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リアクション
41. 二日目 エーテル館 大ホール 午前五時五分
突然、ホール中央にでてきた退魔師、鬼桜刃は、くるととシャーロットの間に入り、シャーロットにむけ、剣を抜いた。
「理屈は置いといて、このガキは俺が守る。あんたがこいつの敵なら、俺の敵だ。あんた、こいつの邪魔するなら・・・殺すぞ」
「あなたは、いいように利用されているのに、気づかないのですか」
「俺が、人を信用したり、守ったりするのは、計算じゃねえんだよ」
「愚かしすぎて、私は、言葉もありません。彼を捜査の枠の外におくなんて、弓月くるとこそ、まさしく見えていて見えない容疑者です」
シャーロットは、大げさにため息をつく。
くるとの前には、刃。後には、古森あまねがついている。くるとの横にいる、黒崎天音は、シャーロットにほほ笑んだ。
「シャーロット・モリアーティ。くると君がかわい家に呼ばれた理由を、きみは、知ってるんじゃないかな」
「捜査陣のみなさん。私一人が責められています。この状況は、ひどいと思いませんか? PMR。百合園女学院推理研究会のみなさん。捜査に参加されている頭のよい人たち。私は、そんなに間違っていますか? どなたか、助けてくださいませんか」
「本当にかわいそうね。あたしは、あんたに同情するわ。あんたの意見は、全部、認めてあげる」
シャーロットの助っ人として歩みでてきたのは、茅野菫だった。菫は、シャーロットの横に並び、肩に手をまわし、耳元でささやく。
「右むけ右じゃなくて、きれいで、賢くて、あんた、なかなかいい線いってるじゃない」
「応援、感謝いたします」
シャーロットも嫌がりもせず、菫にぴたりと体を寄せ、にこやかに笑った。
「これからもよろしくね」
「こちらこそ。シャルと呼んでください」
二人は鼻先がふれあうくらい顔を近づけ、親しげにあいさつを交すと、一転し、顔のむきをかえ、厳しい目線をくるとにみせた。
「いまさらだけどね。弓月くるとくん。あたしは、あんたが大嫌い。だから、あんたを叩きのめせると思うとわくわくするわ。人殺しが大好きなあんたの悪を暴くために、くだらない事件に、あたしは、首つっこんでやってるのよ」
菫は、くるとにすごみ、おろしたままの手をシャーロットときつく握り合った。
「連続殺人鬼のくるとくん。そろそろ正体をあらわした方がいいんじゃない。少年法があるからって、あんた、自分の罪をあまく考えてない?」
「俺もどちらかといえば、こっちの仲間だぜ」
菫とシャーロットのうしろから近づいてきた巨漢のジャジラッド・ボゴルは、背後から二人の肩を抱えようとし、寸前のところで避けられ、二人に、にらみつけられた。
「菫。おまえ、無事でよかったな。オレは、うれしいぜ」
ボゴルは、それでも薄笑いを浮かべている。
「はん? あんた、誰。なれなれしわね」
「仲良くしようぜ。あっちは、男とガキだろ。オレは、きれいで頭の切れるおまえらを助けてやりてえんだ」
「せっかくですが、あなたの助けは、必要ないと思います。もうしわけありませんが、お戻りになってください」
シャーロットも、菫の時とはまるで違う冷たい態度で、ボゴルを拒絶する。
「へへ。お高いこった。同じ道を歩いてりゃ、いまはいやがってても、そっちからオレを欲しくなる時が、そのうちくるかもしれねえぜ」