められてしまった。 「ふふふ、いただきまー……ごふ!」 上質なメイド服の肩をするりと外してピョンとマサラ・アッサムに飛びかかろうとした朝野未沙が、空中で叩き落とされた。 「まったく、こんな所で何をやっているのですか」 ペコ・フラワリー(ぺこ・ふらわりー)が、鞘に収められた大剣で、幻影の方の朝野未沙とホイップ・ノーンも叩いた。こちらは、あっけなくかき消えてしまう。 「助かったあ。それにしても、この美術館はどうなってるんだ」 両肩をむきだしにして床に大の字にのびている朝野未沙の姿を見下ろして、マサラ・アッサムがほっと安堵の息をついた。 「この香り……あの時の霧でしょうか」 クンクンと微かに鼻を鳴らして、ペコ・フラワリーが言った。 本当にわずかだが、甘い花の匂いがする。 これは、おそらくは黒蓮の香りだ。 「ひとまず、リーダーと合流しましょう」 ペコ・フラワリーが、マサラ・アッサムをうながした。 霧の消えた展示室は元の部屋に戻り、壁には瞳の大きな女の子の絵がたくさん飾られていた。 |
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