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七草狂想曲

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七草狂想曲

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「それにしても、七草粥は熱いですの」
 ふーふーと、七草粥を吹いて冷ましながら、エイム・ブラッドベリーが言った。彼女の前には、神代明日香が運んでくれた本郷涼介の七草御膳がおかれている。
「火傷しないように気をつけてくださいですぅ。私は、まだ食べていない人の所へ、お料理を運んできますからぁ。少し待っていてくださいですぅ」
「はあい」
 そう答えると、エイム・ブラッドベリーは、またお粥をふーふーし始めた。
 
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「ふーふー。はい、チムチム、あーん」
 レキ・フォートアウフが、七草粥を吹いて冷ましてから、木匙をチムチム・リーの方に差し出した。
「チムチム、自分で食べられるアルよ」
 ちょっと恥ずかしいと、チムチム・リーが言う。
「それはそうだけど、頑張って七草をたくさん集めてくれたから、これは御褒美だよ」
「じゃ、いただくアル」
 素直に、チムチム・リーは木匙のお粥にパクついた。
 
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「ふーふーふー。美味しいけれど、熱いですねー」
 一所懸命、木匙の上のお粥を吹いて冷ましながら、葉月可憐が言った。
「火傷しないように気をつけてくださいねぇ。それにしても美味しいですねぇ。まうまう」
 アリス・テスタインも満足そうだが、ふと、その視線が葉月可憐が横においているタッパーに注がれる。
「ん? どうしたの?」
 アリス・テスタインの視線に気づいて、葉月可憐が訊ねた。
「それは、なんですかぁ?」
「ああ、これは、御主人様へのお土産。てへっ♪」
 いや、てへっどころではない。見るからにお粥の色が違うように見えるのは気のせいであろうか。だいたい、それは本当に七草粥なのだろうか。アリス・テスタインは、その謎粥を渡される人物の無事を祈らずにはいられなかった。
 
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「さあ、早く、また邪魔が入らないうちに食べましょ。食べるのよ!」
「あち、あち、あちちちち。そんなに急がなくても……」
 できたての七草粥を、ミツキ・ソゥ・ハイラックスに無理矢理口元に押しつけられて銭湯摩抱晶女トコモが悲鳴をあげた。はっきり言ってかなり熱い。
「だめよ、早く食べなさい……!」
「つ、司……」
 さすがに、銭湯摩抱晶女トコモが月詠司に救いを求める。
「お熱いですね。ひゅーひゅー」
 抑揚のない声で、月詠司が答えた。
「熱いんだって! くそう、覚えてろよ……。あちちちちち……」
 銭湯摩抱晶女トコモにとっては、さんざんな年明けであった。
 
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「お粥だ……。お餅じゃない、お粥だ……!」
 やっと手に入れた七草粥を前にして、芦原郁乃が感涙に咽んだ。
「他にも、お汁粉やお雑煮もあるみたいです」
「餅はもういい!」
 秋月桃花の言葉に、芦原郁乃がきっぱりと叫んだ。
「お粥も、お餅と同じお米なのに……」
 大差ないのにと、秋月桃花が溜め息をついた。
「それはそれ、これはこれ。いただきまーす」
 言いきると、芦原郁乃は念願の七草粥を堪能していった。
 
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「ぱく。美味しいじゃん」
「ぱくっ。美味しい……です」
 緋王輝夜とネームレス・ミストが、同時に七草粥を口に運んで、その美味しに頬を押さえた。
「エッツェルも食べに来ればよかったんだよ」
「まあ、あの人には……それなりの……んっ? 気のせいでしょうか……。誰かが……そなたの後ろで……お粥を……食べたがっている……ような……」
 変な気配を感じて、ネームレス・ミストが緋王輝夜の背後をじっと凝視した。けれども、何も見えない。
「気のせいにしておいてよ。さあ食べよう」
 適当にごまかすと、緋王輝夜が七草粥を口に運んだ。
 
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「お疲れ様。さあ、これからは俺たちのターンだぜ」
 だいたい七草粥も配り終えて、手がすいた夜月鴉がやっと自分たちの分にありつけた。
「ついに、七草粥初体験なんですね」
 アルティナ・ヴァンスが、目をキラキラさせながら言った。ずっと心待ちにしていたらしい。
「そこまで大げさなことじゃ……」
 さすがに、夜月鴉が苦笑する。
「まあ、まだ後片づけが残っているんですから、さっさと食べてしまいませんとね」
「えっ!?」
 アグリ・アイフェスの言葉に、夜月鴉がそれは何という顔をした。
「あたりまえでしょう。まさか、この膨大な洗い物を布紅様一人に押しつける気じゃないでしょうね」
「そういうわけじゃないが、ちょっと……」
 洗い物は嫌だという、実に男らしい理由で夜月鴉が渋った。
「問答無用。逃げたら酷いですからね」
 今にも逃げだしそうな夜月鴉に、アグリ・アイフェスはきっぱりと釘を刺したのだった。