空京

校長室

【選択の絆】夏休みの絆!

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【選択の絆】夏休みの絆!

リアクション


勝者は?

「今一度、聞こう。あんたはサロゲート・エイコーンが、単なる暴力に成り下がらないために戦うと言ったわね」
 アンズーとアルマインの融合が生んだ魔道巨兵ギルガメッシュの権化アカシャ・アカシュを駆る、グラルダ・アマティー(ぐらるだ・あまてぃー)
「そうだよっ! イコンの本質は兵器じゃないんだから。ボクと兄さんで暴力を制して、無力化するんだっ」
 「歌う!サロゲート・エイコーン☆♪」として闘い続ける、陽射しの歌姫、主力運用機インフィニティー。その奏者こと赤城 花音(あかぎ・かのん)
「イコンが切り開くものは、使い手次第」
 そう呟くのは、シィシャ・グリムへイル(しぃしゃ・ぐりむへいる)。自らを道具と称する、グラルダのパートナーだ。
「力を以て力を制す、とは言いませんけど。暴走を食い止める力が必要なのは事実ですね。皮肉なものですが」
 何とも悩ましいという感じの意見は花音のパートナー、リュート・アコーディア(りゅーと・あこーでぃあ)である。
「ならばあたしを倒してみることだわっ。実に愚かしい。目立つ的だけど、容易に当てられると思わないことね」
「それならば、さっそく始めましょう。僕もやるからには全力でぶつかります」
「望むところだからねっ! アイ・アム・ミュージックファイター! 行くよぉ〜♪」
「……そういう軟派な態度が、大っキライいなんだよおっ! あたしが力を振るってやるのは、虐げるためじゃなく、勝つためだっ!」
 相対する2体のイコンの真ん中を、巨大なドラゴンフィオーレが割って入った。その背に乗っているのは、三笠 のぞみ(みかさ・のぞみ)ロビン・ジジュ(ろびん・じじゅ)だ。
「ちょっとそこのあなたたちっ、もっと楽しくやろうよん! せっかくの夏休みなんだからねっ。ひゃっほー」
「のぞみったら、落っこちたら危ないですから。しっかりと掴まっていてください」
「大丈夫だよロビンっ、心配しなくても平気だからっ」
 首をもたげたフィオーレは、再び湖の底へと潜っていく。
「邪魔だわ」
 アカシャ・アカシュがカナンの聖剣を一振りすると、フィオーレの潜った先を捉えたかのようにビームが打ち込まれた。
 程なくしてフィオーレが湖底から空高く舞い上がると、その頭上に掲げていた強化風船は綺麗になくなっていた。
「あれーっ!? ねえねえロビン、風船なくなっちゃったー」
「それは残念でした。では安全なところまでフィオーレに飛んでもらいましょう。さあ、僕の腕に掴まって」
「平気だよんっ。フィオーレ、もっと湖に潜ってよっ。遊園地のアトラクションみたいで楽しいよねっ!」
「あはははは、そうですね。フィオーレも同感だと言っていますっ」
 フィオーレが遠のいたのを見計らって、2体のイコンは戦闘を開始した。
「はじめるから」
「承知」
 グラルダはシィシャにそう告げると、マジックソードも引き抜いた2刀装備でインフィニティーへと飛び込んだ。
「お兄ちゃん、行くよっ!」
「ああ、お前の歌声をみんなに聞かせてやれ」
「うんっ」
 飛行形態に変形したインフィニティーは、アカシャ・アカシュの一刀を易々とかわして上空へと飛び上がって旋回する。
 ソニックブラスターから流れる花音の唄声に、敗者のパイロットたちは盛り上がりを見せているが、グラルダたちには特に影響を与えていないようである。
「追うぞシィシャ」
「承知」
 アカシャ・アカシュが機晶エネルギーに包まれると、爆発的な加速でインフィニティーへと肉薄する。
「――速いっ!?」
 急旋回でアカシャ・アカシュの軌道を外したリュートは、超電磁ネットを投下して追撃を振り切ろうとした。
 グラルダはマジックソードで超電磁ネットを両断し、そのままインフィニティーに襲いかかった。
「終りかあーっ!」
 裂帛の気合いをのせて振り下ろされたカナンの聖剣が、飛行形態を解いて振り返ったインフィニティーのウィッチクラフトライフルを両断した。
「なんてスピードだっ」
 壊れた兵装をパージしつつ黒曜槍を突き出したリュートは、グラルダの重い連撃に圧されて湖の中へ突き落とされそうである。
 双方とも、水中での活動には不向きな機体なのだ。
「その程度の覚悟で、アタシの前に立つんじゃないッ!」
 横凪の一撃がインフィニティーの肩口を抉り込み、装甲版がひしゃげてはじけ飛んだ。飛び石のように湖面を跳ねていき、力なく没していく。
「きゃああああっ!?」
「花音っ!」
 湖面に叩きつけたれたところで飛行形態に変形したインフィニティーは、フルブーストでアカシャ・アカシュの股下をくぐり抜けた。
 その飛び方はかなり不安定であったが、どうにか水没だけは免れる。
 急速に上昇するインフィニティーへ、振りあおいだアカシャ・アカシュの追撃がかかった。試験型パワーブースターにオーバードブーストがかかり、湖には巨大な水柱が立ち上がった。
「これで終りだっ、消え失せろおおおおおっ!」
 盾を頭上に掲げた完全防備の体勢で、アカシャ・アカシュはカナンの聖剣をインフィニティへとロックした。
 グラルダのにらみ付けたメインモニター内に、飛行形態で上昇を続けるインフィニティーの姿が徐々に迫って来て。
 ――次の瞬間には、機体が木の葉が舞い散るように一瞬にして機体を反転させたインフィニティが、アカシャ・アカシュと交差して、激しい衝撃が両者を襲い、そして湖底へと没してしまったのである。
 決戦を見ていた老齢の地球人が、こう呟いていた。

「木の葉落とし」と。