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リアクション
見守る者たち
「そらそら朋美、ガンガン片付けていこうぜ。おまえの腕なら、敵機とニアミスする時に片を付けられるだろ」
「あんまり強引なやり方にはちょっと引いちゃうんだけど。というか、無茶なことばかりするから色々と整備で修理しなきゃいけないんだよ？」
「直せるんだったらイイじゃねえか。使っても使わなくたって、念入りに整備するのは変わらないじゃないか」
「シマックはそーやって、ぶっ壊しを正当化したいだけじゃないの。ボクの苦労も分かって欲しいなあ」
「カタチ有るもの、いつかは壊れる。だから俺がぶっ壊すっ。いずれは同じ事だ」
「もう分かったからっ。戦いに集中しましょう」
高崎 朋美（たかさき・ともみ）とウルスラーディ・シマック（うるすらーでぃ・しまっく）の緊張が一瞬途切れたときだった。
彼女たちの乗るウィンダムの真下から、数機のイコンが湖底から飛び出してきた。
「ちっ……朋美、上昇だ急げ」
「うわあっ、間に合わないよっ」
とっさに新式ビームサーベルを振りかざした朋美は、まっすぐ突っ込んできたイコンを薙ぎ払った。
しかし残り２体のイコンが放った２０ミリレーザーバルカンの掃射には対処することができない。
頭上の強化風船に衝撃が加わったことを示す警報がメインモニターへ表示された。
「……あれっ、風船にはかすっただけ？」
「おいおい、まずは敵をなんとかしろ」
「りょ、了解っ」
敵を一掃した朋美は、頭上の強化風船の状況をチェックして目を疑った。
「ちょっと、どーゆーことなのよ、シマックっ！？」
「ああん？ 要はソイツが割れなきゃ、負けねーんだろ？」
バトル開始の直前、シマックはウィンダムの頭上に浮かぶ強化風船に対して、セロハンテープの親分のようなものを張り巡らせて、決して弾けないように加工を施していたのである。
現についさっきの急襲によって強化風船を射貫いた穴が、ポッカリと空いてしまっていたのだ。
「だからって、こんなコトしちゃったら、反則じゃないっ！」
「風船が割れねーように、出撃前にちっと対策を施しただけさ」
「それを反則だって言うんじゃないのっ、もお、どうするのよコレ、バレたら大変なコトに――」
などと口論をしている隙を突いて、ジャイアントピヨがウィンダムを飛び越えていった。
「ピヨーーーーーーーーーーーーーーーっ！！！」
眩い日射しに雫が輝き、口にくわえられたウィンダムの強化風船は、クシャリと潰されて原形を留めないほどになっていた。
「よっしゃあああああっ！ 風船ゲットおおおおおー！」
「オーウ、アキーラ、ベリーナイス、ネ。この調子デ、もっとたくさんノ、風船を手に入れるのですヨ」
「勝てるっ、コレで勝てるぞおおっ！ おっしゃーあっ！」
アキラ・セイルーン（あきら・せいるーん）とアリス・ドロワーズ（ありす・どろわーず）を乗せたジャイアントピヨは、湖の上を繰り返し飛び跳ねながら夏を満喫していくのだった。
湖の上空を旋回するブラックバードの中では、バトルロイヤルの中継が行われていた。
「こちら、中継のアニスです。……にゃは〜っ、ポムクルさん可愛いっ」
アニス・パラス（あにす・ぱらす）がポムクルさんをぎゅーっと抱きしめる様子がカメラにおさめられていた。
「モフモフしちゃうんだからっ」
「くすぐったいのだー」
そんな様子をそっと見守っているのが、パイロットの佐野 和輝（さの・かずき）である。
「何かあったのか」
「うん。さっきね、風船にイタズラして割れないようにしていたイコンが、負けちゃったんだよねー。ポムクルさーん」
「その通りなのだー」
「悪い人には、メッって、バチがあたるんだもんっ。そうだよね、和輝っ」
「ああ、その通りだ。ところでアニス、戦況はどうだ？」
「はーいっ。にひひ〜。いよいよ戦いは大詰めだよっ。目視で確認できるイコンは２機だけだもん」
「そうなのだー」
「それでは決戦の状況をクローズアップしますっ。どうぞご覧くださいっ」
そしてブラックバードに積まれたカメラは、赤い２体のイコンを捉えた。
中継機であるブラックバードの護衛として追従するプロトタイプ・ストークの中では、イコンについての議論がポムクルさんを相手に展開していた。
「ポムクルさんがイコンを作ろうとしたら、どんなものになるのかしら？」
「要らないのだー」
その回答にイーリャ・アカーシ（いーりゃ・あかーし）は関心を示した。
「それはどうしてなの？」
「みんなといれば怖くないのだー」
その反応にジヴァ・アカーシ（じう゛ぁ・あかーし）も興味を引かれたようだ。
「それでも、強い敵と戦わなくてはいけなくなったら困るんじゃないかしら」
「大丈夫なんだー」
「それはどうして大丈夫なの？ 何かイコンのように強い力が得られるって言うの？」
「合体すればいいのだー」
「そーなのだー」
「合体……なの？」
コックピット内で遊んでいたポムクルさんが数人より集ると、うにゅうにゅと押しくら饅頭を繰り返すうちにひとりのポムクルさんへと成長を遂げてしまった。
確かにコレまでのポムクルさんよりもスケールアップしている。
「す、凄いものを見せてもらったわ。今後のイコン開発に役立つかはちょっと分からないけれど。合体かあ……」
