リアクション
◇ ◇ ◇ 「……で、その後もう何日経ってるの」 げんなりと言う真宵に、ラピスが羅針盤を見た。 「多分、エリュシオン領まで入っちゃってると思うんだ」 「ということは、ここは“龍の背山脈”の中かな」 北都が言う。 「あと何日かかるの……」 あの道を戻るよりは、先に進む方がいい。 そういう思いでいるものの、どれくらい歩けば奥まで行くのか。 「多分、もう少しだよ」 「何故解る?」 燕馬が問う。 「るるのシックスセンスがそう告げてるの」 さあ、もう少し頑張ろう! と、一行は今日も歩き出す。 奥底から、光が見えていた。 日光ではない。 青いような、碧いような、白いような―― 到達した場所は、広大な空間だった。 奥の壁が見えないほど広く、天井は、光が届かないほど高い。 巨大な光源は、龍の形をしていた。 「何これ……!」 真宵が叫んだ。 輝く龍。彼等は息を呑む。 輝く龍は、身じろぎして、頭を下げ、侵入者達を見た。 緊張が高まるも、龍はただ、じっと見ている。 敵意は感じられなかった。特に好意的な雰囲気もない。人と同じ感情は存在しないのかもしれない。 「あなたは、誰?」 北都が訊ねた。 『私は、核。この山脈の核』 「では、もしやあなたが、最近の地震を起こされているのですか」 クナイが問うと、龍はぶるりと頭を上げ、身を震わせた。 『そうだ』 『違う』 『私は逆らえない』 北都達は顔を見合わせる。 「どういうことですか。我々に、何かできることがございますか?」 『ああ、どうか、ウラノスを鎮めて欲しい』 『ウラノスの嘆きに反応し、自らの暴走を抑えきれないのだ』 「ウラノス……?」 「誰それ」 るる達は顔を見合わせる。 『どうか、私が私を忘れてしまう前に』 『まだ抑えていられる内に』 「ウラノスを鎮める為には、どうすればよろしいのですか?」 『地底に』 『天空に』 『世界樹を護って、彼はいる』 その時、びくり、と、不自然に龍が震えた。 ぐらりと足元が揺れる。 『ああ、どうか』 その言葉を最後に、北都達は光に包まれた。 ぽかん、と見つめる視線と出会う。 気が付けば、北都達は外にいた。 それも、滑らかな岩肌の上。 「びっくりしたのです」 と、そう言ったのは、ハルカだった。 「何じゃ、おまえら、いきなり?」 突然目の前に現れた北都達に、光臣翔一朗が声をかける。 「……此処は何処?」 北都は訊ねた。 ◇ ◇ ◇ 彼等が転送されたのは、ルーナサズの龍王の卵の上だった。 話を聞いたイルダーナは、表情を曇らせた。 「エレメンタルドラゴンか……」 「エレメンタルドラゴン?」 「だが解せねえ」 「エレメンタルドラゴン?」 「いくらウラノスが我を忘れたとしても、パラミタを滅ぼすような働きかけをするはずがねえ」 「もしもし?」 「パラミタ世界を形成し、司る、高位の精霊のことです」 思考に陥るイルダーナに代わって、苦笑したイルヴリーヒが、疑問符の飛びまくっている真宵達にそう説明した。 「パラミタの自然を司る精霊達が、世界の何処かにいると言われいます。 その全てが必ずしも龍の形をしてはいないでしょうが」 「僕達が会ったのは、大地の精霊龍?」 「そういうことでしょう。しかし変です」 「ウラノスの嘆きに反応して、というところですか」 「ええ。 ウラノスドラゴンはパラミタの守護神です。アトラスと対を成し、天空に在ると言われている」 北都やクナイ達の質問に答えながら、イルヴリーヒも思案に暮れる。 「第三者の介入があるんじゃねえのか」 難しい顔をして、イルダーナが呟いた。 |
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