リアクション
新しき年、ツァンダ 「さあ、かまくら作るぞー!! みんな、がんばろうね」 芦原 郁乃(あはら・いくの)が、気勢をあげた。 「できあがれば、桃花のお餅が待ってるよぉ〜!!」 「皆様、怪我に気をつけましょうね」 芦原郁乃のハッパに、秋月 桃花(あきづき・とうか)がつけ加えた。 「えーっと、かまくらってなんですかあ?」 家の前に積もった雪を、一所懸命スコップで集める芦原郁乃を見ながら荀 灌(じゅん・かん)が訊ねた。ほうっと、両手に息を吹きかけてこしこしする。 「かまくらというのは、雪で作ったお家のことよ」 秋月桃花が説明する。 「そう、そして、その雪の家の中には、桃花のお餅が私たちを待っているのだ! いえーい!」 芦原郁乃が決めつけた。 「本当?」 「ええ、特別にお汁粉もつけちゃいましよう」 確認する荀灌に、秋月桃花が答えた。 「やるっ! やってやるです」 そう叫ぶなり、神速で雪を積みあげている芦原郁乃の横で、荀灌が実力を行使して手伝っていった。 あっという間に雪が集められて小山となる。はっきり言って、そばに立っている家と同じぐらいの大きさだ。 「このくらいでいいですかあ?」 「ええっと、ちょっと大きい……うん、このくらいないとね。ははははは……」 ちょっと巨大になってしまったが、まあいいだろう。 「てててててててぃっ!」 破壊しないように注意しながら、芦原郁乃が拳で雪山を固めていく。さすがはグラップラー、巨大だったかまくらが、かなり大きい程度まで固められた。 「ああっ、いろいろと間取りとか、4LDKぐらいを予定していたのに……」 ちょっと残念そうに、荀灌が言う。 「本当は、テントぐらいの大きさなんですよ」 秋月桃花が、そっと荀灌の耳許でささやいた。 「さあ、ここからが本番だよ」 固まった雪山を崩さないように、芦原郁乃が内側をくりぬき始めた。その間に、秋月桃花が七輪やお持ちやお汁粉の用意をする。 「ワンルームですかあ?」 「そういうしきたりなんだよ」 三人が充分には入れる穴を作った芦原郁乃が荀灌に答える。 「かんせーい。じゃ、スコップかたしてくるね」 「はい。中を私がやっておきますね」 道具を片づけに行く芦原郁乃を見送って、秋月桃花が七輪などをかまくらの中へ運んでいった。 「お餅お餅〜♪」 「ふにゃあぁ!」 意気揚々と芦原郁乃が戻ってくると、突然かまくらの中から変な悲鳴があがった。 「どうしたの。桃花、大丈夫」 「心配ないです。大丈夫です」 あわててかまくらの中に駆けつけると、秋月桃花が荀灌に胸を揉み揉みされていた。 「桃花お姉ちゃんのお餅です♪」 思ったよりもかまくらの中は暖かいと、荀灌は御満悦だ。 「ええっと、お餅違いなんだけど。いいのかな、お汁粉食べちゃうよ」 「それはダメです!」 芦原郁乃が言うと、荀灌があわてて秋月桃花から離れた。開放された秋月桃花がほっと安堵の息をつく。 「それじゃ、お汁粉を食べましょうね」 暖かいかまくらの中で三人は仲良く、秋月桃花の作ったお汁粉を食べ始めた。 |
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