リアクション
第三十一篇:セレンフィリティ・シャーレット×セレアナ・ミアキス
「今度こそ大丈夫って言ったじゃない」
自宅であるワンルーム。一人暮らしの部屋でセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は叩きつけるように受話器を置いた。
「ごめん、また緊急任務が入ったの……だから――」
電話を切る寸前、恋人――セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)の声が受話器から聞こえていた。
乱暴に受話器を置いたセレンフィリティは、ベッドに飛び込むように寝そべると、そのままフテ寝を決め込もうとする。
デートの約束が中止になるのは、いつものことだった。
互いに超多忙なシャンバラのテクノクラート。
その任務ゆえに常に忙殺され、二人ともパラミタ中を駆け回っていた。
今回も多忙の中、何とか都合をつけてのデートだったのだが、それも結局中止になってしまった。
セレンフィリティが本当にフテ寝をしようとした時だった。メール受信を告げる音がPCから響く。
不機嫌な顔でPCに近寄り、メールボックスを開いたセレンフィリティは次の瞬間、表情をまるで別人のように引き締める。
メールの内容――それは、上司から下った新たな任務。
彼女はすぐに装備を整えると、新たな任務先であるヴァイシャリーへと向かった。
そして、任務を終えた彼女は、帰還するまでの間、ヴァイシャリーの街並みを散策していた。
「結局、あたしも緊急任務が入ったんだし、もうちょっと遅かったら、あたしが謝る方だったのかもね」
ふと、そんなことを呟きながら、ショーウィンドーを覗くセレンフィリティ。
「あ〜あ、今頃どうしてるかな、セレアナ」
そう呟いた時だった。ショーウィンドーに映る背後の景色の中に、よく知る顔を見つけたセレンフィリティは弾かれたように背後を振り返る。
「セレアナ! どうして……ここに……!?」
するとよく知る顔――セレアナははにかんだように笑い、セレンフィリティに告げる。
「言ってなかったかしら? 私の任務先も、ヴァイシャリーだったの」
一瞬、二人とも信じられない思いだったが、次の瞬間にはどちらともなく近づいて互いに抱擁していた。
恋人の胸に顔をうずめてただ泣きじゃくるセレンフィリティの髪を優しく撫でてやりながら、セレアナは囁いた。
「少し遅れたけど……デートの続き、まだ間に合うわよ」