校長室
十人十色に百花繚乱、恋の形は千差万別
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第二十四篇:ジェニファ・モルガン×マーク・モルガン 「自分は許婚の代用品なんだろ」 そう言いだした弟――マーク・モルガン(まーく・もるがん)の頬を、ジェニファ・モルガン(じぇにふぁ・もるがん)はつい張ってしまった。 弟――マークは、姉――ジェニファの弟であり続ける事を意識させられているせいか、契約して目覚めてからの二年間、少しも成長しなかった。 しかし、サッカー部の合宿の最中に初めて身長が2cm伸びて、帰って姉に喜んで報告しようとした矢先のことだった。 「制服が着崩れてる、ちゃんと着なさい」 ジェニファはマークの話を聞かず、頭ごなしにぴしゃりと言い放ったのだ。 制服が着崩れたのは、身長が伸びたせいだ。しかし、それも聞いてもらえるような雰囲気ではなかった。 (一人前の男、姉さん……ジェニファを護れる男になりたいのに) マークは思う。 (姉さんはそんな事を望んでない、姉さんにとってマークはいつまでも手間のかかる子供でいて欲しいんだね) そして、怖い考えに至ってしまったマークは、慌ててそれを振り払おうとするが、その怖い考えはマークの心にまとわりつく。 (きっと、これ以上成長したら捨てられちゃうんだ……) そして、マークは飛び出した。 そこに至って、ジェニファは自分のしてしまったことに気付く。 最初は言われた通りだったかもしれない罪悪感と、今は違うという事を判って貰えてない憤りに耐えながら、ジェニファはマークのことを探し回った。 そして、講堂で彼女はマークを見つけた。ただし、そこにいたのは水晶化した多数のマークとパッフェルの姿だった。 この奇妙な現象についてジェニファがたずねると、パッフェルはマークに頼まれたと言った。 「元に戻して」 そう頼み込むジェニファに、パッフェルは静かに告げる。 ――彼を元に戻すには、微妙に違う無数の像の中から本物を見つければ良い、と。 (神様、ちゃんとマークの事を見るからお力を……) 胸中にそう呟き、ジェニファは目を凝らす。そして、ジェニファは無数の像の中から、躊躇なく一つを選び出した。 間違える筈がない。なぜなら、マークはとても大切な相手だから。 そして、パッフェルはそれが正解であると告げ、マークを元に戻す。 「パッフェル様、ご迷惑をおかけして、すみませんでした」 ジェニファと仲直りをしたマークは、パッフェルに謝る。すると彼女は、姉と仲良くするようにとマークへ告げ、静かに去っていったのだった。