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少年探偵の失敗

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少年探偵の失敗

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42. 二日目 エーテル館 大ホール 午前五時十三分

 収拾がつきそうもないホール中央での争いに、終止符を打ったのは、かわい潔だった。
 潔は、対峙する両陣営の間に立ち、手を叩く。
 ぱん。ぱん。ぱん。
「みなさん。朝早くから、よく頑張ってらっしゃいますね。余計なお世話かもしれませんが、今日の捜査もあるでしょうし、朝の会合は、そろそろ終わりにしませんか。
 そこで、この会合の締めとして、私の話を聞いていただけますか。
 ・・・・・・私、かわい潔は、ここに告白します。
 私は、友人のリン太郎くんのたくらみに薄々気づいてはいた。だが、兄が奇妙な遺言を残しても、オサム先生、阿久先生がなくなっても、竹丸がなくなっても、まだ、わからなかった。兄の真意がわからなかった。
 おまえら全員、死ね、と言われているのかとも思った。
 しかし、目の前でついにリン太郎くんまで哀れに亡くなるのを見て、兄の本心を確信した。
 兄さんは、本当にロマンチストだ」
 いきなり語りだした潔の前に、昨日、潔と話をし、まともな答えを得られなかった百合園女学院推理研究会のペルディータ・マイナがでてきて、潔の目を見つめた。
「潔さん。昨日、あたしに話してくれなかった麻美さんの秘密を教えてくれますか。もう、人が死ぬのはたくさんでしょう」
 潔は、ペルディータから目をそらし、しゃべりだす。
「あの遺言は、我々かわい家のものが、麻美とうまくやっていけるかを問う、兄さんなりの試練だ。
 これを乗り越えれば、かわい家は、普通の家族になれると思う。
 兄があの日、なくなったのは、偶然ではない。リン太郎くんに操られた、それもたしかにあるだろう。しかし、自分であの日を選んだのではないかな。継承式の前日である明日、エーテル館は、建てられて以来、十数年かかって、ようやく、その本来の役割を果たす。
 麻美たちが生まれた日から計算して、エーテル館は、そのために建てられた。
 あと二日、時間がある。
 私の、というよりかわい家の力で、継承式がすむまでは、事件に警察、マスコミは介入させない。
 勇気ある、きみたちには、私の家族の愚かな行為をとめ、秘密を解き明かして欲しい。
 ベルティータさん。私は、きみに嘘は言っていない。かわい家の秘密も、麻美の秘密も、答えはエーテル館にある。
 エーテル館の意味がわかれば、レンドルシャム島がなぜ、あるのかもわかる。
 それは、自分の目でみて、確かめなければ、とても信じてもらえないと思う。
 私が、あの日、かわい家に起こったことを消化するのに、今日までかかったように。
 ベルティータさん。昨日は、きみとチェスができて楽しかった。
 それでは、会合は、ここでお開きにしよう。
 私が、きみたちの前に顔をだすのは、これで最後だ。
 兄が亡くなってから、いろいろ考えて、とても疲れてしまった。私は、なにもしない。探さず、そっとしておいてくれ。失礼する」
「チェスのお相手なら、いつでもしてあげます。あたしたちが謎を解いたら、戻ってきてください」
 潔はペルディータに会釈すると、ホールにいる一同に深々と礼をし、場を去った。