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リアクション
●大型から小型まで何でもいるの。
沢渡真言(さわたり・まこと)の飼育担当はレッサーワイバーンだ。
「ドラゴン、気になる……」
あまり外に出たがらないグラン・グリモア・アンブロジウス(ぐらんぐりもあ・あんぶろじうす)がそう言ったため、真言はお付き合いしないといけないだろうと考えた。
「幻獣のお世話……上手くできる?」
グランは上目遣いに真言を見た。
「私も手伝うから、一緒にやろう」
真言はグランに優しく言い聞かせる。グランはそれに小さく頷いた。
ドラゴンのどれにでも言えることだが、基本的にドラゴンはプライドが高く気性が荒い生き物だ。
そんなドラゴンだが、グランのペットにはサクソンと名づけられた剣竜の子供がいる。
だからこそ、真言は大丈夫だろうと思っている。
それに大型の幻獣の飼育の経験は一応ある。気性の荒いといわれるワイルドペガサスすら飼っているのだ。
「大きい」
レッサーワイバーンを目の当たりにして、グランは小さく呟いた。
羽ばたきに、真言の服やグランのドラゴンを模したロンパース型の服がばさばさと揺れた。
「図鑑にレッサーワイバーンのこと書いてある?」
「どうだろう? でも、ここまで近寄れたから大分おとなしい子なのかも」
真言はレッサーワイバーンに近寄る。
暴れない。大丈夫なようだ。
「大丈夫そうだね」
グランを安心させるように、真言は笑顔でそういった。
それにグランもこくりと頷くと体を丸めているレッサーワイバーンに近づいて一撫で。
ざらざらとした鱗の感触がグランの手に帰ってくる。とくに暴れる様子もなく、グランの行為をレッサーワイバーンは受け入れている。
「何を食べるかな。お肉が良い……?」
レッサーワイバーンに問いかける。しかし答えは返ってこない。
「それで大丈夫だと思うよ」
真言は飼育員から渡された餌である肉をグランに渡す。
背伸びして、レッサーワイバーンの口元に持っていこうとするが身長が全然足りていない。
真言が抱っこして抱えあげても、ほんの少しだけ足りてないようだ。
先に根負けしたのはレッサーワイバーンのようで、グルルと唸ってグランの手に持つ肉をそっと食べた。
大人しいというよりも、完全に無視というか気にしてなかったというか、そんな感じのレッサーワイバーンを引いたようだった。
でも、肉を食べたことで、関心が芽生えたのかそれから暫くの間、真言とグランとレッサーワイバーンの危険なじゃれ合いが始まるのだった。
○
「よしよし。ヴァンドール、君は今日も美しいな……」
うっとりとララサーズデイ(らら・さーずでい)は自身のワイルドペガサスの世話をしていた。
ボロ取り、寝藁の入れ替え、ブラッシングに翼や蹄の手入れ。ララは慣れた手つきでてきぱきとそれをこなしていく。
行動に一寸の狂いもない。
あらかたの世話が終わり、ララはヴァンドールに手綱と鞍をつけると、
「リリ、私は調教に出るよ。君はどうするんだい?」
馬房の片隅、寝藁置き場ですぅすぅと寝息を立てていたリリ・スノーウォーカー(りり・すのーうぉーかー)にララは声を掛けた。
リリは前日深夜から魔導書の研究をしており徹夜をしていた。
そして、この陽気だ。寝るな、というほうが酷だろう。
「ふぁ、あー……眠っていたか……」
大きく欠伸をしたリリは、
「そうだな、リリは奴のところへ行くとしよう」
「そうか。それでは私は行ってくる」
リリはララを見送り、飼育所の片隅に建てられたログハウスのような小さな小屋へと向かう。
ぎっしりと小型の幻獣が檻の中などに入っている。
そんな片隅に、一抱えもある大きなガラス瓶の中にリリのスカイフィッシュがいた。
今は一緒にいることはできないが、いずれは身に纏い共に戦場へと繰り出すことができるようになると思っている。
「あと少しなのだ。もう少しリリに力が付けば此奴を身に纏う事ができるはずなのだよ」
リリは自分のSPをスカイフィッシュに与えながら、そう呟いた。
○
白銀司(しろがね・つかさ)は他校の授業に興味があり、今回の幻獣の飼育に参加している。パートナーのセアト・ウィンダリア(せあと・うぃんだりあ)と一緒にグリフォンの世話をするようだ。
「あの、グリ、フォン? って子が一番カッコいいなぁ」
「グリフォンねぇ、そいつの世話って結構危ないんじゃ……って!」
セアトのぼやきをよそに、司は一目散にグリフォンへと駆けていく。
「ぐーちゃーん!」
司の安直なネーミングにセアトは頭を抱えた。
「あっ、そこの人ー!」
司は東雲いちる(しののめ・いちる)を呼び止めた。
いちるは、自分のペットの世話をしながら、グリフォンの世話もしているようだった。
「はい、なんでしょう?」
「ぐーちゃんの、お世話の仕方教えてください!」
「ぐ、ぐー?」
司の剣幕にいちるは押される。
「あ、あれです!」
司はグリフォンを指差した。それでいちるは理解したようで、司に微笑みかけた。
「いいですよ」
いちるは、司が他校の生徒だということも同時に理解したようだった。イルミンスールの生徒であれば幻獣の世話の仕方をわざわざワクワクしながら聞いてくる必要は余りないからだ。
そして、いちるは手取り足取り司にグリフォンの世話の仕方を教えた。
「マスターは幻獣と接している時はとても穏やかな顔をされていますね」
いちるを見ていた、ソプラノ・レコーダー(そぷらの・れこーだー)は隣でわたげうさぎをもふもふしているメアリー・グレイ(めありー・ぐれい)に話しかけた。
ソプラノもメアリーと同じように、小さなわたげうさぎを愛おしそうに撫でている。
「やっぱり、小さい子の方が世話しやすいわ。言っておくけど可愛いとかじゃないから」
でもまぁ、と一呼吸おいて、
「ソプラノもいちるのように幻獣と接している姿は一緒みたいよ」
「ワタシもでしょうか」
「なんとなくだけど」
「これが詰まるところの、癒される、という感覚なのでしょうか……」
「さあ?」
メアリーはそう言うと、またわたげうさぎをもふもふしだした。
ソプラノも何か思うところがあるのか、いちるをみたり、わたげうさぎを見ていたりと視線をさまよわせている。
「司、大丈夫かー?」
セアトは危なっかしく世話している司に声を掛けた。
近くにはいちるがいるから、大丈夫だと勝手に思ってはいるが正直なところ心配ではある。
「たぶん大丈夫だと思いますよ」
サラマンダーを肩に乗せて、いちるはセアトに言う。
「私もいつか、あの背中に乗って空を飛んでみたいです」
ぼやくようにいちるは言った。
「試してみれば良いんじゃないのか?」
「それもそうですけれど……ちょっとやってみましょうか」
世話を大体終わらせた司がグリフォンにしがみついて遊んでいるのを見ると、いちるもグリフォンに乗って空を飛べるような気がしてきた。
「あなたの背中に乗せてもらえますか?」
いちるはグリフォンの目を見てそう問うた。
グリフォンがキュイと一鳴きすると、足を折りたたみいちるが乗りやすいようにかがんだ。
「これは、いいのかな?」
「おー、私も乗ってみたーい!」
いちるは少し戸惑いながらも、グリフォンの背中に跨る。司も便乗したようだ。
二人が乗ったのを確認したのだろうか、グリフォンは翼を広げ大空へと飛び出すのだった。
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