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リアクション
「まつのだ、こちらは罠が張られておる」
2階の廊下を進んでいると、時平が突然サオリと薫達の足を止めた。
時平はサオリ達の前にでると、突然しゃがみ込み壁側を叩き始める。
「……赤外線が仕掛けられておる……周到ですな」
慣れた手つきで時平は仕掛けを解除すると先へ進み始めた。
「さすがだ……あんなに簡単に仕掛けを解除してしまうって」
「……やいっ、神楽。てめーのその姿、ぜってぇ神様だなんて信じねぇからな、悪魔め。もしも薫に手を出したら俺が許さねぇ!」
薫の後ろを歩いていた、天王 神楽(てんおう・かぐら)が感心した声を上げていると、八雲 尊(やぐも・たける)は眉間にしわをよせ、怒った。
(……俺が悪魔だって? 薫を助けた神様を悪魔なんて失礼な奴だ……)
神楽はふと立ち止まり、廊下にかけられた全身を写すのにちょうどよい大きさの鏡を眺めた。
途端に神楽の心に、渦巻くような不安が押し寄せてくる。
(……何で俺はこんなに醜い姿をしているんだ……)
「神楽〜どうしたのだ?」
薫が神楽を呼ぶ声がし、そちらを振り向いた。
そして、まさに薫がテロリストに襲われるのを見たのだった。
「このおおおおおっ!!」
上から振り下ろされる巨大な混紡を尊は爆炎波ではじき返した。
「っとっと、小さいくせにやるなあ」
天井までありそうな巨体を、軽やかにバックステップで男は避けた。
薫を始めその場の全員が、武器を構える。
「ここまで着たと言うことは1階の奴らはやられたのかな」
「違うのだ! 孝高達が戦ってるのだ!!」
薫は歯をくいしめるように叫んだ。
薫の後ろから神威の矢が飛ぶ。
サオリの引いたその矢は見事に、巨体に当たるが男は悲鳴をあげるどころか平然としていた。
「どうして、当たらないのですぅ!?」
「そりゃあ、お嬢ちゃん。我は精神……苦痛というものを感じないからだ」
「その巨体で……動きも素早い……よほど、修練か何かを積んだんだな」
薫達の前で、突然巨体は血吹雪をあげた。
「ぐう……おまえ、いつからそこに」
そこに立っていたのは、レギオンだった。
思わぬ後ろからの攻撃に巨体は避ける先を無くしていた。
「そんなことはどうでも良いだろ、いい加減下らん奴らの相手をするのは飽きたんだ」
「いいのか、このまま我を切り捨てればその間に、他の奴らが人質を殺すぞ!」
「脅しか? 少しの犠牲は仕方ないと――」
「だめなのだ!!」
レギオンの捨てるような冷たい言葉に、薫は強く反発した。
レギオンは薫を一瞥すると、廊下の先……所長室を指さした。
「行け、ここは俺が相手してやる」
「っと、そうはいかねえ!」
男はポケットから拳銃を取り出す。
レギオンは素早くそれを刀で切り落とそうとしたが、銃声の方が早く鳴り響いた。
「うおおおおおおおおおっ!!」
所長室の手前にある大きな扉から次々と、テロリスト達があふれるように廊下へと飛び出してきた。
全員、軍服をきてるいるのを見ると、どうやら全員、巨体男の部下のようだった。
「ちょっと、痛いけど、ごめんなさいなのだ!」
薫はサイドワインダーで襲いかかってくるテロリスト達の足下を狙っては動けないようにしていく。
サオリもそれに加勢するが、なかなか前に進めずに居た。
「うわああああああああああっ! 蛇だ!」
突然、所長室の方から声が響いた。
「な、何なのだ?」
「お助けに来ました!」
手にはハンドガンを二丁持ったソニアが、次々と薫達と同じように手足を狙って、動けないようにしていく。
その後ろからは明人が同じようにサイドワインダーで足下を狙っていく。
「鬼だあああああっ!」
「こんなのかなうわああああああああああああああっっ」
テロリスト達は出てきた部屋に戻ろうと慌てるが、そこからも悲鳴が上がる。
そちらの部屋では角を生やし、巨大化した唯識と、やはり同じように角を生やし仰々しい表情をした緋布斗が待っていた。
「さあ、行くなら今です!」
明人がそう言うと、薫とサオリは所長室へ駆け込んだ。
「――大丈夫です!?」
突入したサオリ達は、目の前に参上に驚いた。
そこには、気絶したテロリストの男。そしてボロボロになったセラフィーと美紀が同じく気絶して横たわっていた。
「どうやら俺たちの負けのようだ!」
「何を――」
孝高と戦っていた、ボロボロの男はそう言うと、手に持っていた軍剣をゆっくりと腰に戻した。
たばこをくわえた男も同じように、もう戦う意思はないかのように手をポケットに収める。
「人質を助けられちまった撤退するぞ」
二階からどたどたと大きな音を立てて、巨体の男が降りてくるとボロボロの男達は軽く頷き、孝高の前を、玄関の外へと歩いて行こうとする。
「と、通しません!」
マリアが慌てて銃を構えて止めようとするも、あっけなくそれを無視されそのまま通り過ぎてしまった。
「な……なんなんですかあの人達……グランツ教の信者でもなさそうですし……」
マリアに一つの疑問を残しながら、あの男達は無言で去ってしまったのだった。
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