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【特別シナリオ】あの人と過ごす日

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【特別シナリオ】あの人と過ごす日
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リアクション

 
『のんびりとしたお茶会』

「今日のお茶会に誘ってくれてありがとう、優、零。
 この子があなた達の子供ね?」
 神崎 優(かんざき・ゆう)神崎 零(かんざき・れい)の出迎えを受けた魔神 ロノウェ(まじん・ろのうぇ)が、零に抱かれる神崎 紫苑(かんざき・しおん)に微笑む。だぁ、だぁと声をあげる紫苑の注目はやはりというか、ロノウェの頭の角に向けられていた。
「紫苑、ロノウェさんの角は大事なものだから、触ってはダメよ」
 零が言い聞かせたところで、紫苑の好奇心が収まるはずもなかった。ジタバタと手足をバタつかせ、うー、うーと不満を露わにし始めたのを見て、ロノウェがスッ、と身を寄せ、紫苑が角を触れるようにしてやる。
「だぁ♪」
 ぺちぺち、とロノウェの角を触る紫苑は、すっかりご機嫌だった。
「す、すみませんロノウェさん」
「いいのよ、子供ってそういうものでしょ? パイモン様も同じだったんだから」
「……そうか、考えてみればそうなのか。だとしても想像がつかないな……」
 ロノウェの言葉に、優と零は魔神の中でパイモンが最も若輩者であるという事実を思い出す。そうだとしても一部の者以外に、パイモンの幼少期を想像するのは難しかった。
「まあ、私も実際に見たことは無いのよ。あの方が話してくれたのを覚えていただけだから」
 そう言って、ロノウェが零と紫苑の向こうを見るような顔つきになる。それはほんの僅かな時間の出来事だったが、目ざとくそれを目にした優は、ロノウェが『もう思い出すこともない』と言っていた人物を思い出していたのだという事に気付いた。どんな決着を付けたのかまでは分からなかったが、思い出してもよくなった、ということはきっと良いことのはず、そう優は思う。
「……コホン。いつまでも立ち話もアレだし、そろそろ行かない?」
 優に視線を向けられていた事に気付いて、ロノウェがあからさまに話を切り替える仕草を取って二人に提案する。
「ふふ、そうですね。それでは行きましょうか」
「だー!」
 優とロノウェを交互に見て、何かを感じ取った零が笑みを浮かべると、紫苑が拳を突き出して一行の先陣を切った――。

「仕事の方は順調か?」
 優の問いに、カップを置いたロノウェはえぇ、と頷いて続ける。
「ロンウェルの事であれば、ヨミに任せてしまっても対処できるわ。リュシファルはいいとして、アムトーシスとゲルバドルは……私がどうこう言うものでもないわね」
 そう言うロノウェの顔は、何かを言いたい気持ちに溢れていた。おそらくロノウェの性格からして、二つの都市のあり方はザナドゥを代表する都市としては些か疑問符が付くのだろう。しかしロノウェが言うように、二つの都市が統治の面で問題を起こしているわけではない以上、口を挟むものでもない。
「そうですか。今まではロノウェさんも何かと忙しかったですけど、これからは自分の時間が持てますね。
 ……ねえ、ロノウェさん。ロノウェさんは好きな人や気になる相手はいないんですか?」
 声を潜めるような仕草でもって放たれた零の問いに、ロノウェは「な、何よいきなり」と言ったきり黙ってしまう。
「ロノウェの事だから、パイモンみたいな人が好きなんじゃないのか?」
「あなた、何てこと言うのよ!? 私がパイモン様をその、――だなんて……」
 声を荒らげたかと思えば縮こまってもごもごと言葉を吐いたロノウェは、キョトンとする優とくすくす、と笑っている零を交互に見て、自分の早とちりだったことに気付く。
「……ホント、あなたって苦手だわ」
「……今のは俺が悪いのか?」
 それを聞いた零がとうとうこらえ切れなくなって、声をあげて笑い出した。
「ちょっと零、そんなに笑わないで頂戴」
「ご、ごめんなさい、でも、あんまりおかしくて、つい」
 目に浮かんだ涙を拭って、そして零はふと浮かんだ思いを確かめるべく、優に向かって問いかけた。
「優はロノウェさんの事、どう想っているの?」
「俺? そうだな……。
 絆を繋げた大切な、信頼している女性、かな」
 少し考えてから、ロノウェの目を見て真っ直ぐに言うものだから、それが裏表のない言葉だと分かっていてもロノウェは顔を紅くしてしまうし、零は心にモヤっとしたものを抱いてしまった。
「ああ、でもロノウェに好きな人が出来たら、ヨミが黙ってないだろうな」
 頭の中で「ボクが許さないのですー!」と言いながら相手の男性をぽかぽかと殴るヨミが想像できて、優はつい笑ってしまう。
「……ねえ、零、どう思うかしら。私がこの前ロンウェルで優に言ったこと、間違ってないと思うの」
「はい……今のは流石に、ロノウェさんに同情します」
 零とロノウェが何やらヒソヒソと話をして、そして湿った視線をぶつけてくるのを、優は何故か分からず首を傾げる。
「……俺、何か悪いこと言ったか?」
「「いいえ何も」」
 見事にハモった声をぶつけられ、優はさらに訳が分からず困惑の渦中にあった。
「だぁ?」
 そんな雰囲気の中、一人紫苑だけが我関せずとばかりに無邪気な表情を浮かべていた。