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狂信者と人質と誇り高きテンプルナイツ

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狂信者と人質と誇り高きテンプルナイツ

リアクション

「女王を連れて来る以外の交渉は応じないといっているんだ」
「まあ落ち着けよ。僕たちは武器を捨ててまで望んでるんだ。少しは聞いてくれたって良いだろ?」
 トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)は周りには木々しか無い中、代表として人質の解放を交渉しようとしているところだった。
 男の後ろには遊歩道が広がっており、その先に見える広場に人質が集められているらしく、遊歩道はテロリスト達が何人か警戒しているようだった。。 
「ところで、おまえ達はなぜ世界統一国家神をそんなに大切にしてるんだ?」
「ふっ、それこそ愚問だ。世界統一国家神様こそが世界をいや我々を救ってくれるからだ!!」
 男は鼻息を荒くしながらガッツポーズを取った。
 トマスは思わず苦笑するが、何かに気づくと素の表情に戻った。
「っと、ちょっとトイレに行きたくなった」
「おい! 逃がすとでも思ったか?」
「あ、続きなら――」
「私達がお相手しよう!」
「ま、マリア様!?」
 トマスの後ろから魯粛 子敬(ろしゅく・しけい)が現れる。しかもその横にはマリアが居たものだから、男は大いに驚いた。
 思わず会釈をしてしまうほどだった。
「そんなに畏まらないでください。それよりも」
 マリアは言いかけた言葉を飲み込み、子敬の顔を見た。
 子敬は頷くとその続きをしゃべり始めた。
「世界統一国家神は本当にパラミタを救ってくれるんですかね?」

 子敬とマリアがテロリストの男を相手してる間にトマスは、テロリスト達からは見えない茂みへと向かった。
「お、やっと来たぜ!」
 待ちくたびれたようにカル・カルカー(かる・かるかー)をはじめとしたパートナー達は地面から腰を上げた。
 他にも葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)テノーリオ・メイベア(てのーりお・めいべあ)が各自木にのたれかかっていた。
「どうやら、かなり困難を極めそうだ」
 トマスはポケットから銃型HCを取り出すと、ミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)から届いた情報を読み上げた。
 情報は、テロリストの位置と人数を正確に記載したものだった。
「遊歩道に23人、人質の取られている公園に4人か……余裕だな?」
 夏侯 惇(かこう・とん)両腕を組みながら言った。
 トマスは首を横に振った。
「いいや、このまま正面衝突はまずい。遊歩道から人質の居る場所にたどり着くまでの間に人質に手を出されれば終わりだ」
「そこで俺たちの出番って訳だ」
 テノーリオが肩にカルって居たスナイパーライフルを前につきだす。
 その横で、吹雪も同じようにスナイパーライフルを背負っていた。
「すでに、人質達がとらわれている場所は見つけておいたのであります」
「よし、吹雪達とテノーリオ、狙撃を頼む。人質付近のテロリストを排除の後遊歩道だ」
「了解であります!」
「ギリギリの合図頼んだぜ!!」
 テノーリオの言葉に、トマスは深く頷いた。
「俺はどうすればいいんだ?」
「カルは人質に紛れ込んでおいてくれ。遊歩道と公園側から挟み込むようにテロリスト達を倒す」
 カル達も的確にトマスは配置していく。かくして、全員の配置は決まった。
 トマス達の作戦は始まったのだった。

「お待たせした」
 トマスは平然を装いながら、先ほどまでテロリストと交渉していた場所まで戻った。
「長ぇトイレだな……何か企んでんじゃねぇだろうな!?」
「ちょっと立て込んでしまってな」
 トマスはそう弁解しながら、右手を上に上げた。

「合図よっ!!」
 あたり一体を見渡せる監視塔の上で、コルセアは強く言った。
「……」
 吹雪は頷くことも微動だもせず、スコープをのぞき込んだまま、息を整えた。
 スコープのブレが収まると同時に吹雪は引き金を素早く引いた。
 同時に周辺に、乾いた銃声と薬莢の臭いが漂った。
「ターゲットに……しかも足にヒットしたわ!! あと3人!」
 コルセアが双眼鏡をのぞき込みながら状況を報告する。
 すぐに2人は次のターゲットを狙おうとする。だがテノーリオは舌打ちをうった。
「ちっ!! だめだ! のこり3人、全員木々にうまく隠れやがった!」
「むむ……出てくるのを待つしかない……」
 テノーリオと吹雪は、もどかしさと緊張に襲われながら、スコープを除き続ける。

「な、何の音だったんですか先ほどのは」
 縄でぐるぐるまきにしたテロリストを前にマリアがトマスと子敬い聞く。
 銃声に合わせて、トマスがテロリストの武器を取り上げ、急所を子敬が殴るというコンボが見事に決まった結果だった。
「人質のそばに居るテロリスト達を狙撃させたのです」
「まったく、私は死ぬのはごめんですよ。あなた方と違って殉教者になっていいほどの覚悟はないんです、ホント」
「まあ、そう言うな」
 子敬の言葉に、トマスは少し笑みを浮かべながらつついた。
 しかし、マリアは少し寂しそうな表情を浮かべていた。
「……また……死人が……」
「誰も死んでないわ、トマスの信念は『不殺』……さあ、どこまで通せるかしらね」
 ミカエラは上空から降り立つと、マリアに向かって軽く会釈をする。
「さて、ミカエラも戻ってきた、先へ進むぞ!!」
 トマス達は遊歩道へと足を進めた。

「きゃあああああっ!!」
「なっ、何!?」
 銃声と共に倒れるテロリストに、テロリスト達自身はもちろん人質達も混乱と悲鳴を上げる。
 ベルのようなけたたましい音が公園に響いていた。
 思わずそれに気を取られていた男が1人、その場で足に手を当ててうめいていた。
「ちっ! 狙撃か! 隠れろっ!」
 男達が口々に叫んだ。
「さすがにうまくはいかねぇなっ」
 木々に光学迷彩で姿を隠しながら、ドリル・ホール(どりる・ほーる)は1人でつぶやいた。
 ベルの音は、ドリルがあらかじめ仕掛けておいた物をサイコキネシスで鳴らした物だった。

「始まったみたいです」
「ひとまず、みんなを落ち着かせねえと!」
「おお、このままだと人質が狙撃されかねないからな」
 ジョン・オーク(じょん・おーく)とカル、そして惇は立ち上がり声を低めに上げた。
「やい、おちつけー! 安心しろ、今のはみんなを助けるための銃声だ!」
「全員、おちついて脱出の準備を!」
 カル達は脱出するために、人質達の手に巻かれたロープをほどいていく。
「で、でも怖い人たちがまだ外に……」
「さあさあ、テロリスト達に恐れることもありませんよ。だってあの人達、日常はきっと女房にしかられて、尻に叱られてばかりいるらしいですよ?」
「そんな人を怖がる必要ありませんよ、そうだ。ここは、あなたが女房になってテロリストなんか尻に敷いてみたらどうです?」
 怖がる女性達にオークはそんなことを言いながら、人質達の心境を緩やかにしていく。
「さて……あとは、狙撃できる場所に引っ張りだすだけか」
 カルは息を整えて、テロリスト達をおびき寄せるために飛び出す準備を始めたのだった。

「「うわああああああっ!!」」
 そのころ遊歩道では、テロリストたちが悲鳴を上げていた。
 悲鳴をあげる原因となってるのは、トマス達の攻撃では無く、すべてトラップだった。
「にひひ、簡単にひっかかりやがったのだよ」
「那由他ちゃんのトラップは何人たりとも逃がさないの」
「いやいや、エクゼの誘導とビニールシートがあったから出来たわざなのだよ」
 阿頼耶 那由他(あらや・なゆた)キスクール・ドット・エクゼ(きすくーる・どっとえくぜ)は上空に上がったテロリストを見上げて、いたずらの勝利を喜んでいた。
 といっても、見えるのは何かが大きな物が包まれた大きなビニールシート。それが蔓によって木からぶら下げられているようにしか見えない。
 那由他は蔓を切り落とすと、乱暴にビニールシートを地面に落とした。
「にひひ、デジカメで撮ってネットにアップしてやるのだよ!」
「那由他ちゃんせっかくなら顔に落書きするのも、ありだとおもうの」
 2人はそんな事をいいながら、戦利品を楽しんでいた。
 契約者である斎賀 昌毅(さいが・まさき)が必死で、2人を探していることなど知らずに。

「ったく……こんなところにも機雷があるぜ、どうなってんだこのグリーンパークってやつは」
 狼が、木々の生い茂る道無き道をゆっくりと歩いていた。
 というのも、狼の正体は昌毅である。
 テロリストに見つからないためにもフェンリルハイド(狼の毛皮)をかぶり、歩き回っているのだった。
「お、開けてきた!」
 木々の向こう側には開けた土地のようなものが見えた。
 ここまで見つからないように自然の中を歩いてきた昌毅にとって、さっさと木々の中から抜け出したかった……が
「な……おっ」
「お?」
 木に隠れた男が居た。

「狼だぁああああああああああああああっ!!!」
「お、おいまて! 俺は人間だ!」
 男の悲鳴のような声が響く。
 なんと昌毅の出た場所は、まさにカル達の居る公園だった。
「お〜いこっちだぞ!」
「な、なんだあ? オオカミ? って、おい。おまえ何している!!」
 別の男が人質の中から走り出したカルに気がつき追いかける。
 しかし、この陽動が狙撃組の吹雪とテノーリオに好機を与えたのだった。
 乾いた銃声と共に、テロリストが1人、また1人と足に手を当てて倒れていく。
「ぐあっ……お、狼どころじゃなかったんだ俺たちは」
「はあ?」
 昌毅の前に突然しゃがみ込み、足から血を流すテロリストは、うなるように言った。
 昌毅は何のことかわからないと言うように、首をひねった。
「お、オオカミ!」
「とりあえずこのひもで、狼をぐるぐる巻きにするか!?」
「まてまて、おまえ食われちまうぜっ? 野生の狼はこぇえんだからな!」
 慌てるカルをよそに惇は楽しそうにロープを取り出し、捕まえようとする。
 ドリルはジト目で狼と惇を見比べながら、惇に注意したのだった。

「……あの狼も撃って良いのでありますか?」
「でも、狼はさすがに撃ったらかわいそうだわ」
「だが、このままだと人質が今度は狼に食われるってやばい展開になるぞ?」
 狙撃組である3人は、イレギュラーな状況に頭を悩ませていた。
 自然の動物(に見える)狼を撃っても良いのかどうか。
「では、私にお任せであります!」
 意気揚々に、狩りでも始めるかのように楽しそうに吹雪はスナイパーライフルを再び構えた。
 そこで狼の異変に真っ先に気づいたのはコルセアだった。
「まった!! あの狼、人間の顔をしてるわ!」
「人狼でありますか……なおさら、撃たなければ!」
「じゃなくて! 人間よあれ!!」
 コルセアの言葉に、吹雪はトリガーに掛けかけていた手を離し、スコープをのぞき込んだ。
 その狼は、完全に抜け殻となって地面に落ちており。その傍らには昌毅が立っていた。
「……任務完了であります」
 3人は一気に冷めた表情で、互いの顔を見合わせたのだった。

「あ、昌毅さん」
「みーっつけなのだ」
「見つけたのはどっちだ! どこをほっつき歩いてたんだよ!」
 マリアをはじめとしトマス達が公園にたどり着く。
 真っ先に那由他とキスクールは昌毅の元へ駆け寄ったのだった。
「ったく、マリアさんに迷惑かけなかっただろうな!」
「いろんな人をトラップに引っかけてやったのだ! 昌毅も見るか?」
 那由他はそう言いながら、デジカメの写真を昌毅に見せつける。
 昌毅は深くため息をついた。
「ったく、楽しんでやがる。こっちがどんだけ心配したと――」
 マリアと目が合うと、昌毅はそちらを向いた。
「すみません、無理言って密かに入れてもらって」
「あ、その子達が探し人だったんですね……無事で良かったです」
 パークで居なくなったパートナー達を探すため、昌毅はマリアに無理を言って入れてもらっていた。
 そのことを、昌毅は何度も礼を言うのだった。
「その子達とトマスさん方のおかげでここまでこれたので、お互い様ですよ」
 マリアはにこやかにそう言うと、礼をしてどこかへいってしまったのだった。