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狂信者と人質と誇り高きテンプルナイツ

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狂信者と人質と誇り高きテンプルナイツ

リアクション

「お願いです、これ以上誰も負傷者をだしたくないのです!!」
「マリア様といえど、こちらは譲歩できません!」
 小さなログハウスの前で、マリアはやはり30人近くのテロリスト達と交渉を試みていた。
 が、その答えもやはり同じもので、女王アイシャを引き渡さない限りは人質を渡さないという答えだった。

「ふん……口ではテロを否定しながらも、実はここまであらすじ通りなんじゃないか?」
 人質の中で青葉 旭(あおば・あきら)は軽蔑するようにつぶやく。
 その言葉に他の人質たちも、不安と困惑に言い争いをはじめ出した。
「おい、もしもそうなら自力で脱出する他ないのでは?」
「もう、助けなんて信じられるか! 俺は今すぐここを出る!」
「うるさいっ!!」
 口々に騒ぎ始める人質達に、人質を監視していた男が手に持っていたバッドを床にたたきつけた。
 突然の大きな音に、あたりは緊迫と静けさに襲われる。
「おい、アイシャ女王がたかが数千人程度の人質で動かせるとでもおもったのか?」
「なぁあにぃ?」
 苛立ちを隠せず、男はさらにバッドを床に叩きつけた。
「ちょっと痛い目にあってもらおうじゃねえかっ!!」
 男は旭の頭上をめがけてバッドを振り下ろそうとする。
 しかし、そのバッドはまるで旭の頭に反発するように、空を舞った。
「なっ、なんだ!?」
「だからいったのにぃ〜旭くんのばかぁ!」
 声の主、山野 にゃん子(やまの・にゃんこ)が光学迷彩を解いて現れると、バッドを拾い上げた。
 旭は鼻で笑うと、そのバッドをにゃん子から受け取る。
「人質に手をだすなんてな、うまく進まないから八つ当たりでもするつもりだったか」
「くっ……敵襲!!」
 床に仰向けの状態で男が、叫ぶと複数の足音と共に、ログハウスの扉は開かれた。
「何事だっ!! なっ、おまえ達いつの間に!!」

「……やっぱり、通信妨害されてしまってるか」
 装輪装甲通信車の中に、耳障りなノイズが響く。
 柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)は装輪装甲通信車の中で、リーダーの位置を突き止めるため始終通信を傍受しようと試みるが何者かの通信妨害で情報は得られずにいた。
 そんな中で恭也はログハウスの方が騒がしいことに気がつくと、運転席に座ったのだった。
「さぁて、そろそろ動きますかねぇ」
 運転席のスロットルレバーをあげると、装輪装甲通信車は勢いよく茂みから表へと飛び出た。。
「うわああああああああっ、装甲車が突っ込んでくるぞ!!」
「なんで、こんなところに装甲車が!?」
 テロリスト達が口々に叫びながら、装甲車から逃げ回る。
「はーはっはっは、逃げろー逃げろー」
 恭也は愉快に笑いながらハンドルを右へ、左へと切り、テロリスト達を追いかける。

「マリアさんはこちらへ!」
 思わぬ装輪装甲通信車の乱入に慌ててリア・レオニス(りあ・れおにす)はマリアを後ろへと連れ下がる。
「何が起きているんでしょうか」
「わからないけど……」
「人質を救い出すなら今だよね」
 リアの横から清泉 北都(いずみ・ほくと)が明るい声で言った。
 まさに人質を助けるためのタイミングを疑ってた2人にとってはちょうどよいハプニングだった。


「今だ!」
 装輪装甲通信車が中央に止まる。
 ログハウスまで約10メートル!
 距離を確認した北都とリアは同時に走り出した。
「逃がすかっ!!」
「させませんよ!」
 2人に気がついたテロリストの男が、ボーガンを北都に向ける。
 しかし、そのボーガンとテロリストは、突然オレンジ色の光と激しい熱に包まれた。
 上空にはレッサーワイバーンに乗ったクナイ・アヤシ(くない・あやし)が自由に空をかけていた。
 振ってきた炎はレッサーワイバーンによるものだった。
「熱っっ!!! あちちちっ!?」
「上だっ、撃て撃てっ!!」
「北都、今のうちに!!」
「外は頼んだよ!」
 残ったテロリスト達が、クナイとレッサーワイバーンに向けて、マシンガンを連射し始める。
 クナイはレッサーワイバーンを操り、不規則に上空をくるくると回って避けた。
「な、なんだおまえは!」
「名乗る必要も無い、時間が無いからな」
 恭也は装輪装甲通信車から降りると、次々とテロリスト達をマシンガンで倒していく。
「ぐっ……あ、悪魔かよ」
 迷いもブレも無い三点バーストに、思わず倒れた男はつぶやいた。
 次第にクナイを狙う銃声は減っていき、0となった。

「これは……すごいことになってるねぇ」
 ログハウスに入ると、その光景に北都はぽつりとつぶやいた。
 目の前には、気絶したテロリスト達がばたばたと乱雑に床に転がっていた。
 しかし、リアと北都が驚いたのはその光景よりも旭の姿に驚いた。
「その怪我ひどいねぇ」
「まあ、これでもかと奮闘したからな」
「もー、ワタシが『毒虫の群れ』を呼ばなければもっとひどい目に遭ってたにゃ」
 にゃん子があきれるように旭の横でため息をついた。
「とりあえず、その怪我直しますねぇ」
 北都が「命のうねり」を使って旭の怪我を治していく。
 旭はマリアの存在に気がつくと、睨み付けた。
「あんたが、グランツ教の幹部か」
「……っと、そこに誰か隠れているね?」
 北都は突然、「命のうねり」をやめるとログハウスの倉庫部屋を見た。
「ばれたか……でも!! 一歩でも動けば人質を撃つぞ!!」
 倉庫からはライフル銃を構えた男が飛び出してくる。
 安堵の空気がながれていた人質たちに、一転して一気に緊迫した空気に包まれた。
 途端、部屋は吹雪によって真っ白になり、人質達は悲鳴をあげるなどして混乱に包まれた。
「みんな、落ち着いて! この吹雪は僕がおこしたものだから!」
 北都が叫ぶように声を上げる。
 吹雪は、「ホワイトアウト」によって起こされた吹雪だった。
「な、うごけねえ!!」
「今のうちに逃げましょう!! 皆さんを外まで「フラワシ」が誘導します!」
 視界が全く奪われるなか、テロリストの足は凍り付く。
 リアはその間、フラワシを使い人質達を外まで誘導していった。

「無事に終わりましたね」
「はい、よかったですたいした怪我人が無くて」
 ログハウスの入り口から、救出されていく人質を眺めながらマリアとリアは一息ついていた。
「ところで、統一国家神はどんな人?」
「……アルティメットクィーン……あの方は神々しく美しいお方です」
「それは見てみたいな……しかし、アイシャだって美しいひとだよ。そうだ、アイシャが祈祷を終えたら会ってほしい。そうしたら、この国の女神はアイシャ以外に無いと分かって頂けると思う」
 リアはマリアに穏やかな口調で頼むように言った。
 しかし、マリアは目を伏せ考え込むように少しの間黙りこんでしまった。
 突然マリアは勢いよく、深く頭を下げた。
「ごめんなさい……それは難しいかもしれません……私はグランツ教の人間ですから。でも……」
 マリアは顔を上げると、優しい笑みを浮かべていた。
「会えることがあれば、是非話をしてみたいです……」