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パラミタ・ビューティー・コンテスト2

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パラミタ・ビューティー・コンテスト2

リアクション

 
 

楽屋裏

 
 
 ここ、パラミタビューティーコンテストの会場裏では、出場者が準備にあわただしく追われていた。
「よし、頑張れ。無理して背伸びせず、何よりも自分らしさを大切にすれば勝機はあるであります。あの技、あの技さえうまく実行できれば、敵などないのであります」
「は、はい……」
 更衣室の中で着替えているコーディリア・ブラウン(こーでぃりあ・ぶらうん)が、そばで力を込めて応援している大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)に答えた。
 薄いカーテンには、中で着替えているコーディリア・ブラウンのシルエットが、うすぼんやりと映っていた。
 外の大洞剛太郎からの励ましの言葉を聞きつつも、ショーツの上にオーバーパンツとしてレース飾りのついたズロースを穿いていく。用意していたゴスロリ衣装は、締まるところは身体にぴちぴちで、袖やスカートは丸く広がっている。
「何も特別なことはない。前回と同じようにやればいいのであります。客席から応援しているでありますよ」
 更衣室から出て来たコーディリア・ブラウンの肩を軽く掴んで励ますと、大洞剛太郎は観客席の方へとむかった。
 
    ★    ★    ★
 
「ちゃら〜ん、ちゃらちゃら、ちゃっちゃっちゃっ♪」
「もう、ベアったら、ちゃらちゃらしていないで、真面目に手伝ってください!」
「おうよ、任せときって」
 ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)に怒られて、鼻歌を歌いつつも雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)が力を込めてクッキー生地を練っていった。パフォーマンスで使用するクッキーの下準備だ。なにしろ、時間がないので、段階ごとにできあがった物を見せていく予定なので、完成品の数倍の材料を準備しなければならない。
「はい、冷やして。はい、焼いて!」
「おらあ、いくぜえ、くまままままままままままままままままままま……」
 ソア・ウェンボリスの指示に、雪国ベアが鳳凰の拳を応用して、クッキー生地に先制攻撃を仕掛けた。
 どんどんと、クッキーができあがっていく。
「なあに、むこうはずいぶんとうるさいよね……」
 なんだか寝起きという感じで、髪の毛もぼさぼさなミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)が、雪国ベアたちの方を見て、迷惑そうに言った。
 いしゅたんことイシュタン・ルンクァークォン(いしゅたん・るんかーこん)に朝早くから連れ出されたと思ったら、なぜかビューティーコンテストの楽屋に立っていた。どうしてこうなった?
「美人コンテストぉ!? 仕方ないなあ。まあ、出るんだったら、それなりにはできると思うけどお……」
 アクビまじりに、トレーナーの下から手を突っ込んで脇腹をポリポリと掻きながら、ミルディア・ディスティンが言った。
「えっとお、こんなのですけれど、お願いできますよねえ?」
「あっ、はいはい。なんとかしますねえ」
 イシュタン・ルンクァークォンに頼まれて、メイクさんのバイトに来ていた大谷文美がちょっと引きつりながらも、大丈夫と無理矢理微笑んだ。
 まだぼーっとしているミルディア・ディスティンを鏡の前の椅子に座らせると、赤味を帯びた長い髪をブラシで梳っていく。量の多い髪の毛が、ぼさぼさに跳ね上がっている様はちょっと壮絶だ。それを丁寧に梳いていくと、だんだんと纏まりだして艶やかになってきた。ファウンデーションを薄く顔に塗った後に、少しだけ眉とアイラインを引いて目をパッチリとさせる。透明な薄桃色のリップで唇に艶をだして、最後にハイライトを入れて鼻筋を通らせる。
「こんな感じでいかがですかあ」
「うんうん。じゃあ、後は、この特製の瀟洒なメイド服を着せてっと……」
 イシュタン・ルンクァークォンが取り出した何やら特注らしいメイド服を、大谷文美と一緒にミルディア・ディスティンに着せていく。
「ふう。なんだか生まれ変わった気分だよね。よおっしっ、やるぞー!」
 おめかしが終わったミルディア・ディスティンが、やるぞーっと初めて気合いを込めた。